教育現場での残念なタトゥーの扱い
先日、僕の元にある高校生から質問というか意見というかタレコミというか、そんなものが届いた。
通っているS県の高校で暴力団排除の講演会があり、そこでS県警からやって来た講師が以下のようなことを言ったそうだ。
・タトゥーは暴力団と切っても切れない関係。
・タトゥーを入れると温泉やプールに行けないから人生損をする。
・タトゥーを彫る行為は傷害罪で有罪になり、タトゥーを彫れば犯罪に加担するのと同じ。
どうだろうか。
これは本人一人からしか聞いていない情報なので正確性に欠けるが、その上でこれが事実だとすると許しがたい内容である。
(勇気を出して連絡してくれた本人を決して疑っている訳ではないが、もしこのような講演会がある人は録音しておいて欲しい。実際の教育現場でタトゥーがどのように扱われているのか事実を知りたいので。)
では一つずつ片付けたいと思う。
タトゥーは暴力団と切っても切れない関係
何を言ってるんだというか、呆れる。警察がこんなことを言ってしまっていいのだろうか。
警察官ともあろう人が、世間一般的なイメージをそのまま鵜呑みにしてまだまだ人生経験が浅く、多感な時期の高校生の前で講演会などと称して語ることでは無い。
このような考えがタトゥーへの誤解を招き、イメージを悪くする。
最初に断っておくが、僕は警察という組織が嫌いだから言っている訳では無い。たまに不祥事をやらかす警察官もいるし、横柄な警察官もいることは事実だが、日本の治安維持のために寝る間を惜しんで働いている警察官もいる。要は警察という組織の問題ではなく、個の問題だと思っている。
さて、確かに、暴力団の人はタトゥーを入れている、というイメージがあるのは理解しているしそれは仕方ない。統計を取った訳ではないが、おそらく殆どの暴力団員は何かしらのタトゥーを入れているのだろう。
しかし、タトゥーが入っている人は暴力団なのか?というと全くもってその通りでは無い。
タトゥー=暴力団、タトゥーと暴力団は切っても切れない関係としてしまうのはあまりにも短絡的で無知すぎるし責任ある発言とは到底思えない。
僕もタトゥーはそこそこ入っている。では僕が暴力団と切っても切れない関係なのかというと、全身全霊で渾身の力をもって全力で否定する。
ということで、「タトゥーは暴力団と切っても切れない関係」
これに関しては完全に否定させていただく。
タトゥーを入れると温泉やプールに行けないから人生損をする
警察を代表した講演者が高校生相手に、こんな個人的で主観に基づいた発言があるだろうか。
何をもって人生損をすると言っているのだろうか。
僕はタトゥーを入れてからプールにほとんど行ったことはないが、人生損をしていると感じたことは1mmも無い。
温泉なんてタトゥーが入っていても入れるところは山ほどあるし、つい最近も和歌山県の白浜温泉で露天風呂付き客室の温泉に浸かりながら至福の時間を過ごしたところだ。(ちなみにその宿には大浴場もあり、曖昧だが遅い時間ならタトゥーが入っていても大丈夫という許可をもらった)
もちろん、スーパー銭湯と呼ばれる施設ではタトゥーが入っていると入場できないことが多い。プールなどは露出さえしなければいいのでラッシュガードなどでタトゥーを隠せば入れる。
世の中には、僕を含め、不特定多数の人と一緒に入浴するのが嫌いな人がそこそこいる。要は温泉の大浴場やスーパー銭湯などを好んで入らない人たちだ。そんな人たちにとっては、温泉に入れないと人生損するというより、むしろ大浴場などに入る方が人生損をする。
そしてプールだが、そもそも海や川の方が好きという人たちも多い。
子供がプールに入れなかったら可愛そうという意見も聞こえてきそうだが、そんなの親の教育方針でプールより自然の川や海の方が良いという考えもある。
よって、温泉やプールに行けないから人生損をする、という考え方は完全に個人の主観によるもので、仮に講演者がそう思っていたとしても、高校生の前で講演者が発言するべきことでは無い。
温泉やプールに行けないから人生損をする、と思うのは個人の自由だし、そう思うのならタトゥーを入れなければ良い。しかしそれを正当化し立場を利用して押し付けるのはよく無い。
僕が講演者なら、
「タトゥーを入れると残念ながら今の日本では、限られた施設の温泉にしか入れないし、プールでは隠さないと入場できないことがある。そのような事実を理解した上で、もし君たちが大人になってタトゥーを入れたくなったらこの話を思い出して、タトゥーを入れるか入れないかという判断を自己責任でしてほしい。」
と、このように事実と可能性の話をするだろう。
タトゥーを彫る行為は傷害罪で有罪になり、タトゥーを彫れば犯罪に加担するのと同じ
これに関しては少し繊細な部分があるが、傷害罪ではない事は間違いない。
医師法に違反しているかどうかを現在法廷で争っているところだ。
正確に言うと、医師法違反とされた彫り師が大阪高等裁判所で2018年11月に無罪判決となったが、大阪高検が上告したので最終的な結論は最高裁判所に委ねられる事になった。
だから安易に、タトゥーを彫れば犯罪に加担する、などと発言してしまうのはある意味法律の専門家でもある警察が言うことではない。
そしてそのような事実無根の情報を警察が言うと、何も知らない高校生は信じ込んでしまう。そしてその高校生たちはそのニセ情報を信じたままタトゥーに対する偏見を持った大人に育ってしまう。
非常に残念でならない。
あとがき
今回の書いたこのような事が事実であり、多くの教育現場でこのような事が行われているのであれば、非常に残念というか憤りを感じる。
無知な高校生を前に、権力という立場を利用していかにも正しいことを言っている体で講演するなど言語道断だ。
ある意味、共産主義国家の洗脳教育と同じである。
人は誰でも真実を知る権利がある。タトゥーにはどのようなメリットとデメリットがあるのか、事実を知ってもらい、それを今後の人生にどう生かすか、生徒たちがどう判断するかは自由だし、選択肢を与えるのが教育なのではないだろうか。
方程式や化学式、世界史や地理の勉強など小中高の授業で習う事は非常に多岐にわたる。しかしながらそれらは、どれもその専門分野の入り口であり色んな事に興味を持ってもらい将来的にどのような道に進むかを選択できるように選択肢を多く与えていると、僕は思っている。
しかしながら、今回の講演内容は選択肢を与えるどころか、超個人的な主観に基づいた内容で、しかも誤った情報を与えている。
もし、この記事を教育者の方々が見る機会があれば、どうか一度冷静に考えて見て欲しい。自分が従事する教育現場でこのような事が行われていないか。未来ある生徒たちに誤った情報を与え、選択肢を狭めることをしていないか。
そして事実を、しっかりと語ってあげて欲しい。
事実を知った上で、タトゥーに対する偏見を持つのかどうかはそれぞれの自由であって、個人の主観を生徒に押し付けるのは教育ではないと思うのだ。
もし必要であれば、連絡を欲しい。必要な情報はできる限り提供するし、タイミングが合えば現場まで赴き、僕が語ってもいい。
今後も僕は、タトゥーに対する偏見と戦っていくだろう。
もはや今となってはそれが僕のミッションのような気がする。
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