12/12 【M】魔法は本当にあるんだよ -13日目
小さい頃、魔法使いに憧れていた。
人生で最初に魔法に出会ったの童話の中だったと思う。おそらく白雪姫やシンデレラあたりだろうか。
それから幼稚園の頃に「ひみつのアッコちゃん」「魔法使いサリー」「魔法のプリンセスミンキーモモ」なども見ていたらしく、家に魔法のアイテム(のおもちゃ)があった記憶がある。アニメで言えばスタジオジブリの名作「魔女の宅急便」や「天空の城ラピュタ」でも触れていただろう。
小学校に上ったあとは、姉がりぼん派、私がなかよし派で雑誌を買ってもらったので「姫ちゃんのリボン」や「ときめきトゥナイト」、「セーラームーン」、「ミラクルガールズ」「魔法騎士レイアース」などを好んでよく読んでいた。児童書だと「いたずらまじょこシリーズ」「かぎばあさんシリーズ」あたりも好きだった。
色々と考え合わせると、「不思議な力で事件を解決」というお話が好きだったのだと思う。魔法使いの万能感に憧れていた。
根底には「なんでもできるようになりたい」という欲望があったようにも思う。
さて、30年前くらい前。児童向けの書籍でよく「占い・おまじない」にまつわる内容が取り上げられていた。
魔法使いになりたかった小学生の私は、「占い・おまじない」にもハマり、
手相占い、星占い、姓名判断、タロット、数秘術などで片っ端から自分のことを占ったし、「満月の日に銀の指輪をはめて月に向かってお願い事をすると願いが叶う(ただし銀の指輪はアルミホイルで作ったものでもOK)」「真夜中に写し鏡をすると13番目に将来結婚する相手が映る」など、謎のおまじないが大量に載った本も読み漁っていた。
(……この手の本を最近はあまり見ない気がするけどまだあるんだろうか)
一度ハマると、気が済むまで突き詰めるタイプだったため、図書館で大人向けの本も読むようになり「占い・おまじない」のルーツも調べていくようになった。そうすると、そのうち小説、漫画、アニメ、ゲームの中の魔法使いは完全なるフィクションであるということには気がつかされた。
一方で、「おまじない」が存在するということは、「本当の魔法はこの世のどこかにはあるに違いない」という思いも心の底で育っていった。
フィクションじゃなく、「おまじない」のように薄められてもいない、純粋な魔法はどうやったら探せるんだろう。
人に言って否定されるのが嫌で、幼い時からほとんど口に出しては来なかったが、実は心の奥の方にずっとそんな思いを燻らせ続けていて。
だから、アニメのロゴが入っていない、持っていると奇跡が起こる本物の魔法のアイテムが欲しかった。
大人になるにつれて、歴史や社会を学んで、、「純粋な魔法」は子どもの自分が想像していたようなものではないことはわかっていった。
魔法の呪文を唱えたり、杖を一振りしたり、魔法陣を描くだけで、不思議なことがおこるといった、万能のものではなさそうだった。
西洋で言えばキリスト教の教えに背く異端な考えだったり、はたまた錬金術だったり、神が起こした奇跡が魔法だったし、東洋で言えば儀式や祭祀そのもののだったりと言った話だ。
魔法がもたらすはずだった奇跡、万能感への幻想が遠く離れていく一方で、逆に叶わない夢は膨らんで行った。
魔法は本当にはなくても、魔法のアイテムは何とか手に入らないだろうか…?
そうして、大人になったある日のことだった。
(ちなみにまだ結婚する前だったと思うので15年以上前だと思う)
たまたま休日で、何かの機会に横浜の元町あたりを散歩していた。そしたらこんなお店を見つけたのだった。
は…ハーブと、魔女グッズ…?!!!
ほ、本物の魔法…!!??
魔女の専門店…!?!?
興奮して気が付いたらお店に入っていた。
次に気が付いたらハーブティーを買って帰っていた。
その時に気がついたのだった、アニメロゴが入っていない、純粋な魔法のアイテムって""ある""んだよ!
その後当時よりもSNSが流行し、SNSでもハンドメイドの魔法グッズを見るようになっていった。そして、東京都内で魔法などをモチーフにしたハンドメイド品を専門で扱っているお店があることを知った。
い、行きたい!!行ってみたい!!
写真でしかみてなかったあの作品見てみたい!!
矢も盾もたまらず、こちらも気がつくとお店を訪れていた。
そして気がついたら魔法のアイテムを買って帰っていた。
魔法が絡むと、体が勝手に動いてしまう。魔法を求める気持ちは、心の奥の奥、普段は絶対に人から見えないように隠しているけれど、燻る火は太陽みたいに熱いらしい。衝動が抑えられない。
まだ誰にも言ったことはないけれど、子どもも独立して仕事も引退して、何もやることがなくなったら魔法のお店をなんてやれないかしらとも思っている。魔法の雑貨に魔法の本をたくさん並べて。店主はのんびり占いをしているようなお店。(そんな小説ありそうだな。)
まあ夫が間違いなく反対するだろうから叶わぬ夢だけれども。
そんなわけで、今日も心の奥底で。
誰にも知られないようにひっそりと。
魔法を求めて生きている。