No,200.一皮のむき方「自己成長を自発的に考えるの巻」
はじめに
㊗️200回目の記事になるので少し真面目に書いてみます(^^♪
「一皮むけた経験」
この言葉は、困難や苦痛にある最中は、混乱したり、自分に自信がなくなったり、周囲に対して攻撃的になることがあるが、クリアできれば大きな成長につながる。その後、辛いことがあってもその出来事を糧に今まで以上に成長するといわれる(参照: www.liber.co.jp/psychology/column022.html)。
「一皮むける」ための要因はなんだろうと考えると、その1つに自己成長イニシアチブ(PGI; Robitschek et al., 2012)があるだろう。
自己成長イニシアチブ(PGI; Robitschek et al., 2012)とは、現実的な計画を立て利用可能な資源を使い個人の成長のために開発された行動計画を実施することによって自己の変化をもたらすためのスキルセットである。
つまり、困難なことに出会ったときに、今できることを現実的に捉えクリアするために力になってくれる人や使えるお金などを考慮しながら計画をたてていくってことだろう。
自己成長イニシアチブは、男女ともに自己成長の関連があり、抑うつに効果があるといわれる。また、女性は、自己成長イニシアチブが高いとトラウマ(心的外傷後ストレス)になりにくいことも示されている。
自己成長イニシアチブ(PGI; Robitschek et al., 2012)については、Shigemotoら(2017)がトラウマにあったのちの自己成長についてを研究しているので論文をレビューしてみます。
詳しくは原本を読んでください(^^)/
「適応と不適応な反すうの心的外傷後成長、心的外傷後ストレスおよび抑うつに対する自己成長イニシアチブ」
Function of Personal Growth Initiative on Posttraumatic Growth,Posttraumatic Stress, and Depression Over and Above Adaptiveand Maladaptive Rumination.
Yuki Shigemoto, Blakely Low, Dominika Borowa, and Christine Robitschek2016 Wiley Periodicals, Inc. J. Clin. Psychol. 73:1126–1145, 2017.
目的
本研究は、さまざまなタイプの反すうが区別可能であるのか、また適応と不適応な反すうを通じて心的外傷後成長、心的外傷後ストレス、および抑うつに対する自己成長イニシアチブ(personal growth initiative:PGI)の効果を検討した。
方法
サンプルはトラウマになる可能性の事象(potentially traumatic event:PTE)を経験した292人の大学生。
結果
侵入的反すう、意図的反すうは異なる要因であることが示された。しかし、抑うつの別の側面であると考えられていた考え込みと省察は単一の要因であった。
※考え込みbrooding と呼び,対照的に,憂うつな気分を軽減させるため,意識的に認識して問題解決しようと省察reflection と呼ぶ。
PGIは、男女ともに成長と正の関連があり、抑うつと負の関連があった。また、女性は、PGIと心的外傷後ストレスの間に負の関連が示された。PGIの間接的果はさまざまな形態の反すうを介して外傷後ストレスと外傷後成長への関連が示された。これらの関連は、共変量(すなわち、外傷からの時間、直接的な外傷(暴力)、および自傷行為)を含めた後も変わらなかった。
結論
本研究は、トラウマとPTE(potentially traumatic event)後の緩和および成長の促進にPGIを適用することの潜在的な効果と関連において、抑うつの先行研究から反すうを統合する新しい知見を示した。
Keywords: トラウマ、自己成長イニシアチブ、外傷後成長、外傷後ストレス、抑うつ
心的外傷の可能性がある出来事(PTE)の後に外傷後ストレスとうつ病の症状を経験する可能性がある(e.g., O’Donnell, Creamer, Pattison, & Atkin, 2004; Rytwinski, Scur, Feeny, & Youngstrom, 2013)。
●PTE後の有病率は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)約5%から30%および大うつ病障害(MDD)で約10% to 30%と言われている(e.g., O’Donnell et al., 2004; Roussos et al., 2005; Shih, Schell, Hambarsoomian, Marshall, & Belzberg, 2010)。
●メタ分析によりPTSD患者の52%が大うつ病性障害(MDD)を併発していることを示した(Rytwinski et al., 2013)。
●これらの高い疾患「併存症」(comorbidity)1)の1つは、否定的な結果の心配、制御の喪失、問題の発生など認知の脆弱性(反すう)のためかもしれない(Mitchell, Capron, Raines, & Schmidt, 2014; Taylor et al.,2007)。
●認知上の関心が減少することよりPTSDと抑うつの両方が軽減をもたらして一般的な認知因子の存在が示唆された(Mitchell et al.,2014)。
本研究は、自己成長イニシアチブ(PGI; Robitschek et al., 2012)の効果を検証。現実的な計画を立て利用可能な資源を使い個人の成長のために開発された行動計画を実施することによって自己の変化をもたらすためのスキルセットである成長する要因を特定する。適応と不適応を含む様々な形態の反すうを通して外傷後反応に対するPGIの間接的な効果を検証した。さらに、反すうのレベル(Treynor, Gonzalez, & Nolen-Hoeksema, 2003)と心的外傷後ストレス(Tolin & Foa, 2008)、心的外傷後成長(Vishnevsky, Cann, Calhoun, Tedeschi, & Demakis, 2010)とうつ病(Treynor et al., 2003)また、性別間の構成要素の平均と関連を比較した。
Tedeschi and Calhoun(2004)の心的外傷後成長モデルは、心的外傷後反応を描く際に個人の特性が重要な役割を果たす可能性があることを示唆している。本研究では、PGIの効果に焦点を当てた。
自己成長イニシアチブ(personal growth initiative:PGI)の効果について
●先行研究では、個人的な成長の高い意図(目的)を持つ人はうつ病や苦痛のレベルが低いと報告されている(Robitschek & Kashubeck, 1999)。
●ルワンダの大量虐殺の影響を受けた集団の中で、PGIは心的外傷後ストレスとうつ病に負の関連があり、機能障害に対する保護因子として役立ったとされる(Blackie, Jayawickreme, Forgeard,&Jayawickreme, 2015)。
●退役軍人を含むPTEを経験した大学生の間で、PGIは心的外傷後成長と正の関連があった(Borowa, Robitschek, Harmon, &Shigemoto, 2016; Shigemoto, Ashton,&Robitschek, 2016)。
しかしPGIと心的外傷後ストレスとの間に有意な関係がないことも確認されている(Borowa et al., 2016; Shigemoto et al., 2016)。
