父に負けた日
幼い頃のある日曜日、帰宅すると父がTVゲームをプレイしていた。
あまりゲームをプレイしないのに珍しいなと思って画面をみてさらにびっくり。今まで麻雀・ゴルフ・野球のゲームしかさわらなかった父がRPGをプレイしている!?。
「面白い?」と私。
「よくわからん」と父。
まあ、見る限り物語序盤でしかもRPG初心者、これから面白さに気付くだろうと温かく見守ることに。
「わからないことがあったら聞いてね」と私。
「ああ」と父。
それからしばらくたった日曜日。
黙々とゲームをプレイしている父。
おー、途中で投げ出さず続けているなんて偉いじゃないか。……あれ?
画面には見たことがない街並みが広がっていました。
???
「ちょちょちょ、ちょっと待って!」と慌てる私。
「何?」と父。
いつの間にか追い抜かされてました。
「あの敵モンスター、どうやって倒したの?」と詰め寄る私。
「いや、普通に」と父。
そんなバカな……。
とある敵モンスターが倒せず数日間進めずに困っていた私。
何度挑んでも倒せない敵モンスターをRPG初心者であるはずの父があっさり倒した……だと?
「いやいやいやいや、めっちゃあの敵モンスター強いじゃん。だからどうやって倒したか教えてよ!」とさらに詰め寄る私。
「だから、普通に。詳しく覚えてない」と父。
今と違ってインターネットなんてなかった時代です。ゲームの攻略は雑誌か攻略本を読むしかありません。もしくは同じゲームをプレイしている友人に聞くことですが父にゲーマーの友人がいるなんて聞いた事ありません。
となれば父が自力で倒したことは間違いない。
そして嘘をついたり私を困らせようと意地悪するような人物ではないので本当にどうやって倒したのか覚えていないのでしょう。
マジか……
まさかゲームで父に負けるとは思っておらず大ショックでした。
圧倒的敗北感。
はあ……
といつまでも落ち込んではいられないので、父が倒せたんだから私にできないはずがないと己を奮い立たせ四苦八苦しつつもなんとかその敵モンスターを倒すことに成功。
その後は順調に攻略し父より早く無事エンディングをむかえることができました。
私より遅れること数日、父もラスボスを倒しゲームクリア。
「RPGも面白いでしょ?」と私。
「うーん、よくわからん」と父。
どうやら面白さが伝わらなかったようです……
それ以降、父がRPGをプレイすることはなく、日曜日になると元気にパチンコ店へ行きましたとさ。
おしまい。