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塩袋と伝統のギャッベ展 丸山コレクション 西アジア遊牧民の染織

押上にある、たばこと塩の博物館にて、2022年2月26日〜5月15日開催。家から押上まで、けっこう遠かった。しかも押上駅から博物館までが、またちょっと遠い…。それでも行ったのは、イランの絨毯やギャッベに興味があったのはもちろんですが、本来の目的だった現代工芸作家さんの個展が、抽選販売の当選者だけしか入場できないようになっていて、見られなかったからです。そんなお知らせあったかな…?
ヤケクソで押上に向かったのですが、駅を出てふと見上げると、スカイツリーの存在感がすごかった。タワーの高さや基部の大きさ、ツリーまでの距離の感覚がバグってくる、SF的な建造物ですね。

なぜ西アジア遊牧民の染織品の展覧会を、たばこと塩の博物館でやるかというと、西アジアの遊牧には家畜の群れの動きを制御するための塩袋というものがあって、塩にゆかりのある染織品だからです。塩袋は文字通り塩の塊(岩塩でしょう)を入れた袋で、家畜は塩分補給のためにこの塩を舐めたがって、人間の元を離れなかったり、塩袋の後を付いて移動したりするのだそうです。塩袋には、絨毯などと同じような紋様が織り込まれていたり、羊毛の房で装飾されていたり、また家畜の舌が塩に届かないように凸の字形に上が細くなった独特の形状をしています。かわいいバッグのようで、コレクションのしがいがありそうです。

とは言え、遊牧生活は現在ほとんど行われておらず、100〜数10年前の遊牧民の生活用品を集めたコレクションは大変貴重なものです。展示品も、濃い赤を基調とした色合いが鮮やかで、見応えがありました。
今回の展示で、遊牧民の染織品の種類の違いが少し分かりました。キリムは横糸で紋様を織り出す一方、絨毯とギャッベはどちらも縦糸にノット(結び目)を作って紋様を描きます。絨毯は家財道具という感じで緻密に作られ、売買もされますが、ギャッベは普段使いの日用品なので糸も太いし織りも粗く、民芸品の味わいがあります。サイズもギャッベのほうが小振りでしょうか。大きめの玄関マットという感じです。

たぶん目が数えやすいからではないでしょうか、絵柄は直線が多用され、目の粗さもあいまってピクセル画の趣です。ヘタウマ調ながら気品も感じさせる白いライオンのギャッベ、黒・緑・黄色・ピンクなど自由な色使いの薔薇が並んだギャッベ、手にスカーフのようなものを持って踊る17人の女性を描いたギャッベが、特に気に入りました。

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