私は現在誰かの門下に入り
弟子として修行する形をとっていない
野良彫師…なんて言葉があるのかわからないが
言うなればそんな状態なのかもしれない
印章から離れて他の分野へ
飛び込んでしまうのも自由であるものの
だからこそ根幹を見失うことなく
研鑽を積み、完全手彫りの
名に恥じることのない印章を
お届けしたい思いを忘れないようにしている
それには自分が彫る印章が今世の中の
どの位置にあるのか、
技が鈍ってはいないか
そういったことを知る必要があり
二年に一度の競技会になるべく出品している
結果は入賞者名簿と印譜という捺し型を
印刷した冊子で知ることになる
競技会において作品を審査するのは
同じように技術研鑽の道を進み
大会ごとに出品を重ね最高賞をいくつも獲得し、
審査員へ推薦を受けた先生方
日本全国から東京に集まり二日間かけて
審査されるそうだ
特別賞は
厚生労働大臣賞
経済産業大臣賞
文部科学大臣賞
世界遺産下鴨神社宮司賞
が各部門の最優秀作品に贈られる
今回私はいくつかの部門がある中で
第一部の「密刻の部」に出品した
結果は
「銀賞」
前の記事に書いたように「胸を張って」
とは言い難い結果かもしれないけれど
今持てる全てを出し切り納得はしている
でもどんな賞にも与れなかった頃からしたら
とんでもなく悔しくもある
そうして悔しさを覚え自分の未熟さを知り、
上位作を穴が空くほど研究して
また二年後机に向かい、上を目指していく
そういうものなのだ
「弟子は師匠の半分」
という言葉がある
師匠から技や心得を学ぶのは大切であるが
教わろうとするのみでは
いつまで経っても半人前でしかない
ということである
(弟子入りして修行することを否定する意はない)
学んだことを基に自ら考え試し、
時には壊し、時には他分野に目を向け
新たな境地を拓いていく
まだまだ道半ば
いつでも感謝の心を忘れずに
精進あるのみである
応援下さった皆さま
有り難う御座居ました
一泉堂
四代目 辻村岳年