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情報社会を生き抜くための本59「きちんとわかる時計遺伝子」

 「体内時計」は1997年にヒト時計遺伝子の発見によってから研究が進められていた比較的新しい研究分野である。睡眠が人間の身体や生活に大きな影響をもつことが分かってきたのはつい最近なのだ。自分の子供だけでなく、今の子供たちの多くは生活習慣や生活のリズム(体内時計)がきちんとできていない。情報社会の進展とともに生活習慣や生活のリズム(体内時計)の重要性は増してきている。


 「朝になると自然に目が覚め、夜になると自然に眠くなる」という極めてあたりまえの生活リズム。しかし、そのメカニズムには驚くような身体の仕組みがある。
 人間は生まれつき覚醒と睡眠を繰り返すシステムをもっていて、この一定のリズムを『体内時計(生物時計)』と呼ぶ。地球上のほとんどの生物に存在していて、1年以上を周期とするもの、数日〜数週間、一か月くらいを周期とするもの、そして1日を周期とする概日リズム(サーカディアンリズム)、さらにもっと短い数十分から数時間のリズム(ウルトラディアンリズム)も存在する。この中で特に概日リズムは、情報社会に生きる人間にとって大きな影響を与えている。ほかにも睡眠時随伴症(パラソムニア)という睡眠の障害があるが古典的な障害で、成長に伴い自然消失していくとされている。


 概日リズムは、だいたい1日(概日)のサイクルで25時間くらいの周期で繰り返す。そのまままだとずれていくので、毎日の修正(リセット)が必要になる。このリズムは昼と夜のリズムであり、生物が進化する長い過程で獲得し遺伝情報として組み込まれていった。地球の自転と公転によって生まれる「絶対的」なものなのだ。このリズムには何者も逆らうことができず、このリズムに順応することで、効率よく生命を維持してきた。進化の過程で生き残れた生物は、この遺伝子(時計遺伝子)によるということが考えられる。
 また生物時計は、大もとの体内時計(親時計)と細胞一つ一つの生物時計(末梢時計)が連携しながら動いている。脳の中の親時計の時間信号が、神経を通って松果体に伝わり、メラトニンなどの睡眠ホルモンとして全身に伝えられる。情報社会におけるメディアの影響やストレスが、この伝達システムを狂わし睡眠障害を生み出している。他にも親時計からの時間信号が影響する身体の器官として、満腹中枢、摂食中枢、体温中枢、自律神経系などがあり、その影響は身体全体に及ぶ。