反すう(Rumination)
心的外傷後反応(PTSD症状、心的外傷後成長、および抑うつ)における認知的脆弱性の影響は、様々な論理的観点から検討されてきた。例えば、PTSDの認知モデル(Ehlers&Clark、2000)は、問題に対する評価の増加によってPTSDの症状を維持するとされる反すうを認知処理の不適応型であると考えている。
●自動車事故の生存者を対象とした縦断的研究では、反すうはPTSD症状の重要な予測因子であった(Ehlers, Mayou, & Bryant,1998)。
●反応スタイル理論(抑うつの文献から開発された)は、抑うつ症状に反応して繰り返される反すうは、自己集束(注目)によりネガティブな気分と認識を高める可能性があることを示唆している(Nolen-Hoeksema、1991)。この理論に沿って、より多くの反すうを従事した大学生は、込んだ気分が長く続くことが示された(Nolen-Hoeksema, Morrow, & Fredrickson, 1993)。
●縦断的研究ではより高い反すうはその後PTSDと抑うつの両方の症状を予測することが示された(Ehring, Frank,&Ehlers, 2008)。
これらの研究は、反すうが外傷後ストレスと抑うつに負の関連をもたらす共通点として強調している。
しかし先行研究ではすべての反すうが負で関連ではないことを示している(Watkins,2008)。
意図的反すう及び侵入的反すう、省察及び考え込み
考え込みと省察は、性質のような思考スタイルや性格特性として概念化されている(Nolen-Hoeksema&Davis、1999)が、侵入的および意図的反すうは特定のPTE特有のものである(Cann et al。、2011)。
●心的外傷後成長モデル(Tedeschi&Calhoun,1996)では心理的成長をもたらす認知的思考はPTE の後につながることが示されている。心的外傷後成長モデルに基づく研究では、2つのタイプの反すうを導入した:意図的および侵入的反すう(Cann et al.,2011)。
意図的反すうと侵入的反すう
●意図的反すうは、事象に対しての闘争に焦点を当てた意図的な思考として定義される(Cann et al., 2011)。
●侵入的反すうは、事象の自動思考、否定的思考、望ましくない考えを指す(Cann et al., 2011)。
●意図的反すうは外傷後成長を独自に予測して、侵入的反すうは外傷後ストレスを独自に予測した(e.g.,Cann et al., 2011; Triplett, Tedeschi, Cann, Calhoun, & Reeve, 2012)。
考え込みと省察
●反すうは適応型と不適応型の両方が存在することを示唆している。抑うつの研究では、反すうは2つの要因からなる多次元構造要因であるとも考えられている:考え込みと省察(Schoofs, Hermans,& Raes, 2010; Treynor et al., 2003)。
●考え込みは「現在の状況と達成されていない基準との受動的な比較」(p256)
●省察は「抑うつ症状を軽減するための認知的な問題解決に取り組むための意図的な内省転換」(p.256))と定義した。
●考え込みと抑うつの間には正の関連が見られ、これは考え込みが不適応であることを示唆している。省察は大きいほど抑うつが減少して、省察が有益である可能性を示唆している(Treynor et al., 2003)。
●これらのタイプの反すうが同時に検証された数少ない先行研究では、意図的反すうのみが正の予測因子であり、考え込みのみが外傷後成長と負の予測因子であった(Cann et al., 2011;Stockton, Hunt, & Joseph, 2011)。
●PTSDを予測する際には、侵入的反すうのみが正の予測因子であることがわかった(Cann et al., 2011)。
これらの結果は、意図的反すうの保護的効果と、考え込みおよび侵入的反すうの有害な効果を示唆しており、外傷と抑うつの両方の先行研究から反すうかい尺度の一意的な役割を強調している。
しかし、研究では、PTE発生後の共存する抑うつ症状は調べられていない。PTE後の併存症(対象となる疾患とともに存在し、予後や機能に影響を与える疾患のこと)の高い罹患率を考慮すると現在の研究における重要な拡張となるだろう(Rytwinski et al., 2013)。抑うつの研究における省察の効果を考慮すると、いずれの研究(e.g., Cann et al., 2011, Stockton et al., 2011)も省察と心的外傷後成長または心的外傷後ストレスの間の有意な関連が見られたことは驚くべきことである。
省察と考え込みの違いについて
● 研究者らは、抑うつのレベルが有意になると考え込みと省察を区別することが困難になると指摘している(Joormann, Dkane, & Gotlib, 2006)。
事実、因子分析では以前抑うつだった人と抑うつに陥っていない人との間では考え込みと省察が異なる構成要素であることを示した。しかし、2つの構成要素の区別は、現在抑うつの人では不透明である(Whitmer & Gotlib, 2011)。したがって、PTE を経験した人が、現在抑うつの人と同様に、考え込みと省察の構成要素を区別できないかどうかを検討することが重要である。
性別の役割(Role of Gender)
複数の研究では反すうの性差が報告されている。
●女性は男性よりも考え込みと省察に従事する傾向があった(Treynor et al.,2003)。
●侵入的と意図的な反すうの性差に関する研究は限られているが、研究者らは女性がさまざまなタイプの反すうに従事する可能性があると述べている(Vishnevsky et al.,2010)。そのため、女性は男性よりも侵入的と意図的反すうが多いと予測している。
PTEの変動(Variabilities in PTEs)
心的外傷後反応もPTEの種類によって異なる。しかし、いくつかのPTE(例えば、虐待、強姦、および犯罪)について予想される事象の基本割合は、Frazier et al(2009)に従って分類された。
●第1に、PTEは被害者が直接的または間接的に(例えば、目撃によって)経験したかどうかによって分類された。さらに、事象が意図的なものなのか意図的でないのかによっても分類されました。Frazier(2012)は、これらの側面に沿ってPTEを区別することの有用性について検討した。
●直接的な曝露と意図的な外傷は、間接的や意図的ではない事象と比較して、より高いPTSD症状を誘発する。
●実際にメタ分析では、PTE以降の時間が抑うつの減少とポジティブな高さに影響を与える重要な予測因子であることが示唆された(Helgeson, Reynolds, & Tomich, 2006)。
したがって、潜在的な共変量としてPTEのこれら2つの側面を考慮に入れた。さらに、PTE以降の時間は、外傷後の結果にも影響を及ぼす可能性がある。外傷後すぐに心的外傷後ストレスと抑うつの高い症状を経験するのは普遍性があるかもしれないが時間が経つにつれて対処することにより心的外傷後ストレスの減少がみられるかもしれない。
RQと仮説(Research Questions and Hypotheses)
本研究の目的は、トラウマと抑うつの先行研究から異なるタイプの反すうが区別が可能なのかを検討する (すなわち、外傷後成長、心的外傷後ストレスと、抑うつ)。さらに性別間のさまざまなタイプの反すう(侵入的・意図的な反すう、考え込み、省察)を通じてPGIの心的外傷後反応に及ぼす効果を検討する。
RQ1:4つの反すうタイプに違いが見られるのか?
