ヒント-003
突然だが、今、体の動きのフレーズがあるとして、それをどう共演者等の「他者」に説明するだろうか。
素直に考えれば、自分の体で再現してみせるパターンが多いとは思う。
ただ石山としては、言葉なり図を用いて説明し、伝達することをここではお勧めしておきたい。
これは堅苦しく考えることなく、「激しく、ガガガガーと20秒くらい腕の動きをやって、次に、柔らかくポロポロポロと円を描く動きだった」みたいな感じでもいいのだ。つまりは「翻訳」だ。
こういった形で、他者に情報を伝えようとするならば、ダンス以外のフィールドの人ともコミュニケーションは格段に取りやすくなるだろう。
他分野の人や「外の世界」と、いかに意思疎通できるかが、「開かれた」パフォーマンス作品制作においては、必須条件である事は言うまでもない。
だが、ダンス・アーティストがダンス関係者にしか通じない言語「だけ」を用いてショウを作っていたら、どうだろうか。一般のオーディエンスの多くを納得させるのも、かなり難しくなってしまうのではないだろうか。
また分野をまたぐアーティストとのコラボレーションでも、こういう「翻訳」が間に挟まると、クリエーションはスムースに進む。内側にしか通じない「言語」では、とにかくやり取りに時間がかかってしまい、うまくいくことも困難になってしまうだろう。
「翻訳」作業は、他にも利点がある。
これを足がかりにして、他分野の人や他のダンサーがイメージを膨らめることが容易になるのだ。
先の例を元にして言えば、「ガガガガーという動きなら、こういう楽曲のフレーズはフィットするかな?」とか、「カウンターとして滑らかな動きをぶつけてみようか?」等、具体的なアプローチが出てきやすいだろう。
もちろん、言語化や図示することの一流になる必要はない。どれくらいの水準の言葉や例示が必要になるのか、というあたりから考えて、とにかくトライしていけばいいのだ。
そしてコミュニケーションをとる「他者」は、絶対に違う文化/バックグラウンドを持っているということを、常に意識する事が肝要となるだろう。自分と全く同じ「他者」は、世界中探しても1人もいないのだ。
「言葉ではうまく説明出来ないので、ダンスをやっています」というような物言いを昔からよく聞いてきたが、非常に危険だと自分は思っている。やはり「翻訳」を軽視する姿勢には首をかしげてしまう。
(文責・石山雄三)
次回は6月24日、掲載予定。
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全てのサポートは、次のクリエーションに有効活用されます。 アーティストとしては、これが本当に大きな力となるのです。