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【投資】【新NISA】SMT iPlus 成功報酬型投資信託 - fairness(公平性)は担保されるのか?(訂正追記 - 2023年11月16日)

今日は紙面の日本経済新聞はお休み。Webサイトの記事で、日系資産運用会社大手の三井住友トラストアセットマネジメントが、アクティブ投信にマネー回帰を促す狙いで成功報酬型の投資信託を設定するという記事が出ていました。

記事中では、

基本報酬は0.05%で、楽天投信投資顧問が運用する業界最安のインデックス型投信よりも低くした。代わりに運用成績がインデックスを上回る場合、超過分の30%を成功報酬として徴収する

日本経済新聞より

とあり、「初期の基本手数料を下げ、"儲かった時に報酬をいただきます"」という投資家にとってはとても聞こえのいい投信となっています。

ただ、おそらく、例えば機関投資家向けのヘッジファンド等、成功報酬が一般的であるファンドを取り扱ったことがある人たちなら感じたところかと思いますが、"日次流動性(日々売買できる)を提供しているファンドですべての投資家にフェアに(公平に)成功報酬を徴収するのは不可能"です。

では、当該ファンドではどのように成功報酬を徴収するのか、もう少し詳しくみてみました。以下のサイトによれば:

前四半期の期間における基準価額の騰落率と、同期間のベンチマークの騰落率の差がプラスの場合、その実績差の33%を実績報酬率とし、計算対象期間の翌四半期に適用します。ただし、実績報酬率の上限は、年率1.1%とします。

やさしい投資信託のはじめ方HPより

前四半期の3ヶ月間で勝った場合の成功報酬は翌四半期に適用されるということです。つまりは:

  • 前四半期勝った(ファンドのパフォーマンスがベンチマークを上回った)後でこの投資信託を買った場合には、自分はその前四半期の成功を享受できていないのに成功報酬を支払うこととなります。まあ、その翌四半期だけですけどね。長期で考えればたいした違いにはならないのかもしれません。

  • 前四半期勝ったあとその投資信託を売却すると、成功報酬を払わないままその成功を享受できてしまいます。解約するときに支払う信託財産留保額がないようなので、売却の際にはなんのペナルティもないまま解約できる(勝ち逃げできる)ってことですね。

  • ファンドのパフォーマンスがベンチマークを上回った時には運用会社は成功報酬をもらいますが、下回った時には逆に運用会社には下回った分の逆成功報酬をファンドに返す仕組みがありません。例えばですが、最初の四半期大きくパフォーマンスを下回ったとしても、運用者にはなんの損害もなく、そして翌期パフォーマンスがベンチマークを上回り、でもトータル6ヶ月の期間では上回ってなくても成功報酬が発生してしまいます。(ここから訂正追加です)これに関しては、設定会社の三井住友トラスト・アセットマネジメントのHPによると、基準価額が設定時の10,000円を下回っている場合には成功報酬は発生しないとのこと。つまり、最初にドカンと負けてその後勝っても、基準価額が水面上(10,000円)に戻るまでは成功報酬はゼロです。もちろん、例えば最初にドンと勝って12,000になり、その後10,000円に下落、そこから再度上昇した場合には成功報酬が発生します。12,000円で購入した人はその後購入価格を下回っていても成功報酬は発生する可能性はありますね。

  • 成功報酬・実績報酬33%は結構高いですね、上限を年率1.1%としてはいるものの。機関投資家向けのヘッジファンドとかでも20%とか15%とか?運用内容を見てみると、バリュー戦略、モメンタム戦略、クオリティ戦略、ディフェンシブ戦略という異なる4戦略を組み合わせ安定的な釣果収益獲得を狙うというもの。率直な印象として、実績報酬33%も払うような運用ではないかなって感じです。

ひょっとしたら目論見書にはそういう投資家に不利な点も何かしらの手立てがあるのかなと思い、EDINET(有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム - 投信の目論見書等も掲載されてます)で詳細情報を確認してみましたが、どうやら何も当ファンドについては上記の点については担保されてないようですね。

https://disclosure2.edinet-fsa.go.jp/week0010.aspx

運用会社として、こうした成功報酬のファンドを設定するということにチャレンジする心意気は感じますが、1)投資家が入るタイミングによる不公平性2)運用会社が成功報酬をもらうだけの不公平性(負けた時はペナルティがない)3)実績報酬が33%と高い(上限ありとはいえ)という不公平性(いわゆるヘッジファンドより高い)を上回るようなベネフィットをこのファンドには見出せませんね。

(2023年11月16日追記)
もしこのファンドが魅力的に映るとしたら、設定からドンと負けて基準価額が8,000円くらいになったら、その後は10,000円に戻るまで成功報酬なしになるので(そうなった時にちゃんと運用してくれるのかどうか、そこが懸念ですが)その時に買うっていうのはいいかもしれませんね。販売会社もそういうマーケティングトークをしそうです(笑)

「その分基本報酬は0.05%と格安なんだよ」っていう言い分はあろうかと思いますが、普通にeMAXIS Slimとかでいいんじゃないかな?って感じます。

#日経COMEMO #NIKKEI


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