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捏ねる

numerate とliterateという言葉がある。

前者は数字に強い、つまり私と真逆の特性を指し、
後者は文字が読める、文芸的であることを示す。


台所に立つことが増える、というか自分の料したものしか口にしない日々が続く中、料理はliterateであれば可能だが、菓子作りではnumerateであることが必須だと理解した。

料理は、作り手の判断で文字数を減らしたり修飾を加えたりしても何とかかたちになる。

つまりはアスパラをピーマンで代用したり、醤油を3分の2量に減らしても、その一皿ができないということはない。味が薄いだのあぶらっこいだの言われても、ごちそうさまの時は来る。塩梅というやつでかえって家族好みの味になったりもする。
だが、お菓子は違う。

砂糖とバターを自己判断で減量すればパサパサのドーナツができ、卵を常温に戻さなければ生地がダマになり、これは家族にも出せないなというフルーツケーキができる。いやケーキができなかったこともある。なんにせよパウンド型一台まるごとの自己消費はつらい。

ともかく数学的条件を重んじなければ結果はついてこない。そこに散文の入り込む余地はない。"be numerate!"
ぱちんとはじかれた寂しさを噛みしめながらパサパサやダマダマを食む。


パン作りは、その中間にある。
少しなら詩歌を折り込んでも、民俗学的表現にトライしても、それなりだ。数字にうとくても、だいじょうぶ。
同僚が私にも出来そうな簡単なレシピを教えてくれた。

材料に少しの加減を加え、薄力粉を足したり全粒粉を混ぜたり、寝かし、や 発酵、というレシピには無いが それらしい工程も真似事のようにやってみる。丁寧にやると面白いように出来上がるパンのグレードが上がって、楽しい。


冷蔵庫から取り出した生地のひんやりとした重たさ。弾力と滑らかな触り心地。折りたたむようにして軽く捏ねると、自分の中の空気も、すう、と音がして抜ける。
レーズン胡桃アーモンド甘納豆オリーブなどを思いつくままに入れてみる。
丸めたあと切れ目を入れて粉を振って焼く。バターをのせて焼く。胡麻をつけて焼く。
なかなかそれらしい。調子に乗ってくる。
ここでははじかれない。


幸せという言葉が丸い形になり、手のひらにある。



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〈同僚に教わったあとちょっと修飾したパン作りレシピ〉

強力粉180グラム
塩3グラムくらい
ドライイースト3グラム
三温糖5グラムほど
を深い容器の中で混ぜ
水130ml
を加えてスプーンで混ぜ
蓋をして冷蔵庫の野菜室へ
翌日焼く 

200度に温めたオーブンで20分180度に下げて5分ほど

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さや
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