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ことばのこと

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考えすぎと言われるわたしが、 言葉を使って日々思いめぐらせていること。
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#詩

今晩は
群青色の折り紙になって
几帳面な誰かに
きちんと
小さく小さく折り畳まれたい

角を合わせて真っすぐな線を引いて
指で何度も何度もなぞって

深い深い
昏い


悲しいほど真っすぐに線を引いて

ある女の部屋について

ある女の部屋について

Ⅰ、嘘つき女の部屋
ペティナイフ
使いかけのレモン
空瓶

小さく畳まれたハンカチ
花束の描かれた洗剤
漂白剤

ガラスの砂時計
透明なマニキュア
薄いレースのカーテン

中原中也の詩集
ペーパークリップ
ライター

Ⅱ、正直女の部屋
ホウロウのミルクパン
果実のかたちのお皿
イチヂクのジャム

新しいストッキング
乳白色の入浴剤
石鹸

待ち針
白粉


昔の恋人からの手紙
空っぽの箱
小石

忘却について

忘却について

忘却

奥の奥の暗い穴ぐら
風もなく音もなく雪だけが降る闇の色
眠れぬ目の奥で見つめ続ける黒い塊
流れを止めぬ水の模様
自分で見ることのない自分の顔
集団ヒステリー
円周率

飲みこまんとする巨大
今はただ、忘れることがこわい