見出し画像

妊婦の腰痛

私は柔道整復師
柔道整復師は全国で約8万人いてその柔道整復師が開設する整骨院、接骨院の数はコンビニと同じくらいあるらしい

そんな中で

産婦人科の病院で妊婦の腰痛外来を受け持つのは私だけだと思う
気が付けば妊婦腰痛ケア外来を受け持ってから10年目に突入した

妊婦の腰痛は妊娠期のマイナートラブルとされ検診で腰痛を訴えても

妊娠中は仕方ないね

で済まされるのがほとんどである

しかし妊婦の約70%が腰痛に苦しむという数字を鑑みると決してマイナートラブルで片付けられないのではと思う

でも妊婦の腰痛に対する施術は

何かあったら怖い

という思いから受け付ける医療機関が少ないのも現実である

そのリスクヘッジを抱く気持ちを理解できない訳ではないが実はそれは腰痛の発生機序を理解していない事の証にもなってしまっているのだ

つまり妊婦以外の腰痛に対してもあまり効果的な治療を提供できない臨床レベルの施術者と評価せざるを得ないという事になる

妊婦という括りを取っ払って日本人の腰痛生涯有病率(人生で一度でも腰痛に罹患すること)は85%という数字がある

腰痛を根治する術を確立したらノーベル医学賞ものと言われるらしいがあながち冗談と言えない数字だとも思う

では何故そんなにも腰痛に苦しむ人が多いのか

それは二足歩行をしている事である
二足歩行で生活し背骨にほぼ垂直な重力が掛かる骨格の生き物は人間だけ
そして人間特有のこの骨格はお尻にとても負担が掛かる

あまり知られていないが腰痛を発症する時は必ず

お尻の筋肉

が硬くなっている(内科的疾患を起因とする腰痛は除く)

故にほとんどの方が腰痛を経験するのである

この腰痛の発症要因に妊婦の腰痛は更に三つの要素が加わる


リラキシンというホルモンの分泌され骨盤周りに張り巡らされている靭帯が緩むことで骨盤が不安定になる(しかしこれは出産時に産道が開くために必要な反応)


胎児の成長によりお腹が前に迫り出し重心が前方に変位する
これにより妊娠後半はその方の体重の2〜4倍腰部周辺の筋肉への負荷が増す


妊娠中は胎児の重さは母体の体重にカウントされるため胎児の成長に伴い股関節(お尻)への負荷が日々増していく

これら三つの要因により妊娠時はより腰痛に罹患しやすくなってしまうのです

長々と書きましたが要はお尻の筋肉を緩めてあげると多くの腰痛は症状が改善する

これは妊婦の腰痛も然りである

ただ妊婦はうつ伏せで腹圧をかけてしまうのは禁忌なので横向きに寝かせお尻の筋肉を緩めたら良い

腹圧さえかけなければ全く安心安全である


これをパートナーがやってあげることで痛みを共有してくれるといった安心感を感じオキシトシンの分泌が促され更に除痛効果が期待できるかもしれない
(妊婦腰痛外来ではご主人と一緒に来られたらケア方法をご主人に指導している)

私はこの知識、技術を多くの助産師や産科勤務の看護師に広め助産師外来で妊婦さんが気軽に助産師による腰痛ケアを受けられる環境にしていきたいと思い活動している


  





いいなと思ったら応援しよう!