H1: 女性は男性と比較して(心的外傷後成長、心的外傷後ストレス、抑うつ)より高いレベルの反すうおよび心的外傷後反応を有するであろう。
H2: PGIは、男性と女性では異なるタイプの反すうを通じて外傷後成長に積極的に関連し、抑うつと負の関連を示すだろう。しかし、心的外傷後ストレスとの関係は探索的である。
RQ2:共変量(PTEからの時間、直接的な曝露、および意図的な危害)は、心的外傷後の反応および反すうとどのように関連して、男性と女性ではPGIの影響にどのように影響するだろうか?
方法(Method)
参加者(Participants)
●参加者は公立大学の心理学コース292人(男性44.9%、女性55.1%)
年齢17歳から36歳まで(平均[M] = 19.91、標準偏差[SD] = 2.41:63.8%の白人、15.0%のラテンアメリカ系アメリカ人、8.8%の異人種間、6.8%のアフリカ系アメリカ人、そして残りの5.6%にはアラブ系アメリカ人、アジア系アメリカ人、その他)
測定(Measures)
●参加者は、過去3年間に経験した最もストレスの多い事象(外傷性事象の種類)を選択するよう求められた。
以下の事象は直接の経験として分類された(男性が24%、女性が28%):個人的に非常に深刻な医学的問題、重大な身体的または性的暴力の被牲者、 居住地は深刻な被害、親密なパートナーの暴力、強盗などの犯罪の被害者、ストーカー被害。同様に、以下の事象は間接的な経験として分類された(男性が56%、女性が60%):予期せぬ暴力的な近親者の死、近親者による重大な医学的問題の経験、近親者の酷い暴行の目撃。ただし、情報不足のため、すべての事象がこれら2つのカテゴリに分類されているわけではない。
●PTEは意図的に実行されているかどうかに分類されました。 以下の事象は意図的に行われていると考えられています(男性が5%、女性が12%):肉体的・性的暴力、親密なパートナーの暴力、強盗などの犯罪の被害者、ストーカー被害者。
●PTEは意図せずに行われた事象として分類された (男性の場合は 31%、女性の場合は 39%):深刻な医療上の問題を抱えている、および個人的に非常に深刻な医学的問題を経験している。ただし、情報不足のため、すべての事象がこれら2つのカテゴリに分類されているわけではない。
PGI(Personal Growth Initiative)
Personal Growth Initiative Scale-II(PGIS-II; Robitschek et al.,2012)は、個人の変革のための積極的なスキルを測定する。4つの下位尺度からなり16項目から構成される。変更への準備(例えば、「私は今自分自身が何らかの変化をする態勢が整っていると言うこと
ができる」)など。 計画性(例えば、「自分自身について変えたいと思う実現可能な目標を設定している」)。資源を使う(例えば、「自分自身を変えようとするとき,積極的に支援を探し求める」)。積極的な行動(例えば、「私は自分を向上させようと積極に取り組む」)。項目は(0「全くあてはまらない」~5「かなり当てはまる」)6件法で答えた。 全体のスコアは、下位尺度スコアを平均することによって計算した。高いスコアほど高いレベルのPGIを示す。この調査におけるα係数は、男女ともに.92であった。
抑うつ(Depression)
抑うつ尺度(CES-D; Radloff、1977)は、うつ症状の存在および重症度(例えば、「憂うつだ」)を評価する。尺度は20項目からなり、回答の選択肢は0(ほとんど、またはまったくない)~3(ほとんどまたはいつも)の4件法で答えた。合計スコアは0から60の範囲で、スコアが高いほど抑うつ症状が強いことを示します。 α係数は男性が0.92、女性が0.93でした。
心的外傷後成長(Posttraumatic growth)
The Posttraumatic Growth Inventory (Tedeschi&Calhoun, 1996)は、心的外傷後成長の経験を評価し、5つの下位尺度からなり21項目から構成される。他者とのつながり(例えば、「私は困った時に他者が頼りになることがはっきりとわかった」)。新たな可能性(例えば、「私は新たな興味関心を見つけた」)。人間としての強さ(例えば、「私は自立心が強くなった」)。心の変化(例えば、「以前よりも精神的なことがらへの理解が深まった」。)人生の再認識(例えば、「人生において何が大切かが分かった」)。参加者は、0(私は危機の結果としてこの変化を経験したことはない)から5(私は危機の結果としてこの変化を非常に大きな経験した)までの6件法で答えた。合計スコアは0から105の範囲で、スコアが高いほど外傷後成長が大きいことを示す。本研究でのα係数は男性.96、女性.95であった。
外傷後ストレス(Posttraumatic stress)
出来事インパクト尺度- 改訂版IES-R(The Impact of Event Scale – Revised:Weiss&Marmar,1997)心的外傷後ストレスを評価し、3つの下位尺度からなる。侵入(例えば、「どんなきっかけでも、そのことを思い出すと、そのときの気もちがぶりかえしてくる」)。回避(例えば、「私はそのことについて考えたり思い出すときは,なんとか気を落ちつかせるようにしている」)。過覚醒(例えば、「私はイライラして、怒りっぽくなっている」)。22項目があり、回答の選択肢は0(まったくない)から4(極端に)の5件法で答えた。参加者は、最初に報告した最も外傷性のある出来事を参照しながら質問に答えた。スコアはすべての項目を平均することによって計算され、高いスコアほどレベルの高い心的外傷後ストレスを反映する。本研究でのα係数は男性と女性は.96であった。
侵入的・意図的反すう(Intrusive and deliberate rumination)
出来事に関連した反すう尺度(ERRI)(Cann et al., 2011) は反すうの2つの要因を評価する。侵入的反すう(例えば、「自分が望んでいないときでさえ、その出来事についての考えた」)意図的反すう(例えば、「自分が経験したことから何か学ぶことがあったかどうか考えていた」)この尺度は各要因に対して10項目あり、回答の選択肢は0(まったくない)から3(よくあった)の4件法で答えた。スコアは項目を平均することによって計算した。スコアが高いほど、特定の事象についての反すうが多いことを示す。侵入的反すうのα係数は男性.95、女性.96、意図的反すうのα係数は.94と女性.92であった。
