映画「蛇イチゴ」
西川美和監督映画感想第4弾。ネタバレあり。今回は割と映画の話してる。
映画感想
電車のシーンで皆スマホいじっていないとか、「携帯なんかひっきりなしに電話かかってきて持つもんじゃない」みたいなセリフとか、宮迫若いとか時代を感じた。20年前の映画なのか。
普段映画もそんなに見ないし、邦画は特にあまり見ないけど、西川美和監督映画は俺の波長に合うようで面白い。自分や他人に対して嘘つく人が多く出るからかな?それとも何が正しくて何が悪かみたいなテーマが多いからかな?
この映画は見栄っ張りで他人の前では良い人を演じたがる父と、おしとやかで3歩後ろを歩く健気な妻を演じる母、そして、人の不幸を娯楽に変え詐欺も行い、生きるためには家族をも手にかける兄を持つ、馬鹿正直で正義一徹な長女の物語。
俺はこの長女が学校の先生として金魚の世話をサボった生徒をクラス全体の前で学級裁判行うみたいなシーンでこの長女は好きになれんなと思っていた。なので、最後の落ちには納得。兄貴グッジョブ。
正義を振りかざす奴って大抵自分の悪や無知に対しては、事実を見ようとしないから質悪いんだよな。映画の母じゃないけど「あなたの言うことはいつでも正しいんでしょ。はいはい。」って感じ。「お前間違ってるぞ」ていうと逆上してきたり、急に接触断ってきたり話にならないことが多い。
正義マンが多い今の世の中こそ、この映画を見る価値はあるかもしれない。
長女の話
他の家族や親戚連中のキャラが濃くてあくどく描かれているから、長女だけアヒルの中に白鳥がいるみたいに見えるけど、しっかり親から性格遺伝してるなってシーンいくつかあった。
自分が見たくない聞きたくないものから逃げるってのは母親からって感じだし、学級裁判で「○○君(名前忘れた)のお母さんは本当に病気だったんじゃないんですか?」って言ってた女の子を「気味が悪い」と裏で言っていたり、常にお高くとまっているのはのは父親からって感じだった。
母親はおじいちゃんが死ぬ直前苦しんでいて呻き声が聞こえてはいたけど、わざと風呂掃除に専念していて気付かなかったという態度をとった。正直これは母親の状況にも同情はするけど、この母親は自己犠牲的でおしとやかなキャラを家族や人前では演じているけど、誰も見ていないところでは見たくないものに目をふさぐ自己中な人なんだなって俺に印象付けた。そもそも、素の性格は長女より寧ろ長男と合うというところから母親は割とお調子者だし、自分の事しか考えていない性格なんでしょう。
父親は分かりやすく見栄っ張り。そして、人から嫌われたくない小心者。裏では悪口言いまくるくせに本人の前ではおべっかを使う。長男に助けられておいて「あいつも捨てたもんじゃない」とか、リストラされた会社の元社員(?)かなんかに再就職先斡旋してもらうような時でも、「俺のおかけで~」みたいなことを言っていてプライド高いな~と思った。
こういった一つ一つのシーンはたぶん狙ってやってるんだと思うんだけど、俺はそういった察しが悪いので気づかずスルーしちゃうこと多い。でも、西川美和監督映画は比較的電波をキャッチ出来ていると思う・・・。
長男の話
宮迫のキャラ良かった。葬式会場に堂々と知り合い装って侵入して香典盗むとか、父親が借金で破産するという弱みに付け込んで財産名義全部自分にしようとしたりだとか、中学生の妹のパンツ売って金にするとか道徳や倫理観のぶっ壊れ感良いね。
どうせ他人に危害加えるなら、道徳や倫理を破って危害を加えたいものだ。道徳や倫理振りかざして他人を傷つける輩よりマシ。
他人に干渉する以上必ず他人に危害を加えることになる。それが善意であろうと悪意であろうと。俺は他人に危害を加える可能性があるという事実を理解した上で他人に干渉したい。これは善意だからと他人に干渉することへの免罪符掲げる行為はしたくないね。
この兄貴確かにクズはクズだけど、破産したくないがためにすぐに娘を売ろうとした父母に対して、「それはダメだよ」と言っていたのはなんだかんだ兄ちゃんしてたってことなのかな?家を乗っ取ろうとしていたのは事実かもしれないけど、父母を救う現実的な方法としては悪くない手だったようにも思えるし(そこらへん法律詳しくないから分からんけど)。
俺の倫理観ではこの一家で一番善人なのは兄貴なんだよな。嘘をつくことの代償をしっかり自分で引き受けている感が一番ある。(父親は見栄を張る嘘のための借金を踏み倒そうとしているし、母親はじいちゃん見殺しにした事実を隠蔽しつづけているし、長女は自分の嘘や悪意、間違いから目を背け続けているし)