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鬼木フロンターレとは何だったのか:Vol.59〜どんな王朝にも終わりが来る。それでも残っているものがクラブの伝統になる。

ACLを終えてマレーシアから帰国し、日本国内での戦いが始まりました。

 その最初の試合が清水エスパルス戦でした。
グループステージ敗退により、チームはアジアチャンピオンという目標を失っています。そこから最初の試合で、選手たちはピッチで何を表現するのか。勝利を目指すのはもちろんですが、それ以上、その姿勢が問われる試合となりました。

 現在、チームには二つのシステムを使い分けるスタイルが存在しています。
一つは2020年シーズンから導入した4-3-3システム。攻撃性を前面に打ち出し、相手を圧倒するために、鬼木監督が打ち出したご存知のスタイルです。この戦い方でリーグ連覇を達成し、J史上最強と呼ばれるフロンターレの代名詞ともなりました。

 ただリーグ優勝を遂げた2020年のオフには守田英正、21年の夏には田中碧と三笘薫、そしてリーグ連覇を達成した今オフには旗手怜央が海外に移籍したこともあり、攻守で圧倒するスタイルを支えた強度に陰りが見えてきています。目標の1試合3得点はリーグ戦では達成することが少なくなり、さらに中盤の守備強度低下や、鉄壁の守備陣の中心でもあるジェジエウの長期離脱により、今季はカウンターからの失点数も増加しています。

 こうした事情を考えて、鬼木監督はACL前に4-3-3システムのバランスを改善すべく、ジョアン・シミッチと橘田健人のダブルボランチにした4-2-3-1システムでチームを調整しました。柏レイソル戦では舵取りに成功して1-0で勝ち切り、守備にも安定感をもたらすことができました。

 ただダブルボランチになると、失点はしないものの、今度は攻撃に厚みと迫力がなくなります。そこで4-3-3システムに戻すと、今度はカウンターでの失点がかさんでしまう。そんなジレンマを抱えているわけです。

 例えばACL初戦・蔚山現代戦では4-2-3-1システムでスタート。先制されると、試合中に攻撃面での効果的な打開策が打ち出せませんでした(終了直前にCKで同点)。そして第5節の蔚山現代戦では4-3-3システムで強気に臨むも、パスミスからのカウンターで失点。2点を追いかける苦しい展開を余儀なくされました(2-3で敗戦)。

 なかなか良い着地点を見つけられない中でのACLの敗退。こうした経験を経て、鬼木監督がこれからのチームをどう舵取りしていくのか。

 実は今回の敗退を経て、考え方の変化が生まれていると鬼木監督は言います。

「ずっと圧倒しようと自分が監督になった時から言い続けて、今年は少しギリギリの戦いが多い中で、そこを強く求めすぎてもいけないのかなと思っています。自分の考えが、そもそもいけないんじゃないかなと、ACLが終わって思っているところです」

 どういうことでしょうか。


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