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鬼木フロンターレとは何だったのか:Vol.86〜カウントダウンが始まった指揮官との別れ。そこから始まった快進撃。
2024年限りでの鬼木達監督の退任が決まり、さらにタイトル争いもなし。クラブは、ここ数年に経験しなかったシーズン終盤を過ごしています。
そんな中で迎えた鹿島アントラーズ戦は1-3で敗戦。
鬼木体制になった2017年からリーグ戦で無敗だった鹿島にシーズンダブルを喰らいました。等々力で鹿島に負けるのは2015年以来で、公式戦だと2016年のチャンピオンシップの準決勝以来となる等々力の負けとなります。
この試合の鹿島が特別に強かったとは思いません。
いつもの鹿島だったと思います。しかし、今はフロンターレが弱くなっている。だから負けただけの話だと思っています。
前半の3失点の内訳をみると、どれも勿体無いものばかりでした。
1失点目は、セットプレーを凌いだ相手の二次攻撃を、スローインからのクロスで失点。2失点目は自陣のスローインからのパスミスでボールを奪われて、サイドを崩されて失点。そして3点目は、脇坂泰斗の負傷により10人だった時間帯に、守備のアラートさを欠いての失点。10分、18分、そして28分と、わずか20分間に連続で3失点してしまい、これで試合が決まってしまいました。
気になるのは連続失点していることと、その間の選手たちの振る舞いです。
例えば前半に立て続けに失点が続いても、誰かが何かを変えようと話し合うような場面もなく、そのまま試合が進んでいきました。
結果論なのも承知ですが、1失点目や2失点目を喫した時に誰かが何かをチームに働きかけるべきだったのではないかと感じた部分もあります。
試合後、いつになく口調が鋭かったのが山本悠樹でした。
フリーキックで一矢報いる得点を記録した彼ですが、前半の失点後のチームの雰囲気を指摘しています。
「1点、2点取られた後のリバウンドメンタリティーを発揮できる人がもっと出てこないとダメだと思います。落ち着いて自分の世界でやるのもいいですけど、それとチームにパワーを与えるのはまた別。その辺は物足りない感じがします」
彼の言う「落ち着いて自分の世界でやる」という言葉がどういうことを指しているのか。それは分かりませんでしたが、負けている展開でもどこか淡々とやっている選手ばかりなのは、少し気になるところです。こちらも何かを考えさせられる指摘でした。
実際、ピッチにいた誰かが何かを変えようとしたわけではなく、ハーフタイムに「ビビってやるな!」と鬼木監督のゲキが飛び、戦い方を修正して後半に巻き返したわけです。
鬼木監督はどんな敗戦を喫しても、それを選手のせいにすることはありません。しかし、この試合に関しては「擁護はできない」と選手に話をしたといいます。
選手たちがやるべきことをやらなかったからです。選手はやるべきことをやっていた中で失点したのかもしれませんが、少なくとも、鬼木監督の目にはそう映っていました。だから、試合の負け方にも納得できなかった。珍しく強い言葉で選手たちに指摘したと言います。
「普段から言ってますが、負け方というものがある。鹿島のゲームに関しては(負け方に)納得感がなかった。だから選手にもそういう話をしました。やることをやった結果だったら仕方がないけど、そうではなかった。もちろん、こちらの準備もあるかもしれない。でも、選手たちで解決できる部分もあった」(鬼木監督)
まだ試合は残っています。
もはやリーグ戦は残留争いに巻き込まれずに終わることを目指すのみですが、チームを鼓舞していたキャプテンの脇坂泰斗が前半に負傷交代するなど、頭の痛い材料もあります。
そして指揮官の退任は決まっている中で、残り試合に我々に何を見せるのか。誰もがさまざまなことを考えなくてはいけないシーズン終盤になっています。
その鹿島戦直後に行われた試合はACLEの上海海港戦でした。
試合は見事な戦いぶりで3-1で川崎フロンターレが勝利。立ち上がりから出足の鋭いプレスをかけていき、球際でも圧倒。4日前に行われた鹿島戦とはまるで異なり、いつになく集中したゲームの入りを見せました。鹿島戦を教訓したゲームの入りだったと遠野大弥が明かしています。
「ここ最近は入りが悪く、鹿島戦は前半に3-0になってしまった。そこの教訓もあって、立ち上がりから、前に前に。連続得点できたことは、自分たちがやれることができたと思っている。誰がスタートで出ようと、全員が声をかけていたので集中できていたのかなと思います」
鹿島戦とは逆の展開で、前半だけで3得点。年間わずか2敗で中国リーグを制した相手に、あっという間に勝負をつけたのです。このチームは、やればできるのです。
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