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ヒント-009
ダンス・クリエーションにおいて、ノリやグルーヴを過剰に重要視することには、違和感を覚える。
これは、前にも述べたが、あくまでも「アートとしてのダンス」の話だ。「スポーツ枠のダンス」ではない。
自分が体を動かして楽しむダンスなら、グルーヴにいくらでもこだわって欲しい。
ひょっとして、振付家ではなく、ダンサー目線で体の動きのフレーズをつないでしまい、「こういう動きが続くとスムースで、踊っていて気持ち良い」というような意見の方が、最近、優先されているのだろうか。
だが、そうなるとやはり「スリリング」ではない。観客も身体という同じ「メディア」を持っているが故に、動きの次の展開が読めてしまうことも多々あるのだ。
ダンスにおけるノリやグルーヴを完全に否定するつもりはないが、「アートとしてのダンス」を考えた時に「踊っていて楽しくはないかもしれないが、体のフォルムとしてはフレッシュなものがある。だからこの動きのシーケンスを採用する」という地平に立ったものを、もっと観たいのだ。
振付家は、モノのフォルムと、その連なりのパターン開発の「更なる可能性」を追求するものだと自分は思っている。繰り返しになるが、アートならば、だ。
となれば、ダンサーが、最初から繋ぎがスムースな体の動きのフレーズを繰り返すダンスを展開し、頭が真っ白になっているような「熱狂」が続くのはどうしたものかと感じてしまう。ステージ上で「熱狂」が過剰にばらまかれる時には、観客は逆に白けてしまうことも多いのだ。
また「ノリやグルーヴ」といったものに、ダンサーが軸足を完全に移してしまうと、振付というものの提示の精度が下がってしまうように思う。
「振付なんて、だいたいでいいんじゃない?」と、最近、アーティスト達は思っているかもしれないが、例えば、ある意味「ノリの結晶」の権化である、ダンサーの完全インプロビゼーション公演で、唸らされたことが何回あるだろうか。石山は片手で数えられるくらいしかない。
振付の具体的な手法としては「ストラクチャード・インプロビぜーション」(structured improvisation)というものもある。ちょっとしたルールを設けた即興のことを指している。
例えるなら「サッカーでは、選手はボールを腕で扱ってはならない」というレベルのルールだろうか。こういう構造なら、ダンサーがこの上もなく個性を発揮することは容易で、全体としての統一感も出せるのだ。
振付への偏見を取り払って、自分の持ち味をよりアピール出来るこういった構造に、ダンサーは数多く身を投じてもらいたいと思っている。特にコンテンポラリーダンスにおいては、「振付」はダンサーの個性をつぶす為のルールブックではないのだから。
(文責・石山雄三)
次回は8月26日、掲載予定。
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