【エッセイ】4歳の子どもでも献立を決められるアプリ「タベリー」のUIがすごいという話
献立を考えるのが苦痛だ
献立が決められない。
冷蔵庫の食材ストック、栄養バランス、家にある調理器具や調味料を思い浮かべる。そして今の自分が何を食べたいか、4歳と0歳の子どもが何なら食べられるか。食事までの時間に作れるものは何か。
いろいろなことを考えて決めた献立。
お腹がすいたーと騒ぐ4歳。
「はいはいもうちょっと待ってね。もうすぐできるからね。」
食卓に出した途端4歳児の顔が曇る。
子育てをしていて地団駄を踏みたくなる瞬間である。
「なんでもいい」はなんでもよくない
料理研究家のコウケンテツさんでさえも子どもがご飯を食べないことで悩んでいたらしいという記事を読んだことがある。
親の料理の得手不得手にかかわらず、子どもが料理を食べないのはそう珍しいことではないらしい。
れど、いろいろなことを考えて決めた献立、食事の時間に間に合うように作った料理が「いらない」と言われると、全てが無駄になったような気になって多かれ少なかれ心が傷つく。可愛くてしょうがないはずの子どものことを怒鳴りつけたくなるほど怒りがわく。
一口食べて、口に合わないというならまだいいのだが、うちのムスコは食わず嫌いが多い。見た目が嫌なものに絶対に口をつけようとしない。
そんな子なので買い物をする時から「ねぇ今日何が食べたい?」「好きな食べ物は何?」「給食で何が好き?」なんてきっちりヒアリングはしている。
しかし決まって答えは「わからない」「覚えてない」「ママが決めて」「なんでもいい」。しょうがないので私の好みで作ると、前述の通り「いらない」と言われるのだ。
10秒で献立を決められるアプリ
そんな中、タベリーというアプリに出会った。
キャッチコピーは「10秒で献立を決められる」。
触ってみて、驚いた。
育休中のため一年以上現場から離れているものの、私の職業はWEBのクリエイティブ関係の何でも屋だ。様々なアプリの検索結果画面のUI設計などもやってきたが、タベリーを見て思わず「な、なるほど」と唸ってしまった。
時代は「検索」ではなく「選択」に移行したのかもしれない。
クックパッドのレシピ検索とタベリーの献立選択の違い
料理に関するアプリとして誰でも思い出すのがクックパッドだろう。
クックパッドとタベリーは目的が異なるアプリなので1対1では比較はできない。けれどもレシピを検索するという機能においてこの二つを比較するとタベリーの面白さが見えてくるので敢えて比較させてもらう。
さて、クックパッドにはユーザーが登録した膨大な量のレシピがあり、アプリやウェブサイトではそれを検索することができる。検索というのは文字通り「必要な情報を探し出すこと」。
特定のキーワードで絞り込んだデータを並べ、情報を比較することで、もっとも必要な情報を探すという行為だ。そのため、検索結果画面には比較に必要な情報が揃っていることが求められる。
レシピで考えてみると、一つのレシピにはこのような情報が含まれる。
料理写真、料理名、使用食材、調理時間、手順、材料費。
レシピ検索の結果を表示する画面には「どの料理を作るか比較するための情報」が必要になる。つまり「料理写真、料理名、使用食材、材料費」あたりを表示するのがこれまでの定石だった。クックパッドアプリはまさにそんな形になっている。そして、検索結果は下にスクロールすると無限に表示される。
しかし、タベリーのレシピを選ぶ画面は非常にシンプルだ。
4つの料理写真の中から見た目で選ぶか、食べたい料理がなければ「チェンジ」を押す。レシピを選ぶにあたって、見た目以外に考慮する必要がない。
作りたい料理が決まってすらいないユーザーにとって、何も考えずに料理を選ぶことができるのはとんでもなくありがたい。
検索は能動的、選択は受動的
先に紹介したクックパッドや楽天レシピのレシピ検索はそもそもユーザーは「作りたい料理」があり、それを能動的に探すものとして設計されている。
そういうユーザーにとってレシピを能動的に探すというのは非常に手間がかかる作業なのだ。
タベリーが目指しているのはそんな義務感で料理を作っている人を助けるということなのだと思う。
「作りたい料理のレシピを探す」ではなく、「なんでもいいけど何かのレシピに決める」というUX。この二つは同じことのようで、全く異なる。
この発見は同業者として「マジか」と思わず声が出た。検索でなく選択にする…つまりは、ユーザーが考えなくても良いという形にしたことで、料理が好きじゃないからレシピアプリを不要だと思っていたユーザーを取り込むことに成功したのだから。
4歳児に献立を考えさせることができる「タベリー」
家にニラがあったのでタベリーに「ニラ」を設定して献立をつくるボタンを押した。一番最初に出てきたのがニラ玉だったのでムスコにその画面を見せながら
「ニラ玉でいいかな?」と聞いたところ
「ニラ玉やだ」と答えた。
「じゃあこの中ならどれがいい?」タベリーの画面を見せながら聞く、
「うーんこの中にはない」
何度かチェンジを押すと
「あ、チャーハン好き」
写真を見て選ぶだけであれば4歳でもできる。
「わからない」「覚えてない」「ママが決めて」「なんでもいい」としか言わなかった4歳児。それは頭の中に料理のレパートリーが少なく、本当にわからないし、覚えていないから、自分には決められないと思っていたのだ。そんな4歳児とでも一緒に献立が考えられる。
これはすごいアプリだと心から思った。
その日の夕飯は4歳ムスコも完食した。
他にもある「タベリー」のすごい機能
タベリーには他にも、作った献立全ての食材をまとめて買い物リストに入れられる機能、ネットスーパーと連携して買い物に行く手間を省く機能などもついている。
これらのどの機能も、「家事の一つとしての料理をどれだけ効率化するか」に特化しているのが実に潔い。
家事効率化のためのアプリはともすると「思い出」「楽しみ」といった感情に訴えかける機能を付加しがちだが、それらを切り捨てているのが逆に良い。
WEB屋の仕事に復帰したら、UIの参考にしたいと思わされるアプリだった。
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