卵が先か、賃金が先か?『ISO通信』第81号(2023.3.26)
「たまごの値段が上がっていて、ビックリした」
「ついにたまごも物価の優等生じゃなくなっちゃったね」
「最近は、何が物価の優等生って言われているか知ってる?」
「うーん、なんだろう?」
「賃金」
少し前に聞いたジョークですが、つい笑ってしまいました。
たまごと賃金、どちらが物価の優等生なのだろうと気になり、調べてみました。
まずは、たまご。以下はLサイズ 1kg当たりの東京での標準価格です。
2000年3月1日:220円
2005年3月1日:265円
2010年3月1日:165円
2015年3月2日:203円
2020年3月2日:190円
2023年3月1日:330円
JA全農たまご株式会社が公開している「相場情報」のサイトで検索した結果です。(相場情報では土日や祝日を除く毎日のデータを検索することができます。)
長い間、200円前後で推移していた価格が直近では330円になっているので「物価の優等生ではなくなってしまった」と感じるのも納得です。
では賃金はどうでしょう。大卒初任給を厚生労働省のサイトで調べてみました。以下は賃金構造基本統計調査から抜粋した数字です。
2000年
男性:196,900円
女性:187,400円
2005年
男性:196,700円
女性:189,300円
2010年
男性:200,300円
女性:193,500円
2015年
男性:200,200円
女性:198,800円
2019年
男性:212,800円
女性:206,900円
(厚労省は初任給に関する調査を2019年で終了しています。終了の理由を探してみましたが、見つかりませんでした。)
初任給も「物価の優等生」と揶揄されてしまうほどの安定ぶりです。しかし、賃金にも上昇の気運が表れてきました。今年の春闘ではトヨタ、ホンダ、日産、日立製作所、パナソニックHD、三菱電機、富士通、川崎重工、三菱重工などの大企業が労働組合の要求に満額で回答しています。ホンダでは春闘の結果が実際に反映される6月以降、大卒初任給が25万円1千円になるそうです。
政府主導の賃上げ要請は数年前からありましたが、今年の賃上げに関しては、物価上昇で家計が悲鳴を上げ、経営者も組合の要求に理解を示したのでしょう。
さて「賃金が上昇するとやる気も上がる」ということになるのでしょうか。
モチベーションの研究で有名なハーズバーグの「二要因理論」によると、賃金の上昇は不満を解消する要因となっても満足度を高める要因にはならないそうです。(満足度を高める要因となるものは達成感や成長実感など。)
「賃金が高くても達成感がなければ満足できない。達成感や成長実感があっても賃金が低ければ不満は残る」ハーズバーグ先生の理論をそんな風に単純化して覚えていたのですが「二要因理論」という言葉は頭の中に残りにくいと感じます。英語の「Two-factor theory」の方が覚えやすい気がするので「よい職場には不満を解消させるファクターと満足度を高めるファクターの両方がある」と覚えたいと思います。
経営者が社員に対して「高い給料を払っているのだから文句を言うな」と言いたくなったら、どのファクターが不足しているのかを考える必要がありそうです。
(モチベーションとやる気の違いや、そもそも「やる気」ってなんだろうという疑問も出てきたのですが、長くなりそうなので、また別な機会に。)
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