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12/13【N】西尾維新にハマった10代、いまだ影響が残る40代 -14日目

高校生の頃、西尾維新にどハマりした。

西尾維新は日本のライトノベル作家で、2002年に「戯言シリーズ」と呼ばれるミステリー作品でデビュー。その後も次々にヒット作を生み出し、アニメで大ヒットした「物語シリーズ」、ジャンプ漫画原作の「めだかボックス」、ドラマ化された「忘却探偵シリーズ」のほか、「xxxHOLiC(CLAMP)」や「ジョジョの奇妙な冒険(荒木飛呂彦)」のノベライズなどがある。オタクなら、どこかで名前を目にしたことがあるだろう。

西尾維新の特徴は、筆の速さと言葉遊びだ。筆の速さについてはWikipediaを見ると、デビュー以来毎年10冊近く刊行しているのがわかる。とにかく書くのが早い。
そして、作品中に登場する言葉遊びが、中高生に絶妙に刺さる。

そもそも西尾維新というペンネームも、アルファベットで書くと「NISIOISIN」という回文になっている。それに気づいた時は「ペンネームから!?」と驚愕した。

地の文があり、演出として言葉遊びを挟む……のではなく、地の文そのものが言葉遊びで構成されている。さらにキャラクターがその中で言葉遊びを繰り広げる。彼のミステリーには叙述トリックが多く、ミステリファンには「これはミステリーじゃないのでは」と言われることもあるそうだが、これだけ言葉を弄べてしまうならそうなってしまうのもやむなしと思う。
「こんなに言葉で遊んでいるものが小説になるのか」と10代の自分には衝撃だった。

たとえば、こんな一節がある。

たとえばきみは何のために生きているのかと訊かれたら、ぼくは念のためだと答えるだろう。人が生きている理由なんてその程度のものだし、ぼくが生きている理由もその程度のものだし、大抵の人はその程度のものなのだ

「クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い」より

一事が万事こんな感じだ。「どこが言葉遊びで、こんな意味があり、こういうふうに楽しむものだ」と説明するのも、もはや野暮だろう。どこを切り取っても言葉遊びが散りばめられ、それが絶妙にカッコ悪くてカッコ良い。ずるい作風だ。

ここまでが。
10代の私が見た西尾維新という怪物の話で、この先は40代の私の話になる。
高校〜大学まではずっと好きで追いかけていた。しかし、社会に出て自由な時間が減っていくのとともに、早すぎる刊行ペースについていけなくなってしまい、いつしか離れてしまった。それでもなおなぜか残る彼の影響について語りたい。

大学受験期――おそらく人生で最も語彙力が上がる時期――、私はどっぷり西尾維新にハマり、新刊が出るたび初版で購入していた。その作風は、自然と私自身の思考や文章にも影響を与えた。つまり、言葉遊びで思考が構成されるようになってしまった。

気がつけばついつい言葉遊びをしてしまう。もっと言えば、ジョークを考えてしまう。……いや、正確には、「ダジャレ大好きおばさん」になってしまった。
※注:西尾維新のせいだと言うように書いているが、完全に自己責任であることに注意が必要です

うちの子どもたちがボーダーの服をお揃いで着ようものなら、「シマシマ増し増しの姉妹だな……」と思うし、夏場に牡蠣を食べたいと話していると「夏季限定の牡蠣に課金だな……」と思う。

話は逸れるが、子どもを育てていると、彼らの「言い間違い」が日常的に現れる。
「アイスクリーム」→「あいくしゅみーりゅ」
「YouTube」→「うちゅぶ」
「アレルギー」→「あれぐりー」
「エネルギー」→「えねぐりー」
「博物館」→「はつぶくかん」
「つくえ」→「くつえ」
「いちご狩り」→「いきどまり」
「間違い探し」→「まちがいぱなし」
「猿かに合戦」→「かるさにばなし」
「エレベーター」→「えべれーたー」
「使ってた」→「ちゅかてた」

これらは今は当たり前のように流しているが、実はかけがえのないものだ。幼児の言い間違いは、一度治ってしまうともう二度と戻らない。
動画で残そうと思っても、カメラを向けると途端に下を向いて喋らなくなってしまうこともある。
運良く動画で残せたときは、ぜひ消さずに大切に残してほしい。

話が戻そう。
私が言葉遊びを好きなせいで、その影響が子どもたちにも現れている。
小四の長男と電車で出かけるときなど、突然「今からお互いにお題を出し合って、お題を面白くしよう」などという謎のゲームを持ちかけられることがよくある。
『横浜駅の改札』→『お子様的な挨拶、ぼくかいさつくんでちゅ〜!』
『バナナの皮』→『バハマのカバ、ここはバハマだカバ』
……ハライチのノリボケ漫才の劣化版である。

なにかこれが、子どもたちの今後にの人生に活きるといいのだけれど、このままだとダジャレ大好きボーイ&ガールを生み出してしまうだけだなぁと危機感を抱く母なのであった。

文章を書く習慣を取り戻したくて、ABCを頭文字にしたエッセイを11/30から毎日書いています。(予約投稿の場合もあります)

#26文字のアドベントカレンダー


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