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『櫟林の接吻』品川陽子詩抄 (No.3)

櫟 林 の 接 吻

お び え つ ゝ
ふ と も 聞 け ば
そ は・・・・と ほ き 風 の 音

お び え つ ゝ
お び え つ ゝ
な ほ よ り そ ひ て
あ ゝ・・・・い ま は 知 ら じ

息 た え て
息 た え て
こ の ま ゝ に あ る と て も

                『日本新歌曲集』 世界音楽全集第39巻
                 昭和8年 箕作秋吉編 春秋社
                 初出『閨秀抒情詩集Ⅲ』

 品川陽子氏の詩はつゝましやかであ
り又大膽である。こんな大膽な表現を
しても氣品を失わぬ處は氏の持味だろら
と思ふ。
歌手の表現は此の詩の言葉の解釋に委
せる。
此の曲に於ては私のシューベルトに
對する愛好が窺いて居る様に思ふ。
(作曲者箕作秋吉のことば)

      『日本新歌曲集』 世界音楽全集第39巻
          昭和8年 箕作秋吉編 春秋社 より
          所蔵:東京文化会館 音楽資料室




(『品川陽子詩抄』平成25(2013)年10月 
            柏崎ふるさと人物館発行 より)


#品川陽子 #品川約百 #詩 #箕作秋吉 #梶田半古 #佐藤春夫
#婦人之友



※「櫟林の接吻」と「狂ほしく歌へる」の二篇は「婦人之友」大正十五年二月号での入選作品です。

選  評

佐 藤 春 夫

「櫟林の接吻」何と言つてもこれが一番いいだろう。かくも少ない言葉によつて、かくも充分に歌ひ得たのは推賞せずにはゐられない。凄艶とも稱すべき詩風である――就中、第八句の如き。「狂ほしく歌へる」は第二聯がやや比喩に捉はれ過ぎるかと思ふ。言葉の方が勝ちすぎるのだ。だが、やはりかう歌ひ出したのをどう直すことも出來まいと思へるだけの自然さは無いではない。ともかくもこの作者は、純粹な抒情詩の本質そのものを持つてゐる人である。

           「婦人之友」20(2)大正十五年二月一日發行より




                        国立国会図書館 所蔵



※サムネイルの画像 出典:国立国会図書館「NDLイメージバンク」
梶田半古『わかくさ』
(https://rnavi.ndl.go.jp/imagebank/data/post-64.html)




※この詩は箕作秋吉の作曲により歌曲となっている。


閨秀抒情詩集   Op 7
独唱&ピアノ
[作曲年]1930(S5)
[演奏時間] 10分

唄 ギターをとりて
火を抱く
櫟林の接吻
春 宵

(牛)

◎<室内楽作品発表会>
   千葉静子(alt) 藤田晴子(pf)
   産業組合中央会館 1942.12.17
 <第5春季音楽祭「現代日本歌曲の夕_Ⅰ>
   関 種子(sop) 伊藤チエ子(pf)
   横須賀市民会館 1953.3.5
 <第6回二期会邦人歌曲発表会>
   三宅春恵(sop)
   山葉ホール 1955.7.6

「塔」19号 1979年8月 国立音楽大学附属図書館 発行
箕作秋吉 書誌 258ページより

「塔」19号 箕作秋吉 書誌 については、箕作秋吉さんのお孫さんの
栃内まゆみさんより情報を教えていただきました。
感謝申し上げます。




品川 陽子(明治38年(1905)12月6日―平成4年 (1992) 12月12日)
本名は品川 約百よぶ
新潟県柏崎町納屋町に生まれる
詩人
佐藤春夫に師事
兄に、本郷の古書店「ペリカン書房」の品川力、弟は、版画家の品川工

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