省察と考え込み(Reflection and brooding)
反すう反応スケール(RRS:Ruminative Responses Scaleの改訂版Nolen-Hoeksema&Morrow、1991年。 Treynor et al。、2003)。省察(例えば、「なぜ自分が落ち込んでいるのか理解するために、自分自身の性格について分析する」)と考え込み(例えば、「これに値するために私は何をしていますか?」)を評価するために使用された。各下位尺度は5つの項目からなる。 参加者は、1(ほとんどない)から4(常にある)の4件法で答えた。各下位尺度の合計スコアは5〜20の範囲で、スコアが高いほど反すうが多いことを示す。省察α係数は男性が.85、女性が.86、そして考え込みは男性が.88、女性が.86であった。
手続き(Procedures)
参加者は、大学の心理学コースから募集。データは匿名のオンライン自己申告による調査で収集され、292人のサンプルが得られた。
結果(Results)
探索的因子分析(Exploratory Factor Analysis)
EFAは、IBM SPSS Statistics(バージョン23)を使用して実施した。男性と女性の因子負荷量を表1に示す。意図的反すうについての項目7(「私の経験から他人との関係が変わったかどうかについて考えた」)は、意図的反すう(0.48)と侵入的な反すう(.40)の両方に当てはまった。この項目が他の項目と比較して区別が出来ない可能性があることを示唆している。ただし、この項目は意図的反すうの負荷が高いことを考慮すると、本研究の目的は性差を比較することであり、この項目を含めて男性の意図的反すうの全体的なスコアを計算した。侵入的反すうは意図的反すうと有意に関連していた(r = 0.62)、省察と考え込みの組み合わせは侵入的反すうと意図的反すうに関連していた(それぞれrs = .43と.30)。女性についても同様の結果が示され、EFAは、1.0を超える固有値を有する3つの因子(すなわち、侵入的反すう、意図的反すう、および考え込み/省察)を保持して全分散の64.30%を説明した。因子固有値は13.83、3.40、2.06であった。4番目の因子の固有値も1.05であったが、スクリープロットを使用した固有値のサイズにはブレイクがあり、4番目の因子の最大項目負荷は.31であり、この因子の追加が反すうの理解に実質的に寄与しないことを示す。3因子モデルのすべての因子負荷量は0.47以上であった。そして最も高い交差負荷量は0.29であり、これら3つの要素に対する各項目の固有の寄与を示す(Worthington&Whittaker, 2006)。侵入的反すうは意図的反すうと有意に関連していた(r = .54)。そして省察と考え込みの組み合わせは侵入的反すうと意図的反すうと関連していた(それぞれrs = .57と.34)。その結果、考え込みと省察の項目を組み合わせて、項目点数の合計 (10 ~ 40 の範囲) を計算し、両方の性別のモデルで3種類の反すうを調べた。考え込みと省察を組み合わせたα係数は、男性.91と女性.92であった。構造方程式モデルを行う際には、構成項目を使用して、Little、Cunningham、Shaher、およびWidaman(2002; Little、Rhemtulla、Gibson、およびSchoemann、2013も参照)の推奨に従って、1次元構造の「小包化変数」を作成しました。 バランスの取れたアプローチにより(すなわち、最も高い積載量からの項目を追加することによって小包化を構築する)、推定されるべき因子負荷量を減少させる。反対に、小包化は潜在変数を指定するために使用されていました。推定される構成要素の数を考慮して、個々の尺度項目を使用する。具体的には、侵入的反すう、意図的反すう、省察と考え込みの組み合わせ、そして抑うつである。多次元構築(すなわち、PGI、心的外傷後成長、および心的外傷後ストレス)については、下位尺度を指標として使用した。
予備分析(Preliminary Analyses)
性別ごとの2変量の相関、平均、および標準偏差は表2に示す。
●両方の性別について、PGIは心的外傷後成長と正に相関、そして省察/考え込みおよび抑うつと負の相関を示した。しかし、男女共にPGIと意図的反すうまたは侵入的反すうとの間に有意な相関は見られなかった。
●女性は、PGIと心的外傷後ストレスと負の相関が示された。さらに、女性は心的外傷後成長と意図的反すう以外の反すうとの間に有意な関係は見られなかったが、それらはすべて男性の間で正の相関があった。
●最後に、すべてのタイプの反すうは有意に正の相関を示した。また、心的外傷後ストレスと抑うつの間には、両方の性別について正の相関が示された。
構造方程式モデル(Multigroup Structural Equation Modeling)
測定モデル
最初のモデルは、男女ともに分析に含まれているが、グループ間の平等性の制約がない構成モデルである。さらにモデル適合度と適合の低下の度合いを前モデルと比較して追加の統制条件を含む一連のモデルを検討した。適合度基準の解釈は、Hu and Bentler(1999)の基準に基づいておこなった。測定の不変性を評価する際に、適合度の減少を以前のモデルと比較することによって評価した。特に、比較適合指数(CFI)<0.01の変化の基準(Cheung&Rensvold、2002)は、適合モデルの有意に減少がないことを示した。構造方程式モデルはMplus(version7.4)を使用した。構成モデルについては、すべての要因が共変することが許された。カイ二乗検定で有意な結果がしめされた(χ2(462)=766.67, p<.001)。しかし、カイ二乗検定は標本サイズに敏感であることを考慮して他の適合指数を調べた。本研究では良いモデルフィットを提案した:標準化二乗平均平方根残差(SRMR)= 0.053、CFI = .955、および二乗平均平方根誤差(RMSEA)= .067、(90信頼区間(CI)[.059、.076]。その結果、本研究は次のモデル(弱不変性)に進みました。