あの。実はオレ、note書くの初めてなんスけど、覆面パトカー(Twitter(X)ではスモーキー)と申します。よろしくどうぞ。
別のSNS(まぁTwitter(X)なんだけどね)でフォロワー様との意見交換の中で日本国憲法第九十八条の憲法と条約との関係についてあれ??と思った事があったので記したいと思います。
あ、ちなみに、別に僕は法曹界の人間でも何でもないズブの一般市民ですのでそこんとこよろしく。
Twitter(X)って、情報集めには最高なんだけど、長い文章ではどうしても限界があるんだよね。
って事で、早速本題に入りましょう。
まずは、日本国憲法の一番最初の前文を引用します。
これが日本という国家の原理原則ですし、後々重要になってきますので、覚えておきましょう。
また、日本国憲法前文の解説については衆議院資料
"日本国憲法前文に関する基礎的資料"
をご参照下さい。
続いて、憲法八一条と九八条を引用します。
初めて読む人でここでうん??と引っかかった人、結構多いのではないでしょうか。
九八条前段で日本国憲法は国の最高法規と謳いながら、二項で国際法規の遵守を『必要としている』。
『必要とする』→『必ず要る』ということ。
前段と二項でそれぞれ食い違う場合ってどう解釈するのだろうか。
巷でよく見られる論説として、
国会の承認が必要で法整備が必要。
現実的には憲法に反する条約を批准することは不可能。
国内で通常の法律である条約よりも憲法のほうが上位だ。
多国間条約であるから一国の法律よりも権威があると言う事はない。
などとする論説をお見受けしますが、
果たしてそうでしょうか??
ではまず、政府見解を見てみましょう。
1、平成16年4月22日(木) 最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員会(第4回)最高法規としての憲法のあり方に関する件(憲法と国際法(特に、人権の国際的保障))
2、衆憲資第50号/憲法と国際法(特に人権の国際的保障)に関する基礎的資料
から抜粋引用。
雑駁にまとめると、憲法九十八条及び二項間の問題は、
(1)憲法優位説
→ ①積極説
条約も法律に準じて扱うべきと考えられ、条約も違憲審査権の対象に含まれるとする考え方。
→②消極説
憲法81条及び憲法98条1項に「条約」という文言がないことから、条約は違憲審査権の対象に含まれないとする考え方。
(2)条約優位説
条約の効力の方が憲法より優位であると考えられるため、当然違憲審査権の対象にはならないとされる考え方。日本政府公式はこの通説の立場。
また、(1)と(2)は互いに対立関係(後述)
条約の実行力の行使に関しては、日本では公布する事によって、立法を通すことなく国内法に展開する方式。
「国際法優位一元論は、国際法は究極的には国内法を破るものであるというようにゆるやかに捉え、他方、二元論も国家として国際法違反の国内法を放置しておくことは許されないと考えている」
がFAです。
他の学説を見てみましょう。
松田浩道国際基督教大教授著『国際法と憲法秩序(東京大学出版会) 国際規範の実施権限P188~P192/”国内法令の国際法適合解釈義務””憲法の国際法適合解釈義務”の項目より抜粋
本稿の論説では国際法の適合解釈義務について,
国内法令の国際法適合解釈義務(第1項)
憲法国際法適合解釈義務(第2項)とに分けて整理しています。
憲法の専門家の論説でも、憲法が最上位という位置付けではありつつ、『日本国憲法前文の記述にある通り、国際協調主義は決して無視できない』
と言っているのです。
ちなみに、国際協調主義という言葉は記事冒頭で載っけた憲法前文のこの文脈です。
法曹サイドの見解も覗いてみましょう。
違憲審査権とは?2つの分類や違憲審査権に関する判例紹介
憲法八十一条/違憲審査権
https://www.foresight.jp/gyosei/column/unconstitutional-examination/
違憲審査権とは、
国のルールの最上位にあるのは憲法であり、法令等が、憲法に違反することはできない。
その最上位の憲法に法令等が違反していないかどうかを最高裁判所が審査する行為を憲法八十一条で定めている。
違憲審査権は、憲法に違反する法令等による、国民の人権侵害を防止することが目的。
違憲審査権の主体は、最高裁判所(憲法第81条)
