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今 日
教師にかわって秀雄のうたう歌
人の子の胸の園生に黒い薔薇播け
人の子の瞳の奥に黒薔薇の花播け
焼けただれた死骸の黒の
そのるいるいの上に降りそそいだ黒い雨の
どこへ凭れるすべもない黒い涙の
絶望の 悲惨の金輪際許されぬ非道の
全ブラックの 燃えくすぶる癌の
怒りの土に咲いた黒薔薇の花播け
白い掌 白い爪 白い牙 白い扼殺
また強引に広げる白いエクランの上の 華やかな色どりの
その奥で押される白いボタンの
白ヒヒの詐術をはっきりと見極めるために
いのちゆえに暗い世紀の黒を
いのちゆえに香る黒薔薇の黒を
祖国の喪明けまで
人の子の胸と瞳とに植えつけていかねばならぬ
友よ 日本の教師よ われら清貧の道士のつとめ
君も千万の若鳩のために黒薔薇の園を拓け
詩誌『駱駝』21号(1952年10月)
【註】「エクラン」は「映画の映写幕。スクリーン」
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『駱駝』21号は< かわってうたう歌の試み >です。自分のではない職業をうたうことは、いろんな立場の人の苦労や誇りを疑似体験したことでしょう。でも礒永秀雄は戦後帰国してから教師になっていますので、この場合「日本の教師を代表して」というふうに受けとめられますね。