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ヒント-012

ライブ作品の「主役」について考えた事はあるだろうか。
どれがなくてはならないもので、何をメインに自分達はパフォーマンスを観ているのだろうか。

多くの人は「出演者」と答えるかもしれない。ダンス作品に限っていえば、その割合は増えるような気もする。「ダンサーの存在、そしてその動きこそを観に来たのだ」という感じだろうか。

自分はかなりひねくれているので、ダンス作品であったとしても、「観る」となれば、ステージ空間及び照明のデザインにまず目がいってしまう。ダンサーについては、「こういう方向性のものを、提示しようとしてるのか」という感じで「確認作業」に徹している事の方が最近は多い。
というのも、長らくステージ作品を見続けて、自分の感覚がマヒしているのもあるが、以前ほど、ダンサーの存在感や動きの秀逸さ(=振付の素晴らしさ)に脱帽するようなことは無くなってきているからだ。

振付の作業として、様々な要素をデザインする事も含まれている。単体の人間の体で起きる現象ばかりではなく、ステージ空間全体と、ダンサーの動きのフォルムや位置関係のバランスも、当然ながら考えないとならない
狭い空間でダンサーが大きな動き「のみ」を連発していたら、客席から観れば、伝えようとしているものがあふれ過ぎていて、「やりすぎ」という感じになるだろう。
ステージでフィットすると思われる、ダンサーの動きの基本となる大きさや、空間における立ち位置のフォーメーションにも、もう少し気を配るだけで、作品の印象はガラリと変わるだろう。

観客席から見て、ステージ空間はどのように移り変わっていく「画」になっていくのか、をまず考えていた方が、良い結果に落とし込める気が自分はしている。

まずダンサーの体の動きから作り始めるのは、別に否定されるものではないが、その動きと実際に展開する、ステージ空間とのマッチングには、より注意を払うことが肝要だと思うのだ。
空間の大きさや広さを把握した上で、ダンサーの動きをリアレンジしていくのが、現実的なプロセスだろうか。「どうしても生み出したこの動きを、1ミリもずらさずにやりたい」ということなら、発表する公演会場の選択にはもっと労力を割くべきだろう。

冒頭に書いたが、ライブ作品を「観る」となれば、照明のデザインもないがしろに出来ない
何と言っても、ダンサーに光が当たっていなかったら、まるで見えず、ダンサーは「そこには居ない」ということにもなるからだ。言い換えれば、出演者の「存在」をコントロール出来るのが照明だ

照明の用意で、それなりに経費がかかってしまうのは分かるが、「振付」という行為にも密接に関係してくるので、軽視してはならない。

「このダンサーの動きはハッキリ見せたい」とか、「あの動きは派手に展開されているが、観客には弱めに印象づけたい」とか、そういうことも照明デザイン次第で、コントロール出来るのだ。

こういう要素も含まれるのが「振付」なのだ。

(文責・石山雄三)

次回は9月26日、掲載予定。

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