それは因子負荷量のためにグループ間の均等制約を追加した。カイ二乗検定では、有意な結果が得たχ2(479)= 778.76, p < .001。カイ二乗残差分析は全体的モデルとの有意差を示さず、χ 2 (17) = 12.09、p = 795。その他の適合指数は、SRMR = 055、CFI = 956、RMSEA = 065 (90% CI [057、074]) 適合した良好なモデルを維持した。全体的モデルと比較して、△CFI=-001 であるため、△CFI < .01の基準を使用してもモデルは大幅に変更しなかった。次のモデル(強い不変性)は、弱い不変性モデルからの制約を保持し、項目の切片についてグループ間の等式制約を追加した。カイ二乗検定は有意でしたχ2(496)= 808.57, p < .001。弱い不変性モデルとの違いカイ二乗差検定は有意差を示した△χ2(17)= 29.82, p = .028。しかし、カイ二乗検定におけるサンプルサイズの感度を考慮して、他の適合指数も考慮に入れた。現在のモデルでは、SRMR = 0.05、CFI = .954、RMSEA = .066(90%CI [.057、.074])であり、すべて良好なモデルフィットを示した。これは強い不変性モデルに有意な変化がないことを示す。モデルフィットは許容範囲内であり、CFIの.01を超える減少はなかった。これは、結果がグループ間で比較可能であり、違いが参加者の回答バイアスによるものではないことを示唆している。以降のすべてのモデルの測定部分は、強い不変性モデルと同じ制限を使用した。
潜在平均差(Latent mean differences)
構造モデル(Structural model)
測定の不変性が性別間で確立されていることを考慮してパス係数を調べた。具体的には、両性間でさまざまなタイプの反すうとPGIが、心的外傷後反応に及ぼす影響について調べた。測定不変性のためにカイ二乗差検定を使用することは制約されるべきパラメータおよびサンプルサイズに対する感度を考慮するとあまりにも消極的かもしれないが構造モデルを分析するとき、すべてのパラメータ推定値がエラーなしで偏りがないと見なされる。したがって、モデルの適合性を比較するために、より統計的に厳密なアプローチ(すなわち、カイ二乗残差分析)を使用した(Little,Card, Slegers, & Ledford, 2007)。すべてのパスが性別間で異なることを許された無制約モデルは、以下の結果をもたらした;results: χ2
(496)= 808.57, p < .001; SRMR = .057; CFI = .954; RMSEA = .066,90% CI [.057, .074]。性別の違いを比較するために、制約されていないモデル (つまり、強い不変性モデル) は、制約付きモデルと比較した (すべての回帰パスが性別に対して等しくなるように設定);χ2(511)
= 839.14, p < .001; SRMR = .083, CFI = .951; RMSEA = .066,90% CI [.058, .074]。カイ二乗の残差分析は、これらのモデル間に有意差を生じ、△χ2 (15) = 30.56、p = .010、性別間のパス解析に有意な差がある可能性があることを示す。節減を高めるためにどのパス解析をゼロに固定するか、または性別間で自由に推定するかを評価するために、カイ二乗残差分析を実施した。このモデルからのすべてのパス解析を図1に示します(PGI上で後退するパスPTSは男性に対してのみゼロで固定される。PGI =個人的成長イニシアチブ。 DelRum =意図的反すう。 IntRum =侵入的反すう; Ref / Brood =省察と考え込みの組み合わせ。 PTG =心的外傷後成長、PTS =心的外傷後ストレス。)
●両方の性別について、PGI(β = 41、標準誤差[SE] = .09、p .001、両性) および意図的反すう (β= 59、SE = .09、p < .001、両性)から外傷後成長への有意な正のパスが示された。
●男性の省察/考え込みから心的外傷後成長のパスは有意傾向(B = .20、SE = .11、p = .060)、女性は有意な負のパスが示された(B = −19、SE = .09、p= 0.029)。
●心的外傷後ストレスは、侵入性反すう(男女ともにB = .55、SE = .09、p <.001)および省察/考え込み(B = .35、SE = .08、p <.001、 両方の性別)からの正のパスを示した。
●女性はPGIから心的外傷後ストレスへの有意な負のパスも示された(B = - .19、SE = .09、p = .019)が、男性ではこのパスはゼロに固定された。
●侵入的反すう(男女共にB = .21、SE = .10、p = .033)および省察/考え込み(B = .95、SE = .13、p <.001、男女共に)から抑うつへ正のパスが、PGIから抑うつおよび負のパスへ(両性についてB = −20、SE = 0.07、p = 0.004)示された。
●男女共に意図的反すうから抑うつは、有意傾向の負のパスを示した(B = −17、SE = .09、p = .050)。
最終モデルにおける意図的反すう、省察/考え込み、心的外傷後成長、心的外傷後ストレス、および抑うつのR二乗は、男性で.02、.05、.41、.38、.54、女性は.02、.04、 .35、 .52、 .65でした。PGI から侵入反すうへのパス解析はゼロに固定された。したがって、現在のモデルにおける侵入反すうについての差異は示されなかった。
間接効果(Indirect effects)
ブートストラップにより反すうによる外傷後の結果に対するPGIの間接的な影響を調べた。PGIと侵入的反すうの関係は、男女共にゼロに固定されていることを考えると、統計的に有意ではなかった。心的外傷後反応に対するPGIへの侵入的反すうの間接的な影響はなかった。しかし、外傷後反応に対する PGI の直接的な影響を調べるためにモデルに侵入反すうを残し、異なるタイプの反すうを統制した。
●両方の性別についての意図的な反すうによるPGIから心的外傷後成長までの有意な間接係数(両方の性別についてβ= .08, 95% CI [.02, .16], SE = .04)を示した。
