No,190.知識・感情・意志の話「知情意(ちじょうい)について思うこと」
参議院選挙を見ていて「人は論理的なことでは動かない(票につながらない)」と改めて思った。
政策を訴えたところで多くの有権者には届かない。
結果的には、論理ではなく感情(以下、情)に訴えることが票につながるのは自明だろう。
それを裏づける研究もある
外見的な魅力は情に訴える典型例であることからもわかるだろう。
知情意(ちじょうい)
かの有名な哲学者カントはこういった言葉を残している
人間には「知情意(ちじょうい)」という3つの働きがあり、そのバランスによって動いているといいます。
◉ 知とは、文字どおり知識・思考のこと。物事を分析したり理解し判断することです。
◉ 情とは、感情のこと。相手の心を理解する感性、人の心に働きかける能 力など。また喜怒哀楽など湧き出る感情です。
◉ 意とは、意志のこと。意志とは、一過性や努力など心や行動をコントロールする能力のことです。
知だけで動けば人間味のない人となり、情だけで動けば感情に流され軋轢がうまれ、意だけで動けば柔軟性や寛容性のない人となるだろう。
考察:知情意はどのような順序をたどり喚起していくのか?
知情意の違いについて説明したがどのような順序をたどるのだろうか?
以下3つの例から考察してみる。
1. ジェームズ=ランゲ説
ジェームズ=ランゲ説とは、何らかの刺激に対して、まず体が反応し、それが意識化されることで感情が生まれていく、と考える理論です。
熊にあった場合
✖ 怖い(知)⇒足がすくむ・鳥肌が立つ(情)⇒逃げ出す(意)
ではなく
〇 足がすくむ・鳥肌が立つ(情)⇒怖い(知)⇒逃げ出す(意)と述べている。
2. 天才数学者といわれる岡潔は「人間の建設」という著書の中でこう述べている。
『知や意によって人の情は強制できない』『情が主にならないと感情意欲が働かないので前頭葉(知)が命令するという形式にはならない』
3. 生脳進化学者 であるポール・マクリーン博士は「三位一体論」を唱えている。※この理論は今では否定されているが、考察をするにはいい材料なので引用します。
① ワニやトカゲ:爬虫類的脳(脳幹)
脊柱から直接発言し、
いわゆる本能的な反応を司ります。
心臓を動かす・呼吸・性行動などの生理現象だったり反射的反応
② 犬・馬:哺乳類的脳(大脳辺縁系)
視床下部や脊柱を始めとする器官を含み
感情や性的発動や快楽中枢を司る脳の事です。
喜び・愛情・怒りなどの感情
③ 人間:人間的脳(大脳新皮質)
論理的思考・数学的思考・認知能力など知的な活動をおこなう
知情意を三位一体論に当てはめると、脳幹(情)⇒大脳辺緑系(情>知)⇒大脳新皮質(知=意)となる。
結論
紹介した研究から「人間は情が喚起したのち、知による分析・判断、最後に意により行動する」といったことだろう。
人が人である理由は大脳新皮質(論理的思考など)の働きによるもので、事実、学問は大脳新皮質なしではクリアできない。
とはいえ、大脳辺縁系などの感情豊かな人が魅力的にうつることもある。
知情意のバランスが重要だといえるだろう。
筆者作成
さいごに
「山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。 知に働けば角が立つ、情に棹(さお)させば流される。 意地(意)を通せば窮屈だ。 とにかく人の世は住みにくい」夏目漱石「枕草子」
最後まで読んでいただきありがとうございます( *´艸`)