
Masataka Yoshida (吉田正尚)を適正なサラリーで獲得する方法
BOSが Luis Castillo を獲得するためトレード交渉した際に、マリナーズ が Triston Casas を要求したところ、BOSから吉田正尚を一緒に引き取ってくれるならと提案があり、破談になったという話が以前ありました。
後日、BOSの Craig Breslow CBOは事実無根を強調し、Casasをトレードする気は一切ないと火消しに奔走したので真相は藪の中です。
しかし、BOSが吉田をトレードしたがっているのは、ほぼ間違いないようです。
ましてや、BOSは先日大物FAの Alex Bregman と正式に契約しました。
本来3Bの Bregman を2Bと3Bどちらで起用するかは決まっておらず、仮に現3Bの Rafael Devers をDHに回す機会が増えるようだと(Devers自身は3Bから移動したくないようですが⋯)、現DHの吉田がはじき出されますので、トレード話が再燃するのも致し方ない気がします。
また、吉田がトレード候補に上げられるのは他にも理由があります。
吉田は2023年から5年総額 90M の巨額契約を結びましたが、その金額に見合うだけの活躍ができてないのです。
次の表をご覧いただくと分かるように、実際に残したWARは2年通算 1.4 であり、サラリーに換算(Dollars)すると、11.3M の働きでした。
本来ならば、2年通算 34.2M のサラリーをもらっているので、期待されるWAR (xWAR)は 4.3 になります。
実績に見合ったサラリーをもらっているか、あるいはサラリーに見合う実績を残していれば、風当たりは強くなかったでしょう。
でも、あまりにも過大評価された契約を結んでしまったため、活躍したと認めてもらえるハードルも相当高くなってしまったのです。
日本のプロ野球でも、高額な年俸で契約し、鳴り物入りで入団した外国人選手が、成績不振のまま1年で解雇され、期待はずれに終わるというケースを目にしますが、吉田の場合も破格の契約を結んだが故に、窮地に立たされていると言えそうです。

下段は今後3年間の予想WARとサラリーに見合うWAR
もちろん、これは獲得した当時のBOSのフロントにも問題があるでしょう。
吉田はNPB時代もDHメインで起用されており、守備・走塁での貢献が期待できないのは事前に把握していたはずです。
ただ、BOSの本拠地 Fenway Park はレフトが非常に狭く、吉田よりもはるかに拙守の大打者 Manny Ramirez が守っていたこともあります。
だから何とかなるだろうと思った訳ではないでしょうが、吉田は1年目の2023年に713.1イニングほどLFの守備につきました。
しかし、結果は思わしくなく、守備指標は DRS:-4、UZR/150:-4.3、OAA:-8、FRV:-12 と、いずれも低評価でした。
折しも Jarren Duran や Wilyer Abreu、Ceddanne Rafaela らが台頭し、
Tyler O’Neill が加入してきたこともあり、昨年は対右投手メインのDHに配置転換されました。
吉田の打撃がフィットするチームはあるでしょうか?
そのひとつは、恐らくマリナーズ だと考えます。
次の表はマリナーズ の2001年と2024年のチーム打撃成績を比較したものです。
本拠地の T-Mobile Park (2001年当時はSafeco Field)は極端に投手有利の球場として知られています。
それでも、2001年のマリナーズはアメリカン・リーグでトップの打撃成績を残し、MLB新記録の116勝を挙げて地区優勝を果たしました。
栄光の2001年と昨年の打撃成績の違いは何だったのでしょうか?
その違いはK%とBABIPであることが分かると思います。

次に吉田の2024年の打撃成績を見てみましょう。

K%(=コンタクト能力の高さ)が優秀な吉田はコンタクトを改善したいマリナーズ にとって、ふさわしい打者と言えるでしょう。
重要なのは、実績に見合った「適正な」サラリーで獲得するということです。
また、吉田はDH専任の選手ですから、DHを空けておく必要もあります。
近年マリナーズ はDHに特定の選手を置かない方針を採っていますが、2025年に最も多くDHを任されそうなのは Mitch Haniger です。
Haniger はマリナーズで長年主力打者として活躍し、シアトルでも非常に人気のある選手です。
彼をトレードで獲得した Jerry Dipoto PBOにとっても思い入れの深い選手でしょう。
しかし、加齢と故障の影響もあり、この2年間は衰えが顕著になっています。
復活の可能性もあるとは言え、現在のサラリーに見合うほどの成績を挙げるのは(特に投手有利の T-Mobile Park においては)難しいと思われます。

下段は2025年の予想WARとサラリーに見合うWAR
今オフのBOSの補強ポイントは右打者で、内野には Bregman を補強しましたが、左打者の多い外野にはFAで退団した O‘Neill の穴を埋められていません。
Haniger はその穴を多少なりとも埋められるピースになるでしょう。
BOSの本拠地 Fenway Park は右打者にとって有利な構造をしているため、Haniger の打撃成績も上向く見込みがあります。
どうやら吉田と Haniger はお互いに移籍先のチームにフィットしそうです。
では、実際に2人をトレードする場合、両チームはそれぞれどの程度サラリーを負担すれば良いのでしょうか?
私が考える案は次の表のとおりです。
まず、Haniger が予想どおり 0.2WAR を挙げた場合、1.6M の価値があることになります。
この 1.6M は移籍先のBOSが支払います。
そして、15.5M のサラリーから 1.6M を差し引いた13.9M はペナルティーとしてマリナーズ が負担します。
吉田も同様に、2.5WAR を挙げた場合、20.0M の価値があることになりますので、20.0M は移籍先のマリナーズ が支払い、55.8M のサラリーから 20.0M を差し引いた 35.8M はBOSが負担します。

このトレードによって、BOSが得られるのは吉田の残るサラリー 55.8M のうち33.0% に当たる 18.4M を支払わずに済むことです。
また、2026年以降の2年間のロースターをひと枠空けられますので、プロスペクトの Kristian Campbell や Roman Anthony、Marcelo Mayer の出場機会を阻害せずに済むでしょう。
そして、マリナーズ が得られるのはコンタクトの改善です。
コンタクトの面で吉田は Haniger を上回ります。
FGDC (FanGraphs Depth Charts) による2025年の予想チーム打撃成績から Haniger を除き、代わりに吉田を加えると、チーム全体のK%は 25.4% から 24.3% に改善されます。
昨年のMLB平均の 22.6% には及びませんが、昨年のマリナーズ の 26.8% と比べると、悪くない数字です。
しかも、2025年に関しては、13.9M+6.6M= 20.5M で 1.3WAR を得られる訳ですから、差し引きすると、20.5M-15.5M= 5.0M でWAR1.3-WAR0.2= 1.1WAR を得ることになります。
1.0WARは約8.0Mとされてますので、コスパもまずまずです。

一番下の合計欄はHanigerの代わりに吉田を加えた場合の推計
ちなみに、上の表の合計欄にある wOBAとwRC+ は計算方法が複雑なため、算出できませんでした。
ヘタレですみません⋯🙇♂️
という訳で、あくまでも机上のシミュレーションに過ぎませんが、吉田を適正なサラリーでHaniger とトレードするのは、検討する価値があるように思います。
ではまた。