臀部 〜断章 体のはなし〜
生命力をみるところ。
生き生きしている人の臀部には張りがあり、疲れている人の臀部には張りがない。
直立の力をみるところ。
臀部の上の方、中殿筋が発達していると、左右への運動の強さを感じます。大殿筋が発達していると、上下・前後への運動の強さを感じます。仙骨上の靭帯が発達していると、骨盤の締まる力を感じます。これだけで全部を決められませんが、第一印象としてこうした読み方をしております。
大殿筋が顕著に発達するのは人間だけで、直立二足歩行に強く関係することがうかがいしれます。誰でもが感じる「尻」という概念感覚は、人間に対してしか通用しません。イヌやネコを可愛がるとき、頭や背中、腹には人間と共通した概念感覚を持てますが、「尻」という概念感覚は持てないのではないでしょうか。
二足歩行する動物はたくさんおります。鳥類はみな二足歩行ですし、哺乳類ではカンガルーや一部のネズミがおります。かつて地球上にいた動物では、ワニの祖先や恐竜も二足歩行をしておりました。これらの二足歩行と人間では「直立」の点でことなります。
この場合の「直立」は、大腿部と背骨が同じ直線方向にあることを意味します。人間以外の二足歩行動物は、大腿部と背骨がおおむね直交しており、下肢の伸展力は背骨を短軸方向に抜けていきます。比して人間は、下肢の伸展力が背骨を長軸方向に抜けていく構造になります。大殿筋はこの「直立」にかかせない筋肉であり、人間らしさをあらわす筋肉といえます。
大殿筋の動きを二つに分けると、上方と前方になります。立位において脚を伸ばし上へ伸びようとする動きと、移動において脚を後ろに引いて前に向かう動きです。どちらの動きが強いかは、腰椎1番と5番を触って判断します。