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No,195.抑うつの対処「抑うつを緩和する認知的思考について」
はじめに
「抑うつ」「パニック障害」「摂食障害」などの精神疾患の緩和についてつらつらと書いてみる。
紹介する研究は、認知的統制尺度という概念をもとに抑うつ緩和に関する論文です。
認知的統制について
認知的統制とは、考え方を調節することによる制御である。予期、期待、刺激と刺激との関係、反応と反応との関係などから、あらかじめその後に起こることを知って行動するようになる。(認知的統制とは)こうした事象や刺激を認知して、行動を制御すること(杉浦、2003)。
認知的統制には「論理的分析」と「破局的思考の緩和」の2因子から構成される。
◉ 論理的分析とは「そうなった理由をいくつか考えられたり」「問題を解決するような想像する」
◉ 破局的思考の緩和とは「その状況から悪い連想を発展させない」「良い気分はしないけど、破局的には考えない」といったことである。
Backら(1979)によると、抑うつに至る経緯は、引き金となる出来事(ネガティブなど)が発生すると自動思考(解釈)が喚起し、抑うつ気分に変化すると述べている(図1)。
図1
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筆者作成
ネガティブな出来事があった場合、抑うつ気分になる人とならない人がいる。
その違いは自動思考による違いによるものと述べている(図2)。
つまり引き金となる出来事に対してどのように解釈(自動思考)するのかによって決まる。
図2.自動思考(解釈)に至る経緯
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筆者作成
※推論の誤りとは、証拠もないのにネガティブな結論・恣意的推論
※抑うつスキーマとは、暗黙のうちに自らが課しているルール。例えば「常にうまくやらないと、人々は自分を尊敬しない」「失敗したら人としても失格者だ」など思っていること。
抑うつ気分に至る検証結果
杉浦はBeckらの理論を検証した結果、抑うつ的スキーマ喚起したのち推論の誤り→ 自動思考(解釈)→ 抑うつ気分という因果関係が支持された(図3)。
図3.抑うつスキーマ→ 推論の誤り→自動思考(解釈)→抑うつ気分
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筆者作成
抑うつ気分の緩和について検証結果
破局的思考の緩和は自動思考の前の段階である推論の誤りおよび抑うつ気分を緩和させると示された(図4)。
※破局的思考の緩和とは「その状況から悪い連想を発展させない」「良い気分はしないけど、破局的には考えない」といった思考。
図4.破局的思考の緩和の効果
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筆者作成
まとめ
この研究では抑うつ的スキーマから推論の誤りを介して自動思考(解釈)が喚起し、抑うつ気分に転移することが示された。
推論の誤りおよび抑うつ気分を緩和する効果として、「その状況から悪い連想を発展させない」「良い気分はしないけど、破局的には考えない」といった認知的思考である【破局的思考の緩和】が重要なファクターであることも示された。
おわりに
個人的に気になるのは抑うつスキーマのことである。抑うつスキーマは「仕事で失敗したら人としても失敗者と見られるだろう」「常にうまくやっていなければ、人は私を尊敬しないだろう」といった自身の枠組みからが構成されるといわれる。
そもそも挑戦なくして失敗はない。よって失敗したくないのであれば挑戦しなければいいだけの話である。
「失敗者として見られる」と暗黙のうちに自らが課しているルールであるが、他者は成功者を揶揄することはあっても(SNSなどでは、ユーチューバーや経営者を揶揄することが多い)失敗者には興味ないだろう。
暗黙のうちに自らが課しているルールはそういったことを理解し意識するほかないだろう。
最後まで読んでいただきありがとうございます( *´艸`)
参考文献
杉浦智子(2007)『ストレスを低減する認知的スキルの研究』風間書房