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ファンマネジメント(1)

 全てのエンタメにおいてファンは重要である。あるエンタメの盛衰は、そのファンが鍵を握っていると言っても過言ではない。その意味で、エンタメ提供者側は、ファンを適切にマネジメントする必要がある。

 ファンに関する学術的研究は、社会学、心理学、文化人類学などの分野において知見が蓄積されてきた。現在は、ファン活動の一部であるSNSを解析することによって、新たなファン研究の可能性が広がりつつある。

 ファン研究の系譜の一つに、コミュニティ(共同体)感覚(Sense of Community)に基づく研究群がある。ある共通のエンタメに興味を持つ人たちが集まるファンクラブは、ファンコミュニティに他ならない。エンタメが継続的に発展していくためには、ファンコミュニティの形成・発展・維持が欠かせない。ファン個別の視点から言えば、自分がファンコミュニティに参加しているというコミュニティ感覚の醸成が必要である。

 一般的にコミュニティ感覚は、①コミュニティのメンバーであると感じることができる  ②コミュニティに貢献していると感じることができる ③コミュニティに参加していることにメリットを感じることができる ④メンバー間で共通の感情的繋がり・歴史を有しているという4つの要素から形成されている[McMillan & Chavis (1986)]。従って、エンタメ提供者、ファンクラブ運営者は、これら4つの要素をマネジメントする必要がある。

 このコミュニティ感覚の高低は、SCI(Sense of Community Index)(あるるいは Sense of Community Scale)というアンケート調査を行うことによって計測可能であると考えられている。SCIにも複数のバージョンが存在するが、上記の McMillan らのオリジナル論文によれば、①このコミュニティは良いコミュニティだと思う ②メンバー間に共通の価値観が存在していない ③メンバーと私はこのコミュニティに対して同じことを望んでいる ④コミュニティメンバーのほとんどを知っている ⑤このコミュニティはアットホームだと思う ⑥コミュニティメンバーのほとんどが私のことを知らない ⑦メンバーが私の行動をどう思うか気になっている ⑧私はコミュニティに対する影響力を持っていない ⑨コミュニティ内で問題が起こったときにメンバーで解決できる ⑩このコミュニティに所属していることは私にとって重要だ ⑪このコミュニティのメンバーは仲が悪い ⑫私はこのコミュニティに長く所属していたいという12個の質問から構成される。②、⑥、⑧,⑪が否定的質問で、それ以外は肯定的質問である。

 ファンは、コミュニティ感覚の高低によって階層があると考えられる。また、ファンコミュニティのネガティブな側面も存在するが、これらは次回の記事で述べることとしたい。

参考文献

McMillan, D. and Chavis, D. [1986], "Sense of Community: A Definition and Theory," Journal of Community Psychology, Vol. 14(1), pp.6–23.

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石松 宏和/エンタメビジネス研究者
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