●PGI からの省察/考え込みを介した外傷後ストレスへの重要な間接的効果も示された(両性別についてβ= −.08, 95% CI [−.15, −.03], SE = .03 = 性別)。
●省察/考え込みによる抑うつに対するPGIの有意な間接的効果が示された。
共変量効果(Covariate effects)
潜在的な共変量の影響を調べるために、3つの共変量の影響を統制した。外傷からの時間、直接事象(1 =直接曝露、0 =間接曝露)、および意図的事象(1 =意図的危害、0 =意図しない)と6つの内性変数(侵入的反すう、意図的反すう、省察/考え込み、心的外傷後成長、心的外傷後ストレス、および抑うつ)。基本的なモデル(すなわち、強い不変性モデル)で、モデルを共変量と比較するために共変量を含む強い不変性モデル共変量を評価した。共変量を含む強い不変性モデルのフィット指数は、以下の通りであるχ2(598)= 978.21, p < .001; SRMR = .057; CFI = .945; RMSEA = .066, 90% CI [.058,.073]. Compared to the regression model with covariates, χ2(615)= 1011.60, p < .001; SRMR =.066, CFI = .943; RMSEA = .066, 90% CI [.059, .074]、共変量のある回帰モデルと比較するとχ2(615)= 1011.60, p < .001; SRMR =.066, CFI = .943; RMSEA = .066, 90% CI [.059, .074]、カイ二乗残差分析は、これらのモデル間に有意差を生じさせ(△χ2 (17) = 33.39, p = .010)、内性変数に対する共変量の有意な効果を示す。
●外傷後の時間は女性の間で心的外傷後ストレスと負の相関があった(β= −.25, SE = .09, p = .004)。
●直接的(事象)は、男性(B = .28、SE = .13、p = .37)と女性(B = .25、SE = .12、p = .049)の省察/考え込みと正の関連がありました。
●意図的事象は男性の侵入的反すう(β=−.29, SE = .15, p = .049)と省察/考え込み(β=−.38, SE = .18, p = .031)と負の相関はあるが、女性では侵入的反すうと(β= .31, SE = .13, p = .016)正の相関が示された。
しかし、共変量を含めた後の回帰パスと間接効果の方向と全体的な強さは、共変量のないモデルと比較して同じであった。
考察(Discussion)
本研究の目的は、トラウマと抑うつの先行研究から異なる反すうの検証と過去3年間に PTE を経験した男子大学生と女子大生の間で、様々なタイプの反すう (すなわち、侵入的および意図的反すう、考え込み、省察) を通じて心的外傷後の反応(すなわち、心的外傷後の成長、心的外傷後のストレス、および抑うつ)に対するPGIの効果検証することであった。
●RQ1に関して、侵入的反すうと意図的反すうには違いが示されたが、省察と考え込みは不透明であった。
これは、MDD(大抑うつ性障害)以外の心理的症状を受けている人たちでもはっきりとした考え込みや省察の要因を示すのが困難であるかもしれない(Whitmer&Gotlib, 2011)。また、抑うつの人と類似して省察が有益ではないかもしれないことが言えるだろう(Whitmer & Gotlib, 2011)。おそらく先行研究で省察と心的外傷後成長および心的外傷後ストレスの両方との関係を他のタイプの反すうがモデルに含まれていたときに見いだせなかった理由の一つかもしれない(e.g., Cann et al.,2011; Stockton et al., 2011)。さらに、本研究では省察は心的外傷後ストレスおよび抑うつと正の相関が示され、PGIと負の相関が示された。したがって、もともと Treynor ら (2003) によって定義された考え込みと質的に類似していると思われる。外傷的状況に曝された後の意味作りに向けた継続的な認知過程による努力は直線的ではなく、より複雑な変化過程を伴うかもしれない(Park、2010)。このような状況では、省察 (特に認知問題の解決へ積極的に関与することを含む) の方略には問題があり否定的な結果につながる。それにより考え込みと区別することが困難になると思われる。CES-Dの従来のカットオフ値(16以上)を使用して、現在のサンプルの女性の41.0%および男性の42.7%が他の一般の大学生カットオフ値(e.g., Radloff, 1991)以上のスコアを示した。このことはPTE後の特有の認知処理を示されており、これは抑うつ症状とは異なることを示している。
仮説の検証
●本研究の仮説 (H1)である、女性が男性よりも反すうと外傷後反応 (すなわち、外傷後成長、外傷後ストレス、抑うつ) がより高いことは部分的に支持された。しかし意図的反すう、省察/考え込み、心的外傷後ストレス、および抑うつの性差は支持されなかった。性差の外傷後成長と侵入的反すうの間には少ない効果の大きさが認められ、女性は男性より高い得点を示す傾向であった。これは女性が男性よりも高い得点を示した過去の研究と一致した(Vishnevsky et al。、2010)。省察/考え込み、心的外傷後ストレス、抑うつの性差が見られなかった理由の1つとして、PTE直後に性差に関係なくさまざまな反すうや症状に取り組むことは自然なことかもしれない。確かに、Cannら(2011)は、参加者がPTEの直後により多くの反すうに着手していたことを発見した。今後は、男性と女性の間で時間が経過により反すう、外傷後ストレス、および抑うつレベルの変化を調べるべきであろう。
●仮説2(H2)の、PGIが意図的反すうによって外傷後成長と積極的に関連し、抑うつと負の関連を示すだろうについては、両性で支持された。
PGIと心的外傷後成長間での正の関連は過去の研究と一致していた(e.g., Blackie et al., 2015; Borowa et al., 2016; Shigemoto et al., 2016)。
