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鬼木フロンターレとは何だったのか:Vol.53〜マルシーニョのデビューと新人・橘田健人の急成長。苦しみ抜き、魂を見せ続けて乗り越えて掴んだリーグ6連勝。

 大きな目標であったACL制覇の可能性がなくなり、選手の中には失望感があります。それでもリーグは続きます。

 しかも、いきなりのリーグ5連戦。最初の相手は徳島ヴォルティスです。ポカリスエットスタジアムでの試合は2014年以来ですね。

 韓国から帰国して隔離期間のため、2週間は厳しい制限がある中で準備しなくてはいけません。隔離期間の経験を「思った以上に精神力が削られる」と鬼木監督は話してましたが、この連戦は難しい環境で勝ち続けなくてはいけません。まさに踏ん張りどころなのでしょう。指揮官は強調します。

「今が一番、精神的にも肉体的にもきつい時なのかな。ずっと連戦してきたが、勝ってきたもの(タイトルの可能性)がなくなってしまった。でも、そういうこともあるという話は、今日も選手にしました。ここから隔離がある。思った以上に、精神力が削られる。でもポジティブに捉えれば、ここからの5連戦が本当に重要だと思っています。そこでチームが一つになって戦える環境だとプラスに考えていけば良い。そこはそういう意識でやれればいい」(鬼木監督)

 この5連戦。鬼木監督は「ここでやらないと、どうすんだ」と選手を鼓舞しました。長いシーズンを戦う上で、勝負所の2週間だからです。

「年間通して、たった2週間。そこを頑張らないわけにはない。隔離、連戦とありますが、『ここでやらないと、どうすんだ』。そういう思いがあります。そこは選手に伝えないといけないし、そこは後悔したくなかったので、伝えました。思ったことを口にして、チームに意識を持ってもらうのは必要なことだと思ってます。もちろん、そこで結果が出るとき、でない時はある。それでも、その勝負に勝っていく、その姿勢が大事だと思います」

勝ち続けていたチームにとってルヴァンカップとACLで敗退し、リーグも無敗が止まり、苦しい時期になってきました。

 ただ勝てていないときだからこそ、鬼木監督が発した言葉が印象的でした。

それは「少し勝てなかった時や引き分けた時に、反省点にあまり引っ張られなくていい」と話していたことです。

「結果だけ見たら、(ルヴァンもACLも)勝ち進んでいない。そこは自分は真摯に受け止めないといけないと思っています。ただうちの選手は、勝っているときはいろんな反省をします、もっともっとと。それは良いことです。ただ少し勝てなかった時、引き分けた時に、反省点にあまり引っ張られなくていいのかなと思っている」

 フロンターレは勝ちながら反省するチームでした。逆に言うと、勝てないときはあまり反省しなくても良いのではないか、と指揮官が言ったわけです。

 なぜか。

「自分たちがやってきたことを信じてやり続ける」ためです。

課題は勝っていても常にあります。でも積み上げてきたものがあるからこそ、多少の課題が出ても、必要以上に気にする必要はない。そういう考えなのです。ここら辺の腹の括り方は、鬼木監督らしいなと思いました。

「あーでもない、こーでもないと言いたくなるのはわかります。でも、そこはやれていること、やってきたことをやり続ける。そこが自分たちがタイトルを取り続けてこれたゆえんでもある。信じ続けてきたからこそ、というのもある。プラス、今年に関しては、プラスアルファで力をつけないといけない。その意味では、ここが踏ん張りどころだと話しています」

 そして始まった5連戦という踏ん張りどころ。この徳島戦では、ある選手がフロンターレデビューを飾りました。

 それが新加入のマルシーニョです。


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