木偶(でく)の歌
太鼓の音は霧の中
石のジャングルのその奥から
あやしくたえにひびいてくる
いやな オセンチ
いやなオセンチで今日も昏れ
わらわら馴れ合うさがのつたなさ
母ちゃん 握手 坊 握手
お天気の午後の 悲しみの 冷え
あ あ あ 満身 創痍 ────
東でもなく 西でもなく
泥にめりこむ花と木偶
ああ 花と木偶 花と木偶
ところで 太鼓の音は霧の中
石のジャングルのその奥から
おいでおいでをしておれば
ぼつぼつ 身支度 ととのえざあなるまい
初出不明
詩集『浮燈台』(1951年11月*書肆ユリイカ)