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新米ベトナム駐妻|労働ビザをとる④~ローカル病院で健診~

労働ビザ取得のため、日本で色々な書類を準備し、ベトナムでは無犯罪証明を申請してきた。続いては、ローカル病院で健康診断を受けてきた話である。

健康診断は、日本国内でも、ベトナムで受けても良い。日本で受けると、そのあと公証や認証等の手続きが必要になるため、ベトナムで受けるほうが楽だという人もいる。

私の場合、すでにベトナムで暮らしていたため、こちらで受けることになった。というか、会社のスタッフが手配してくれた。病院ならどこでもいいかというと、そうではなく、国から認定をうけた病院でしか労働ビザ用の健康診断は認められないらしい。ローカル病院がほとんどを占めるが、日系を含むインターナショナル病院でも受けることが可能である。

今回、私が行くことになったのは、ローカルもドローカル。健診だけやっている病院ではなく、入院患者もたくさんいるE病院であった。天気は雨、豪雨の中、娘を夫に見てもらいタクシーで向かった。

会社の人事担当アインさんが通訳としてついてきてくれた。彼女に連れられ、受付、採血、検尿、レントゲン、眼科、耳鼻科、歯科、皮膚科、婦人科、内科と色々な場所を巡ったのだが、カルチャーショックの連続である。

ざっと何人いるかもわからないぐらい、数えきれない数のベトナム人患者が座る1階の受付を通り抜け、3階まであがり、たくさんある外来、受付の中からInternational medical check なるところへ到着した。

「書類かいとくから、座ってて」と言うので座って待っている。周りには車いすのおばあさん、杖をついている人、やたらと咳込んでいる人等がいた。久しぶりに、病気の人たちを見たな…そんな感想を抱いた。けっこうなんでもなさそうな人もいた。

しばらく待つと、検尿のコップとスピッツを渡された。とても清潔ではないけれど、用を足すのにためらうほど不潔でもないトイレに向かう。もう何回もとっているし、朝のトイレも控えて準備万端のはずだが、ここで想定外のことが起こった。採尿したカップを便器の中に落としてしまったのだ。

採ったものを無駄にした悲しみと、カップを便器から取り出す虚無感とでいっぱいになるが仕方がない。キムさんにカップ落としちゃったから、もう1個もらってもいい?とお願いする。

キムさんが分かったと言って係りにカップをもらった後、「水飲む?」と言ってくれたのが救いだった。

すぐに出るものでもなく、少し待っていると、「アユイ?」と、採血のスタッフが自分を呼んでいる気がしたので向かってみた。おそらくあっていたのだろう。氏名確認もせず、アルコールアレルギーの有無も確認せず、針をさされた。

氏名確認だけは、こっそりスピッツを確認しておいたが、カルチャーショックを受けた。日本では、必ず氏名確認はするものだ。

そして、針を抜くときに、日本だとすぐにアルコール綿なり脱脂綿なりで抑えるのがセオリーであるが、ここベトナムでは、皮膚を横に引っ張るだけであった。そのあと、ゆっくり絆創膏を貼ってくれた。

国が違えば、看護技術は異なるのはそうだろう。理にかなっているのは受け入れられるが、とにかく氏名確認だけはしてほしい。

レントゲンでは、撮影室に4人ぐらいが一斉に入り、続々と下着を外して、そのまま撮影にいどむ。私にだけ、検査着を渡してくれたが、他のおばさま方は真っ裸だった。

日本だったら、前室なり更衣室があって服を脱ぎ、1人ずつ入っていくのだがそんなものはなかった。

雨季のスコールのせいか、暗くて、ちょっとじめじめしている。レントゲンが終わり廊下をすすんで、別棟にへ行き、1階にある眼科へ向かった。眼科では、5人くらいが並んでいたが、順番を抜かしをして視力検査をする。

ランドルト環ではなく、アルファベットが並んでいて、読んでくださいというものだった。その他は特にすることはなく、医師のサインをもらう。

同じ棟の2階にあがり、歯科検診をする。レントゲン室と変わって明るい診察室だが、妙に簡素な歯科用の椅子と清潔さを疑う器械が並ぶ。ここで歯を色々触られるのはなんとなく嫌だな、と身構えていると、非常用の懐中電灯で口の中を照らされ、おっけーと言われた。ミラーを使うわけでもなく、痛みや揺れを確認するわけでもなく、サインをもらえた。

続いて、3階にある耳鼻科へ向かった。スコープがあって、ここにも色々な器械があった。全く分からない言語と、かろうじで保っている清潔さ、高温多湿の環境にどんどん疲労がたまっていく。廊下は窓がなく、ほぼ外なのでクーラーはもちろんきいていない。上の階にあがるにつれて明るさが増すのも、しんどくなっていた。

耳鼻科では、触診されるでもなく、またも非常用の懐中電灯で耳を遠くから照らすだけでサインがもらえた。

なぜ私は、こんなてきとうな健診のためにこんなローカル病院で、長い時間かけなければいけないんだ…と怒りに近いものがわいてきた。

これなら、すいている近くのきれいなインターナショナル病院でも良かったのではないか。

耳鼻科のあと、婦人科へ向かう。

ここでも、問診して終わりだろうなと思っていたらなんと内診があった。

一番てきとうに済ましてほしい、しっかり見ないで欲しい分野で、内診台にあがってクスコを入れられる。のった内診台は、なぜか緑の覆布がかけられていて、使用後に拭き掃除ができる素材でない。もちろん腰の下に撥水シートが敷かれているわけではない。クスコは謎の、たぶん消毒液の入ったバケツから取り出して使っていた。

私は帰ったらすぐにシャワーを浴びようと確信した。

続いて、受付をした棟に戻り、皮膚科でまたもや順番を抜かし、おばさまが診察している真横で全身の服を脱ぎ、1周ぐるりと回転させられ、全てのサインをもらうことができた。

終わってみれば、たった1時間半の健診だったが、8時間ぐらい滞在したかのような疲労感だった。

病院は清潔であってほしいし、健康診断はできるだけ新しい施設で受けるにかぎる。