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【ビジネスと経営】入門ガバナンスとは何か(その2)「株式会社と取締役」

株式会社とは何者か?

 肉食を主体とする民族にとって香辛料は欠かすことのできない調味料です。
 15世紀から17世紀の大航海時代には、高額で取引される香辛料を求め命がけで海外に進出した欧州の貿易商や船乗りが数多くいました。
 貿易に必要な船と船員を雇うためには大金が必要です。その費用を個人で工面するには大変な苦労が伴いました。そして万が一に航海が失敗した時の損失を個人で賄うことは破産を意味しており、貿易の事業を個人で行うことは大変にリスキーと考えられていました。
 そこで考え出されたのは、多くの出資者がお金を出し合い貿易事業を行う方法です。出資者は出資の割合に応じて利益の配当を受けることが出来ます。もしも貿易船が難破して事業が失敗しても、出資分だけの損失で済みますので、破産する危険も少なくて済むことになります。

 1602年に設立されたオランダの「東インド会社」は、当時としては非常に貴重品であった香辛料を主に輸入する目的で設立された世界最初の今様「株式会社」です。1602年3月にオランダのアムステルダムに設立されたオランダ東インド会社では、出資を分担する商人の代表者により取締役会が設けられ、その代表者による「17人会」が経営の最高議決機関として機能しました。
 東インド会社には特許状と呼ばれる事業の内容を定めた公的文書がありました。この特許状が現在の株式会社における「定款」と同じ性格を有し、そのことが東インド会社を株式会社の原型と呼ぶ理由ともなっています。
 東インド会社を現在の株式会社に当てはめると、株主が事業の出資者で、取締役は事業の運営を任された船長や航海士になり、その他の海員は従業員の役割を担います。

 株主は事業の運営を取締役に任せ、自ら航海に出向く必要はありません。しかし万が一航海が失敗した場合には出資した分の損失を被ることになります。この制度は出資した金額以上の負担は発生しませんので損失の責任は有限で済みます。株主の責任が有限であるため多くの人々は株主として安心して出資することが出来るようになりました。有限責任の制度が株式会社を広く普及させた原因の一つです。

会社の行き先は誰が決める?

 東インド会社の例にも見られるように、事業を行うために必要な資金を多くの出資者から集めることで大規模で難しい事業でも実現が容易になります。会社は出資者に対して出資金に見合う株式を渡します。万が一、出資した会社が破綻した場合には手持ちの株式が紙切れになるというリスクはありますが、それ以上の出資責任を負う必要はありません。有限責任の原理です。

 人気のある会社の株式は高額で取引され、反対に人気のない会社の株式は安い値段で取引されます。株式を売りたい人が居て、株式を買いたい人が居れば、そこに出会いの場が必要になります。株式市場とは株式を売買するために設けられた市場で、とくに一定の基準を満たす会社の株式を取り扱うための市場が証券取引所です。
 証券取引所で会社の株式を取引してもらうために会社は上場を目指します。上場のためには各証券取引所が設けている上場基準を満たさなければなりません。上場審査を受けて合格する必要があります。
 上場されている株式は正当な方法で誰でも買うことが出来ます。誰でも株式を買うことが出来るということは、誰でも株主になれるということです。一定以上の株式を持てば株主であっても直接経営に関わることが可能です。

 会社の取締役は意思決定を下すことが主な仕事ですが、意思決定者の取締役を任命するのは株主です。したがって会社の向かう先を決めている者は株主であるとも言えます。このことはコーポレート・ガバナンスを知る上で重要になります。(次回に続く)

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