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情報社会を生き抜くための本60「睡眠障害 うまく眠るための知恵とコツ」(内山真)

 気分障害と睡眠障害の研究をしている日本大学医学部の内山真教授によれば、2009年に行った全国調査データで、14人に1人が寝つきが悪く、7人に1人が睡眠中に目覚め、19人に1人が早朝に目が覚めてしまうという訴えをもっており、不眠の人はおよそ5人に1人だという。

何が睡眠を妨げているかという理由では、忙しくて就床する時間が確保できないが一番多く外因性、ついで精神的な悩み、介護や育児、身体の具合の悪さや頻尿、近隣の騒音と続く。カテゴリーとしては、外因性、内因性、概日リズムの乱れに分けられる。内因性と概日リズムの乱れによる睡眠障害は、前述のように情報社会との影響が強くある。


 寝付けない体験は誰しももつと思うが、眠らなければと思うとますます目が冴え、焦る気持ちがさらに眠りから遠ざける。不眠が不安の原因になりスパイラルに悪化していき、慢性的な不眠症になる。内山はこの本の中で「不眠恐怖症があなたの不眠症の本質」と語る。

内因性の睡眠障害だ。そもそもの寝つきが悪くなる原因は、睡眠前にスマホやゲームなどで脳が興奮状態にあることだ。睡眠には体温の低下や脳のクールダウンが必要であるのに、ベッドに入っても手にはスマホや携帯ゲーム機がある。これでは眠れるはずがない。そして、概日リズムの後退が起きる。


 概日リズムは1日を周期とする体内時計のことである。スマホやゲームにはまった子供たちが毎日遅い時間まで起きていると概日リズムがどんどん遅れていく。朝起きようとしてもメラトニンの分泌がずれているので覚醒しない。また、神経伝達物質として知られるセロトニンの分泌も狂ってくる。睡眠相後退症候群は、このような概日リズムの後退が慢性的におきる睡眠障害である。いわゆる昼夜逆転現象である。この睡眠障害は、睡眠の問題だけにとどまらず、生活全般に支障が起き、精神的な障害(うつ的傾向やうつ病など)を引き起こしていく。治療は困難を極め、長期にわたって家族を含めて苦しむことになる。侮ってはならない。