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ヒント-023
どういう作品のシーンに使うのか説明もなく、体の動きのフレーズをゼロから組み立てて、それにバリエーションを加えていくとなると、どんな方法が考えられるだろうか。しかもあまり時間がないという条件で、だ。
これは極端な設定だが、解答の1つは日常動作のサンプリングだ。日常生活での動作を思い出しながら、いくつかピックアップしてつなげてみるという方法からスタートする。これならば、どういう意図があるシーンにでも対応出来る。もちろん、それがフィットするかどうか、面白くなるかどうかは別問題だ。
具体的には、その日の日常動作をとにかく、スタジオで再現してみて、それをビデオ収録する。そして飛ばし飛ばしで連続していない体の動きのチョップするポイントを決めて、無理やりにでもつなげてみるのだ。この方法はなかなか味わい深いものとなる。「連続していない」ところを連結してるみると、「抽象度」が増して、日常動作とは思えない複雑なものにも見えてくることもあるのだ。これだけでも、プロジェクト参加者から絶賛されることもある。
ここまできたら、音楽機器のサンプラーの音のフレーズの可変方法が参考になる。
まず、フレーズを逆回転してみる。音の場合はスイッチ1つだけで済むが、体の動きをなると、逆回転はなかなか難敵だ。普段使わないような、フレーズ展開になる事が多いのだ。ダンサー自身の「ノリ」に頼る部分も少なくなり、難易度が格段に上がる。
そしてサンプリングした動きの速度変更も効果的だ。「この部分はハーフスピードでゆっくり動いて、ここからは倍速で動いてみる」等のアレンジも、いくつかのターゲットとなる動きのポイントを変化させながら、トライしてみるのだ。やはり厳密な再現は難しいが、このアレンジも、フレッシュで大胆な動きの変化をもたらす。
他にも、ある程度出来た体の動きで、上半身のみ動かすパターンを設定してみるとか、下半身のみにしてみるとか(LPFとかHPFを想像してもらえるといい)、音楽機材のサンプラーでの素材加工のバリエーションは、本当に「いい参考書」だ。
もうお分かりだと思うが、ここまでの体の動きの生成では、「何かの情景/感情を表す」とか「メッセージを伝える」ということは一切無いのだ。つまりそういうことを想定しなくても「振付」はできるのだ。
言わば、これは「数学的」と言えるかもしれないが、「振付」は「情緒」的な要素がなくても、成立させられるのだ。説得力があるかどうかは、また別の話だが。
(文責・石山雄三)
次回は1月20日、掲載予定。
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