重要なのは次の項目⑦。
⑦ 条約
文書で書き記した国家間の合意のことをいいます。条約も憲法第81条には列記されていませんが、まず、憲法と条約との関係については、
(1)憲法優位説
(2)条約優位説という説が対立しています。
(2)条約優位説では、条約の効力の方が憲法より優位であると考えられるため、当然違憲審査権の対象にはならないと解されます。
(1)憲法優位説では、さらに、
①積極説
②消極説
があり、
①積極説では、条約も法律に準じて扱うべきと考えられ、条約も違憲審査権の対象に含まれると考えられています。
一方で、
②消極説では、憲法第81条及び憲法第98条1項に「条約」という文言がないことから、条約は違憲審査権の対象に含まれないと考えられています。
通説はこの立場に立っており、判例も、砂川事件(最判昭和34年12月16日)で「本件安全保障条約は…主権国としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高度の政治性を有するものというべきであつて、その内容が違憲なりや否やの法的判断は、その条約を締結した内閣およびこれを承認した国会の高度の政治的ないし自由裁量的判断と表裏をなす点がすくなくない。それ故、右違憲なりや否やの法的判断は、純司法的機能をその使命とする司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のものであり、従って、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものであつて、それは第一次的には、右条約の締結権を有する内閣およびこれに対して承認権を有する国会の判断に従うべく、終局的には、主権を有する国民の政治的判断に委ねられるべきものであると解するを相当とする。」として、
②消極説の立場に立っています。
さて、
ここでも先程の
(1)①憲法優位説(積極説)と、②憲法優位消極説と
(2)条約優位説
との対立関係が鮮明です。
ここで聞きたいのだが、憲法が最上位で、条約が優先される事はないとはっきり断言される方達に尋ねたい。
『上記、国の見解と、学説、法曹サイドの見解をひっくり返す程の強力な論拠を何かお持ちですか?』
以上から、素人なりに情報を洗ってみた私の現状の見立てとしては、憲法-条約との優位関係について国内法の憲法が、最高法規として位置づけられている事自体は確かに正しいものの、国際法と照らし合わせた時、憲法が国際法を差し置いて最優先されるとの態度を日本政府、学術界も法曹界も取っているとは到底言い難く、むしろ、憲法前文の国際協調主義の原則から鑑みても条約は憲法同様、無視できない位置づけであるとする国側の意思も必ず踏まえるべきでしょう。
それらを無視して条約よりも憲法が上ダー理論はそれこそ乱暴で、ミスリードに繋がるのではないかと考えます。
その他、関連論文を貼り付けますのでご参考に。
憲法と国際法(特に、人権の国際的保障) 北星学園大学 齊藤正彰
憲法論叢第 ll 号 (2004年12月)国際法の国内妥当性と憲法国際法の国内法秩序編入 を巡る諸問題 小野義典城西大学教授
おわりに。
初めて書いたnote記事いかがでしたでしょうか。
Twitter(X)では情報集めに最適でしたが、やはり長い文をじっくり書くのは全くですね。
このnoteはTwitter(X)では味わえない物事をよく考え、発信する面白さかもしれませんね。
また気が向いた時にお会いしましょう。
それでは、皆さん。また会う日まで〜♪
2024/6/5
追記。
この問題、個人的にとても興味深いと思っています。現状の整理も検証もまだまだ甘々だと痛感しています。次回の記事は置き去りになってしまっている、憲法優位積極説の論説を中心にまとめて本記事と比較してみたいですね。
あと、記事を読み直してみてリンクが貼れていない点で不便をさせてしまったかもしれません。その辺は随時整理していこうと思います。
みなさまいつも。ありがとうございます。
2024/7/12
追記。
ただいま憲法九八問題の検証記事の後編として、絶賛執筆中です。
近いうちに出せそうなので、お楽しみに。
2024/7/15追記。
続編記事を書きました。リンク貼っておきます。
日本国憲法第九八条と国際法(条約)との関係と諸問題について その2|覆面パトカー (note.com)