暮 笛 集 (一)
暮笛集(一) 草川 義英
午さがり雲ほの見ゆる空のべを鳶の
さかしく飛べるなりけりさ
□
春日なる朱塗の宮のさびしさは奈良
をいとしむ心となりはつ
□
午さがり旅の身ながらゆくりなく御
苑の空に舞ふ鳶を見つ
□
奈良はよし都を遠くきて見たる三笠
の山の綠草よな
□
ゆくりなく春日の夕のいこひより奈
良のむかしを泣けるなりけり
□
草笛にゆかしき奈良の偲ばれて身も
うちふるふ夕なりにけり
(函館毎日新聞 大正七年一月九日 八日夕刊 一面より)
※草川義英は與志夫の函館商業学校時代のペンネーム、同学校の生徒
を中心に結成された夜光詩社という短歌クラブに所属していた。
※[解説]夜光詩社について
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