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山崎行太郎(哲学者)「橋下徹よ、あんたこそ詐欺師ではないのか」(『維新と興亜』第10号、令和3年12月発行)

国民の怒りを煽って人気をとるポピュリスト
── 総選挙で日本維新の会が議席を増やしました。
山崎 「身を切る改革」など国民受けする政策を上手くアピールしたからでしょう。国民は、ポピュリストの手法に騙されているだけです。維新の会は、これまでも公務員に対する住民のルサンチマンに火をつけ、公務員という「敵」と戦う正義のヒーローを演出し、支持を獲得してきました。実際、大阪の地方行政が「税金の無駄遣い」「公務員厚遇」と批判されるような状況にあったからこそ、維新の主張は住民に支持されてきたのだと思います。
 ただ、橋下のやり方は、「官から民へ」と叫んで郵政民営化を強行した小泉純一郎のやり方と同じです。ポピュリストに再び騙されるようなことがあってはなりません。
 維新はまた、高齢者に対する現役世代の反感も利用しているように見えます。確かに、現在年金の受給を受けている高齢者と現役世代では、給付される年金額に差があるといった不公平感がことさらに語られています。維新はこうした現役世代が抱いている不公平感を巧みに利用しているのではないでしょうか。実際、産経新聞社などが令和3年11月中旬に実施した世論調査では、維新の会支持層のうち50代以下が占める割合は66・7%で、自民(56・5%)や立憲民主党(37・8%)を大きく上回っています。
 維新は「身を切る改革」の先頭に立っていることをアピールしたいのでしょうが、次々とボロが出てきています。10月31日に当選した国会議員が在任1日で1カ月分の文書通信交通滞在費(文通費)100万円を貰っていたことについて、代表の松井一郎は「永田町の常識は世間とかけ離れている。仕事をしていないんだから、文通費をもらうのはおかしい」などと偉そうに言っていましたが、吉村洋文が、大阪市長選への立候補に向けて2015年10月1日に衆院議員を辞職した際、10月分の文通費を満額受け取っていたことが発覚しました。大ブーメランです。吉村にいたっては、さらに大阪市議を辞めて衆議院選挙に出る時も、「文春オンライン」によると、同じように詐欺的行為を繰り返していました。普通なら月末で辞職するはずのところを、2日延長して、翌月2日在職で、ボーナスや給料などをせしめています。明らかに吉村洋文は自覚的な常習犯です。完全にアウトです。こういう二枚舌、三枚舌の男は、政界から追放すべきです。
── 橋下徹氏を論客として評価する声もあります。
山崎 それは錯覚です。橋下は論客ぶっていますが、所詮彼には法律の知識しかありません。2014年に橋下が「在日特権を許さない市民の会」の桜井誠と面談した際の動画を見ましたが、私は「橋下の敗け」という印象を持ちました。橋下は面談に遅れてきたにもかかわらず、最初から横柄な態度で櫻井を「お前」呼ばわりし、一方的に自分の主張をまくし立てるだけでした。観る者は、橋下が自信満々の表情で語り続けるので、彼が論客だと感じるのかもしれませんが、それは錯覚です。
 令和3年10月31日の衆院選開票特別番組で、橋下はれいわ新選組代表の山本太郎と論争しています。これまでの山本の主張を素直に聞けば、彼が目指す税制改革の目的が「格差の是正」にあることは明白です。山本は「消費税は廃止し、これまで引き下げられてきた法人税をもとに戻し、さらに累進課税を導入する。そして、富裕層の所得税を強化する」と主張しています。
 ところが橋下は、「消費税をゼロにすると、(年収)300万、400万の方々には大増税になりますよ、とハッキリ言わなきゃいけないのに、高所得者の税率を上げろ、と言っておきながら、低所得者、中所得者の方々の税率が上がるとは言わずに、消費税ゼロだと言うのは、詐欺師的な主張ですよ」と断じたのです。これに対して、山本が「25年間、需要が失われてきたこの国の状況をしっかり把握しなければ…」と反論すると、橋下は「中所得者の税金が上がるかどうかだけ言ってくださいよ」と発言をさえぎりました。相手に発言の機会を与えず、相手の主張について否定的な印象を与える橋下のやり方は卑怯です。「あんたこそ、詐欺師ではないのか」と言いたい。

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