グローバル・トマト・ソース/エッセー
甘酸っぱくツンと香り、にんにくの香ばしさが鼻に抜ける、それはトマトソース。その下には、舌の上にふわりと感じる熱々のパン粉がある。薄っすらまとって、柔らかい空気に包まれている。薬草に似た香りが鼻のまえでぐるぐる踊り、鼻の奥で柔らかく弾けて、そして散る。パン粉の下では、ジューシーなチキンがごろりと寝転んでいた。
ああ私の好きなトマトソース料理、ミラノ風カツレツを思い出す。私の知っているミラノ風カツレツは、これしかない。お母さんが作ってくれた、私が恋するトマトソースの料理。シンプルなトマト缶に、塩、胡椒、にんにくを加えて煮込んだ完璧なソース。きっとソースが主役に違いない。パン粉をつけてフライパンで揚げ焼きした少しかためのチキンが、恐ろしいくらいにぴったりだ。私とトマトソースは切っても切れない縁があるのだと思わずにいられない。
トマトと、それなりの調味料でできているトマトソース。そして、そのソースのことを大体の人はちゃんと知っていて、私たちに馴染んでいる。私はトマトソースに親しみを感じる。醤油やソース、マヨネーズなんかよりもずっと。トマトソースに関しては素人なのに、味も、素材も、種類もだいたいのことは原始的な記憶のように、もしくは幼馴染みたいに自然だ。どうしてだろう?トマトソースは他の調味料よりもずっと、原始的なプロセスを経ていて、わかりやすいからだろうか。共通の言語を持っていない人に対しても、トマトソースは優しいだろう。私たちはみんな、トマトソースを通してつながることができるような気までしてくるのだ。
「シンプルな」なんていう言葉は必要ないほどにその役割を果たしているそのソースは、やっぱり甘酸っぱくて、赤く、赤く、お皿の上でほほ笑んで、私たちの頬を染める。
エッセー:グローバル・トマト・ソース
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