ヒント-004
何だか良くない振付が出来てしまうことも結構ある。正確に言うと、たいして悪くもないが、取り立てて良くもない体の動きと言えばいいだろうか。こういうフレーズは、なかなかブラッシュアップが難しい時がある。
そういう時には、一旦、「完成形」を忘れて、変化を加えてみることにしている。
具体的には、「動作が生じる体の部位や、動作回数などの数字の部分を変えてみる」という方法をとることが石山は多い。
これはなかなか分かりづらいかもしれないが、より単純化すれば、まずは体を動かす具体的な部位を変えるということだ。右手首の動きなら左足首に置き換えて展開してみるのだ。そして3回時計回りに回っていたのなら、反対方向に2回にしてみる...といった感じだ。
これの与える「変化」は時に大胆なものとなる。「無理やり」といってもいいアプローチになることもある。「急に左足首で、この動きを展開するのは無理でしょう」となることも多い。
でもそれでいいのだ。この全く出来ないフレーズが出てくることがおもしろいのだ。少なくとも前述の「何だか良くもなく、悪くもない振付」からは脱することができるのだ。石山は、展開する体の部位を置き換えた動きが、予想外のクオリティで、一発で決まったことも経験している。
また新しいフレーズを生み出せる可能性も、このアプローチにはある。「左足首でのあの不自然な動きにつなげるなら、右半身を大きく動かしたりするものもいいんじゃないか?」みたいに「連想ゲーム」のように、動きのフレーズ自体が別のフレーズを呼び込んだりする時もあるのだ。
つまりは、振付において、「なんとなく」を極力減らしてみればどうだろう?ということだ。
加えて、体を「分割」して認識し直してみれば、「新しい風景」が見えてくるのでは?という提案なのだ。
当たり前だが、体の動きは「ふんわりとした」場所ではなく、具体的な部位で起きる。座標軸上の、確実な「どこか」なのだ。なのでそのポイントを見極めて、そこに新規の「コマンド」を与えれば、「変化」が必ず起きるのは自明の理だ。自分が納得いくものになるかどうかは別問題だが。
具体的という部分でいえば、振付での「数字の入れ替え」も、本当に分かりやすく「変化」を与えてくれる。ターンが2回なのか6回なのか、それよりもっと多いことなのか。簡単な例だが、数値を入れ替えれば「現状」とは違うものが確実に手に入る。
ただ、こういったアプローチは、体の動きへの分析力が問われることは言うまでもない。
(文責・石山雄三)
次回は7月4日、掲載予定。
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