しかし、本研究は横断的研究の性質のため、PGIがPTE後の潜在的に重要な役割についての因果関係を実証することはできない。結果として今後の研究では、PGIがPTE後の心的外傷後成長が意図的反すうを通して直接的または間接的の両方で高めることができるかどうかを検討する必要があるだろう。高いPGIを持つ人たちは個人的な成長に基づいて行動することができ(Robitschek et al.,2012)、意図的かつ省察的な対処方略をとることができる(Robitschek&Cook、1999)ことを考えると生産的思考(すなわち、意図的反すう)と積極的な対処(すなわち、資源と意図的な行動の使用)を通して成長を経験する。
●最後に、PGIおよび意図的反すうは心的外傷後成長を予測したが、心的外傷後成長について説明されたのは全分散の50%未満であった(男性は41%、女性は35%)。これは、成長に影響を与える可能性がある他の変数があることを示している。研究者たちは、早期の対処が後の成長につながる可能性があることを示唆している(Tedeschi & Calhoun,2004)。実際に対処は、社会支援、過去の外傷経験、資源喪失、健康問題、性別、年齢、教育などの変数を考慮した後でも、外傷後成長の重要な予測因子であった(He,Xu,&Wu, 2013; Sattler,Assanangkornchai,Moller,Kesavatana-Dohrs, & Graham, 2014)。さらに、PGIは抑うつから保護することが示されたが、これは先行研究と一致していた(et al.,Robitschek&Kashubeck、1999)。さらに、女子学生も外傷後ストレスが少ないことが報告された。これらの関連はより少ない省察/考え込みを招くことによっても発見された。また、PGI が外傷後成長モデル (Tedeschi & Calhoun, 1996) に示されているように、外傷後成長特性として重要な役割を果たす可能性があることを示唆される。言い換えると、PTE に先立って PGI を増やすことは、将来の外傷後ストレスや抑うつ症状を緩和し、外傷後成長を強化することができるだろう。しかし、PGIと外傷後のストレスの負の関連が女性の間でだけで示されたのは、先行研究の様々な結果でみられる負の関連(e.g., Blackie et al., 2015)、有意な関連はない(Borowa et al.,2016; Shigemoto et al., 2016)を示す。これは性別の緩和効果が原因である可能性があり、それによって性別を組み合わせることで、女性の心的外傷後ストレスに対するPGIの効果が排除された可能性がある。しかし、PTEを経験した参加者の間でPGIと対処方略の関係を調べた研究はない。したがって、今後の研究はこれらの関係を検討すべきである。
●RQ2を検討する際に、さまざまなタイプのPTEからの経過時間がPGIの効果にどのように影響するか、またそれらが心的外傷後反応および反すうとどのように関連するかを調べた。共変量と反すうおよび外傷後反応の間には有意な関連性が認められたが、反すうと外傷後の結果に対する PGI の効果は、共変量を含めても変化しなかった。
これは、PGIと心的外傷後反応との間の関係は外傷の特徴とは無関係であることを示している。PGIと心的外傷後反応の間の外傷の特徴の影響は限られているが、先行研究ではコミットメント、制御、チャレンジ精神を含む、より高い心理的な安定さを持つ人々は、ストレス要因の特徴を考慮した後でさえも、より低い心的外傷後ストレス事象を報告したことを示した(King, King, Fairbank, Keane, & Adams, 1998)。ただし、本研究のサンプルは大学生に限られており、PTEの種類がアンバランスだったことを考えると、心的外傷後反応に対するPGIの効果が異なるサンプルでのトラウマ特性と無関係であるかどうかを調べることが重要である。さらに、PGIと心的外傷後反応の関係は外傷の特徴を統制した後も変化しなかったことを考えると、これはPTEから経過した時間とPTEの種類を考慮して人々がどのように異なるタイプの反すうをするかを完全に理解すること、そして人々がPTEの後にPGIの影響を超えてどのように反応するかが重要である。
具体的には、PTE後の時間は女性の間で心的外傷後ストレスと負の関連を示したが、男性については見られなかった。時間が経過するにつれて減少した抑うつと大きな正の関連を示しているPTE後の時間の有意な影響は先行研究のメタ分析と一致する(Helgeson et al.、2006)。しかし、性差は考慮されていないため、回復における時間の影響のさらに検討する必要がある。また、性差については、直接の暴露は省察と考え込みと正の関連していた。しかし心的外傷後反応とは関連していなかった。直接的な曝露は間接的な曝露よりも外傷性が高いと主張されているが(Frazier、2012)、直接的な曝露よりも有意に多くの心的外傷後ストレスを誘発する可能性がある。またメディアを通じて間接的な曝露の影響も示されている(Holman, Garfin, & Silver, 2014)。直接的な暴露と心的外傷後の間に有意な関係はなかったことを考慮すれば現在の研究ではストレスがあるので、間接的な暴露の量を次のように検討することが重要かもしれません。心的外傷後ストレスに加えて、本人に関わる直接的な曝露レベルが与える影響を調べることが重要であると考えられる。さらに、意図的なPTEは女性の侵入的反すうと正の相関があるが、驚くべきことに男性の場合の志向性として侵入的反すうと省察/考え込みに負の相関が示された。しかし、志向性と心的外傷後ストレスおよび抑うつの両方との間の正の関係を見出した研究の参加者の75%近くが女子大学生(Frazier et al。、2009)であったことを考えるとPTE後の志向性は男性と女性の反応の仕方に違いがあるかもしれません。言い換えれば、女性は意図的な事象後に侵入的反すう関連する可能性が高く、男性は意図的ではない事象が侵入的反すうと関連する可能性がある。これは、PTE後の性別の違いがさまざまなタイプの反すうに与える影響を調べることの重要性を示すだろう。
研究の限界(Limitations)
本研究ではいくつかの限界がある。
●大学生と一般人のPTEを経験する有病率は同様であるが(Kessler、Sonnega、Bromet、Hughes、&Nelson、1995)、子供と高齢者では反応が異なるため、年齢層と性別によって異なる可能性があるだろう。
