京の河霧 (A)
京の河霧 (A) 草 川 義 英
あゝ京の雨夜の街の重き色一夜明く
れば霧たちにけり
京の空あけぼのゝ雲鴨川の瀬々の流
れにつれ走る見ゆ
流れ星一つ流れて京の夜の祇園の空
は雪降る白さ
なみなみと杯酒に映つる弓月を霧た
つ夜に飲む男はも
うすぐらき秋の東雲霧の街京の目覺
めをなぜで嘆かむ
旅 愁
あゝ旅は明石のはてにつきぬれば破
れし心を抱きかへあむ
夜の雨に松の綠も重おもし淡路にそ
ひて筑紫にゆかむ
さむざむと海邊の月に浪白く滿潮の
音の身に泌みにけり
―明石にて―
(函館毎日新聞 大正六年十二月二十四日 二十三日夕刊
第一万一千六百三十四號 一面より)
※草川義英は與志夫の函館商業学校時代のペンネーム、同学校の生徒
を中心に結成された夜光詩社という短歌クラブに所属していた。
※[解説]夜光詩社について
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