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2020年5月の記事一覧
空港でランジェリーを
ひとひとり入れそうなくらい巨大なキャスター付きのスーツケースを押す彼の後ろを彼女は歩いている。もう随分長い間この背中を眺めて過ごしてきたけれど、それも今日で終わりだ。彼女は午後の便で帰国して、二度とこの国に戻ることはないだろう。おそらく彼にも分かっているが、そのような素振りも見せず、口にもしない。だから彼女も。
「少し早すぎたかな」
出発便案内の電光掲示板を見上げながら彼が言った。
「大丈夫
ひとひとり入れそうなくらい巨大なキャスター付きのスーツケースを押す彼の後ろを彼女は歩いている。もう随分長い間この背中を眺めて過ごしてきたけれど、それも今日で終わりだ。彼女は午後の便で帰国して、二度とこの国に戻ることはないだろう。おそらく彼にも分かっているが、そのような素振りも見せず、口にもしない。だから彼女も。
「少し早すぎたかな」
出発便案内の電光掲示板を見上げながら彼が言った。
「大丈夫