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ヒント-015

振付家というと、ダンサーの体の動きを自ら全て指定して、「指示」する人をイメージするだろう。
エンターテイメント界の人はもちろん、そういう人が殆どだ。自分の考案した「振り」をダンサーに伝え、出来なければ、練習もさせるし、厳しい「アドバイス」も飛ばす。ぴりぴりとした雰囲気にスタジオがなることもある。

それも1つの正解だが、アート界の振付家、特にコンテンポラリーダンスの振付に携わる者はそうではない方法も採用している

ダンサーと対等に接し、本人の身体の特性等をディスカッションしながら、共同で「振り」を設定することも多いのだ。ダンサーの体の動きの特徴的な部分、言わば「本人の動きのいいところ」を更に伸ばしていこうとする姿勢だ。
その際にダンサーの「好き/嫌い」な体の動きのフレーズのテイストを確認しておけば、「振付」もそれを反映されたものとなり、そのダンサーはステージ上で素晴らしい存在感を発揮する事が多い。

もちろん、この方法論はいつでも、どんな状況でも、採用出来る訳ではない。
例を上げれば、振付家自身がダンサーを選択するキャスティング権を握っている場合には、比較的容易に実現は可能だ。
単に振付家自身の責任で、出演者を決めてしまえばいいだけなので、出演者チームのテイストをバリエーション豊かなものにもできるし、ダンサーとの「対話」は自然に数多く行われる事だろう。

逆にクリエーションの時間が非常に短かったり、最初から出演者が設定されている際には、この方法論で100%押し切るのは、難しいかもしれない。

ただダンサーや、他のクリエーション・スタッフの声に耳を傾けることは、この上もなく重要なのだ。これは強調しておきたい。
振付家/演出家がトップとなるピラミッド構造のクリエーション・チームを形成してしまい、振付家が絶対的な存在になって、その人の提案がダンサーにとって「命令」となってしまっては、振付家の想定の範囲内の作品しか出来ないのではないだろうか。

当たり前だが、振付家/演出家は、よりクオリティの高い作品作りを常に目指している。前作と同レベルのクリエーションでは満足出来ないはずだ。
故に自身のこれまでの「限界(=イマジネーション)」を越えるようなもの、よりフレッシュなクリエーションそのものの在り方を模索する人も、相当数いるのだ。

繰り返し気味になるが、そのための具体的なアクションの1つが、「他人のアドバイス/感想に耳を傾ける」事だ。そして、そのアイデアを1回はトライしてみる事だ。

自分とは違う見地からの意見は、新たな自身のディレクション・アイデアも誘発するだろうし、それを取り入れる事で、作品は、より多彩な側面を持てる可能性が俄然高まる。
特に、今現在、振付が「命令」のようになってしまっているチームは、「他人の言葉に耳を傾ける」事で、予想もしなかった「風景」が見えてくるはずだ。

(文責・石山雄三)

次回は10月28日、掲載予定。

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全てのサポートは、次のクリエーションに有効活用されます。 アーティストとしては、これが本当に大きな力となるのです。