ぜろのゆうれい
ぜろのゆうれい ふわふわふわふわ
海の藻草のしげみからあがる
それは見えたり 見えなんだり
いわしやさよりのむれをくぐって
さかなくさいゆうれいとなり
すっかりうしおの藍にとけ
それでもゆうれい ふわふわふわふわ
ひかりにとけてしゅうねんを失い
波と波とのあいだから
海と岸とのあいまから
岩のしぶきの花の上
ふわ とうしおの風にのり
やや みれん 海ひとまわり
おもいころもをぬぎ すっかりはだかになり
しずかに見えないけむとなり
りんねの天へ舞いあがる
詩集『浮燈台』(1951年11月*ユリイカ)収録
詩集『海がわたしをつつむ時』(1971年5月*鳳鳴出版)再録
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8月15日にふさわしいものが、この詩にはあるような気がします。