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アルゴリズムが察してくれる

1. はじめに

今回は日常でデータを取られることについて考えてみます。私(たち)はデータから感情を推論して、ユーザーにどうやったら還元できるかに注力しているので、その世界観を共有したいと思いました。まずは目指す世界観に価値を感じてもらえるかが重要だと思っているので、技術的な話は少なめです。

2. データを取られるのは悪いことばかり?

世界のデジタル化は急速に進んでいて、ユーザーの行動データを常に把握することでサービスやプロダクトの改善を素早くおこなうことが不可欠な時代に突入しています。これまでにも、属性データや、POSデータなどがマーケティングに活用されていましたが、それらはリアルタイム性が低く、可能なセグメンテーションの粒度も低いものでした。しかし、インターネット技術の発達、モバイル端末の普及、センサデバイスの多様化により、ユーザーとの接点を持つ機会が急激に増えてきました。

例えば、Amazonのようなオンラインストアでの買い物の傾向というデジタル上での行動だけでなく、どう移動してどんな店舗や施設に訪れたかが24時間365日Googleによって監視されています。また、従来からあるクレジットカードや電子マネーですらリアル世界での買い物履歴を保有しています。つまり、原理的にはいつ誰がどのように購買やサービスの利用をしたのか、そしてそこに至る過程すらも見えるはずなのです。これは、個人の行動に関する詳細なモデルを扱えることに他ならず、何を欲するのか、いつ欲しいのかなど予測することができるようになるはずです。

なのですが、これらはまだ表面的な結果を見ているに過ぎないというのが私の思うところです。行動は感情に突き動かされた結果かもしれないし、しょうがなく嫌々やっているかもしれないのです。そういった意味では、心の中を覗ければいいな、というのがシンプルな欲求です。もちろん、構成主義的な見方に立てば、心という存在は霧散するのかもしれませんが、情報処理機構としての脳や身体がなくなるわけではなく、行動より一足先に情報を処理しているはずです。そういったことも含めて、感情や刺激と行為の間にある中間の状態がわかれば、人の行動原理がより詳細にわかるようになる可能性があるのではないでしょうか。

さて、ここまでの話だと「監視されているみたいで気持ち悪い」という感想が出てくると思います。その一方で、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)などが広く受け入れられている理由は何なのでしょうか。それは単純にユーザーが得られる利益が、監視される気持ち悪さなどの心的コストよりも上回っているからです。この時代に、これらを利用しないことは生活の質を大きく下げることになるでしょう。

感情や体調など超個人的な情報の利用は嫌悪感が先行する気持ちもわかるのですが、それは企業が一方的にデータを利用するだけで、ユーザーには何の得もないという日本的な世界観も関わっている気もします。では、ユーザーのために動いてくれる好意的な企業であればどうでしょうか。最近話題になった書籍「アフターデジタル」ではユーザー視点への重要性を説いており、中国ではそれができた企業が発展を遂げているということが書いてあります。今回の論旨は企業のスタンスの話ではないので、割愛しますが(そのうち書きたいです)、仮にそれが実現されている世界で、感情や体調などを察してくれる未来のスマートシティがどのような姿であり得るのかを想像してみました。

3. 感情を察してくれる世界

この仕事を早いとこ終わらせないと。目の前の仕事にのめり込み、ついつい時間を忘れてしまう。不意にPC画面に「今日は頑張りすぎです、そろそろ帰らないの?」とメッセージが。オフィスでは常にマイクロ波センサにより心拍と呼吸が、そして椅子に埋め込まれたセンサによって重心の揺れが常に計測されていて、体調や集中力、疲れ具合を見られている。集中して時間を忘れるのは悪くないが、やり過ぎは長い目で見れば無理な働き方とも言える。オフィスは私が明日も気持ちよく働けるために気遣ってくれるのだ。

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帰宅するためにタクシーを呼んだ。もちろん人間のドライバーはいない、自動運転だ。車が走り出すが、とても心地良い。人間のドライバーよりも断然快適だ。デジタルなドライバーは私の乗車に関する記録をすべて持っていて、どんなことで恐怖を感じ、どう運転するとリラックスできるかを誰よりもよく知っている。もちろん、この瞬間も心拍、顔色、汗のかき具合から私の状態を見ている。

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帰宅途中で友人と食事をしてから帰ることにした。席に着くと注文は自分のスマートフォンからおこなう。サーブしてくれるのは人間のように見えるがロボットだ。食事の進行を見て、いい感じのタイミングでサーブしてくれる。私は重めの赤ワインが好きなので、店は飲んだことのないオススメの赤を薦めてくれた。だけど、思ったような味ではなく、少し残念に感じた。ロボットの店員は残念がっているのを見逃さない。心臓の鼓動、ため息、表情を常に観察している。きっと次に来るときには別のワインをオススメしてくれるはずだ。この情報は系列店に共有されているので、どこに行っても私の好みを理解してくれているし、どんどん詳しくなる。好きなものは言われなくても何回も頼むから店も覚えてくれるが、嫌いなものはわざわざ店員に言わないので察してくれるのはとても助かる。

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そういえば、実家の父親は元気にしているだろうか?そんな、心配は不要。家がいつも見守っている。最近は少しストレスや寂しさを感じているようだ。父は頑固で自分からは連絡をしてこない、今日は私から電話でもしてみよう。もちろん感情だけではなく、健康状態も見守っている。何も身につけていないお風呂場でもマイクロ波センサーによって、プライバシーを気にせず常に見守ることができる。万が一のことがあってもすぐに救急車が呼ばれ、私のスマホにも連絡が来るようになっている。

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家に着いた。今日はもうくたくただったので寝室に直行。オフィスで、タクシーで、レストランで、今日どんなことがあったのか、そのときのどんな感情だったかをアプリで日記のように振り返ることができる。このアプリのおかげで自分のことをよく知ることができた。前は、些細なことに気をとらわれていたが、そのことに気がつけてからは毎日が楽しい。そうこうしていると、睡魔が襲ってきた。照明は徐々に暗くなり、眠りについた。寝ている間も、家からは手厚いサービスを受けている。暑くて寝苦しいことを察知すれば室温を下げてくれるし、もし起きてしまってもラベンダーの香りとゆっくりとした鼓動の音によるバイオフィードバックでまた眠りにつく。そして、また明日へと続く。

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4. おわりに

今回は感情を察してもらえるとこんな感じのことが実現されるよね、というイメージを書き出してみました。少しは、こんな世界もありだなと思ってもらえたでしょうか。実際に私たちは自動車OEM、ティア1サプライヤー、サービス業、保険、住宅、教育、デバイスメーカーなどまさに多種多様な業界の方と感情にまつわるプロジェクトを薦めています。そこでは、まだ、先行プレイヤーが誰もいない新しい価値の探究が行われています。近いうちに私たちのことを察してくれる世界がやってくるはずです。

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