ヒント-008
タイムベースド・アート(Time-based Art)という言葉をご存知だろうか。
簡単に言えば、作品発表に時間がともなうアートのことだが、シアター等でのパフォーマンス、音楽、映像作品等を指す。
「始まり」と「終り」があるものと言えば、想像しやすいだろうか。もしくは時間の流れをデザインしているものというか。
アートでもいろいろなジャンル分け/カテゴライズがあるが、この切り口を知った時には、本当に膝を叩いたものだった。
自分もパンクバンドから始まり、映像やサウンドインスタレーションに興味を持つなどして、結局、ダンスやパフォーマンス作品を作ることに至った訳だが、単にふらふらしていただけではなかったのだ。時間の流れをデザインするという点において、1本、筋が通っていたと、これまでの活動を振り返ることが出来るのだ。
ダンス作品のクリエーションで行き詰まってしまったら、他のフィールドの作品を参考にするのは、有効な手段だ。
一般的とも言えるが、特にタイムベースド・アートという「区分け」に着目して探っていけば、解決法の具体的なヒントが得られる可能性は高くなるように思う。というのも、この「カテゴリー」のどの作家も、「時間の経過と格闘」していて、少し視点をずらせば、クリエーションの深い部分では、同一のことをしているからだ。
ここでも結局は「解析力」が求められてしまうのだが、「この曲は刺さるものがあるが、どういうコード進行でどういうフレーズの展開をしているのか?」、もしくは「この映画は納得いかない部分があったが、編集が単調すぎたのか? カメラワークが良くなかったのか?」という風に、「問い」を並べて、それを一つ一つ潰していけば、自分なりのクリエーションの「必勝方程式」が少しづつ見えてくるようになるだろう(アートが勝ち負けではないのは、百も承知だ)。
しかし、ここでは、分析/解析のプロになれと言っている訳ではない。直感的に「この楽曲は聴いてて気持ち良い。どうしてだろう?」というレベルでいいのだ。研究書や分厚い論文に頼ることなく、自分の感性で「何故か?」を発し、自分の言葉で「解答」を導き出せれば、アーティストとしての血となり肉となるのだ。
自分は特にポストパンクやノイズ/インダストリアル、そしてテクノ、アンビエントと言われる音楽に、多大なるヒントをもらってきた。
「楽器がなければ、身の回りのものを使えばいい」「普段耳にしているものも、視点を変えれば、加工して作品になり得る」「繰り返しに耐えうるフレーズならば、10分繰り返しても十分に満足出来る」...具体的に言えば、こういうところだろうか。
もうお分かりの通り、全て、ダンスやアートパフォーマンスのクリエーションに役立つものばかりなのだ。
(文責・石山雄三)
次回は8月15日、掲載予定。
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