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鬼木フロンターレとは何だったのか:Vol.85〜退任が決まった指揮官が、あのときに語ったこと。そして自分に矢印を向けて成長し続ける鬼木達らしさの原点。
ルヴァンカップは準決勝敗退となりました。
第1戦を1-4というスコアで終え、Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsuで迎えた第2戦。
3点差の勝利が絶対条件でしたが、第2戦の前半終了間際に手痛い失点を喫しています。2戦合計によるトータルスコアは、後半開始の時点で1-5。その後もゴールネットが揺れることはなく、決定機らしい場面も少なく時間だけが過ぎていきました。
時間とともに、クラブ史上初のファイナル進出を確信し始めたオレンジ軍団の声援がどんどん大きくなっています。そして80分を過ぎてからのスタジアムには、この後に何も起こらないことを覚悟したような時間が流れていきます。そしてダメ押しを決められて最終スコアは1-6に。
唯一可能性が残っていたタイトルであるルヴァンカップ敗退が決まり、2024シーズンの無冠が確定しました。
試合後のミックスゾーン。
誰に話を聞くべきなのか。すごく迷った試合でした。普段、勝敗の責任を背負い、試合内容を振り返ってくれるのはキャプテンの脇坂泰斗でしたが、この大事な一戦で彼は不在となっています。
クラブで獲得してきたタイトルの歴史を知るチョン・ソンリョンに尋ねることにしました。決定機で再三の好セーブを見せていた彼は、自分の仕事を全うすることでなんとか流れを引き寄せようと奮闘し続けていました。しかし、それでも頑張りは報われず。
呼び止めて試合の感想を聞くと、「第1戦で大きな点差があって簡単ではなかったです。結果的に見たら惨敗です」とソンリョンが大きな肩を落としていた。
気になったのは、点を取らなくてはいけない展開でのチームの攻撃が機能不全を起こしていた部分だ。GKからはどう感じていたのか。
「一生懸命準備してきた中でやろうとしましたが、後半と比べたら決定的な場面は少なかったと思います」
もう少し詳しく聞こうと思ったのだけど、攻撃に関しては、GKの自分が多く語るべき領域ではないというスタンスなのだと思います。こちらの質問をやんわりと否定するように話し始めました。
「細かいところは監督やコーチが話すところなので、僕から話しづらいです。やろうとしていることが細かい部分で合わなかった。勢いが出ていないと感じました。細かいミスもありました。そういうところが相手より多かったと思います」
結果的に2失点するも、最後の最後まで負けに抵抗し、味方を鼓舞し続けた。やれることはやったけど、報われなかった。GKのつらいところです。
「それがGKの任務ですし、ゴールを食らったとしても失点を少なくするために最善を尽くしたつもりです」
試合後、佐々木旭も唇を噛み締めていました。
センターバックとして孤軍奮闘していたものの、彼もまた報われませんでした。
「悔しいですし、去年天皇杯決勝に出ていないので、今年はタイトルを取りたかった。悔しいですが、2試合合計で6失点。自分が出ている時に6失点しているので、それだけ失点したら勝てない。そこを無失点にできるような選手になりたい」
鬼木監督になってからは、2022年に続き二度目のノータイトルとなりました。ただ2022年と違うことがあります。この年は結果的に無冠だったものの、最終節までリーグ優勝の可能性を残しての2位でした。つまり、少なくとも優勝争いは演じていた。昨年はリーグ戦の優勝争いには絡めなかったものの、天皇杯を制覇しています。
しかし、今年はどうだろうか。
リーグ戦は、序盤から低迷し、優勝争いに一度も顔を出せぬまま過ごしています。順位は常に二桁を漂ってる低空飛行です。この時点でリーグ戦は10位。残り5試合と、浦和戦の後半が残っているものの、それを全勝したとしても一桁で終えられるかどうかの立ち位置です。
カップ戦を振り返っても、連覇のかかった天皇杯は3回戦でJ2の大分トリニータに敗戦している。そしてベスト8から登場したこのルヴァンカップはベスト4で敗退。カップ戦の決勝は一発勝負のため、それを掴めるかどうかにはいろんな要素が関わるけれど、今年は決勝の舞台にも手が届かなかった事実は重く受け止める必要があります。単に「タイトルを逃した」ではなく、タイトル争いの舞台にも立てないチームになってしまったことを突きつけられたように感じたほどでした。
試合後の監督会見での鬼木監督は、「タイトルを取れないというのは間違いなく自分の責任です。ただ、リーグ戦がまだありますし、ACLEも残っていますので、とにかく一つ一つをしっかりと戦っていくという話はしています」と前向きに語っていました。
その数日後、2024年限りで8シーズン続いた鬼木フロンターレの幕が閉じることが発表されました。
ルヴァンカップ準決勝で敗退した時点で無冠が決まり、クラブか本人か、どちらかがなんらかの決断はするとは予想していましたが、実際にはルヴァンカップ敗退前にすでに話がまとまっていたとのことでした。
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