●PGIは形質として検討されてきたが(Shigemoto et al.,2016; Weigold&Robitschek,2011)、これは横断的研究であった。したがって、PGIが心的外傷後成長を促進して病的な症状を軽減するかどうか、あるいは個人がPGIに関連するスキルを身に付け、外傷に対処するとき適応的な反すうを使用できるかどうかは明らかではない。スポーツで例えると、個人の能力に対して能力が低いプレーヤーと対戦するよりも、上級者と対戦するほうが個人の能力を超えてプレーできる可能性が高いだろう。ただし、試合前の個人の既存能力と比較して、この成長は重要ではないと考えている。
個人のPTEに関する情報が不足しているため、モデル内のさまざまなPTEのサイズを統計的に統制したが、すべてのPTEがモデルの共変量として含まれるというわけでない。結果として、共変量を制御した後の結果は、さまざまなPTEを代表例でない場合がある。
今後の研究の方向性(Directions for Future Research)
今後の研究に対する方向性について示唆する。本研究では、PGIは女性のみ心的外傷後ストレスの軽減と関連していることが示された。しかし、どのような要因がこの関係に寄与し得るのかは不明である。女性と男性がさまざまな対処方略に潜在的な違いがあることを考慮すると(Robitschek&Cook,1999)、自身のPGIレベルに関連した対処に性別の影響を調べることが重要になります。さらに、意図的な出来事を経験した後に女性と男性がどのように異なって反応したかを考慮して、今後の研究は意図的に実行されたPTEを経験した人々のより多くのサンプルを含めることによってこの関連を探るべきである。最後に、研究はPTE直後における省察の影響の検証をするべきである。本研究で省察を使用した人も外傷後ストレスや抑うつの増加を経験したがオリジナルの著者によって示唆されたように省察が有益であるかもしれない可能性がある(Treynor ら、2003)。
含意(Implications)
最後に、本研究の結果に基づいていくつかの含意がある。先行研究(O’Donnell et al.,2004; Rytwinski et al.,2013)と一致して、PTE後に心的外傷後ストレスと抑うつの両方が増加していた。これは大学生を対象としたPTE後の心的外傷後ストレスや抑うつの症状を評価することの重要性を高めています。さらに、省察は抑うつの症状を緩和するのに効果があると考えられていたが (Treynor ら、2003)、本研究では反すうの分析的スタイルがPTE の後に有害である可能性があることを示唆している。これは、省察が効果的ではない可能性があり、うつ状態にある人と類似していた(Whitmer&Gotlib、2011)。研究者は自己省察が罪悪感や恥の感情を引き出す可能性があることを考慮して、PTE後のクライアントの過度の省察を注意深く監視すべきであることを示唆している( Stuewig&Mashek、2007)。また、外傷に曝されたサンプルの中でRRSの省察下位尺度を使用している研究者や臨床医は、事前にRRSの因子構造を調べて、クライアントが省察と考え込みを区別できるかどうかを判断する必要がある。最後に、横断的な研究の性質を考慮すると、個人に外傷前の訓練を提供することで外傷の間の対処を容易にするかどうかを評価することは重要であるだろう。具体的には、意図的な成長トレーニング(IGT; Thoen & Robitschek, 2013)などのPGIスキルを教えることを目的とした介入を利用すると、抑うつ症状から保護することが示されている(Borowa et al., 2014; Harmon et al., 2014)。しかし、IGTはまだ適用されていないため、これらの研究を実施することは、IGTがPTEの後に対処している人々に効果をもたらす可能性があるかどうかに関するより明確な考察が得られるだろう。
結論(Conclusion)
本研究は、抑うつと外傷の文献から反すうを統合する新しい洞察と、PTE 後の症状の緩和と成長を促進するために PGI を適応する際の潜在的な利点を示唆する。省察と考え込みが区別できないことを考慮すると、PTEの後に省察のどの側面が有害または効果的になる可能性があるかを評価することが重要であると思われる。さらに、現在の知見では、意図的反すうと省察と考え込みの組み合わせによる外傷後成長に対するPGIの間接的な影響と心的外傷後ストレスに対するPGIの間接的な影響、そして意図的な反すうと省察と考え込みによる抑うつに対するPGIの間接的な影響見つけることである。また、本研究は性差の心的外傷後反応に対するPGI効果を調べるためであったが、女性はPGIと心的外傷後ストレスとの間に直接的な負の関連を示しており、より高いPGIが女性にとってストレスと関連していることを示唆している。これは、PTEの後に人々がPGIのスキルをどのように利用するかについての潜在的な性差の違いを示唆される。最後に、PGI、反すうスタイル、および心的外傷後のすべての関連性は、外傷、方向性、および意図的からの時間を制御した後でも変化しなかったことを考慮すると、PGI の効果はこれらの外傷特性から独立しているかもしれない、そしてPTEの後のPGIの役割を強調します。しかし、外傷後の転帰に対する外傷の特徴の重大な影響を考慮すると、病状を軽減するためにはこれらの特徴を考慮に入れることが重要である。
最後まで読んでいただきありがとうございます( *´艸`)
レビュー論文
Shigemoto, Y., Low, B., Borowa, D., & Robitschek, C.(2017).Function of Personal Growth Initiative on Posttraumatic Growth,Posttraumatic Stress, and Depression Over and Above Adaptiveand Maladaptive Rumination. Clinical Psychology. 73,9,1126–1145,
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