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鬼木フロンターレとは何だったのか:Vol.82〜かつての鬼木フロンターレにあったけど、今は足りないもの。そして、それを持っている現在の日本代表に思うこと。
リーグ4連勝をかけた横浜F・マリノス戦は1-3で敗戦。
チームとしては9試合ぶりの黒星となりました。3連勝をしていた中で、等々力で負けるのは悔しいものです。ただ見つめるべき問題点も浮き彫りになりました。試合後の佐々木旭が指摘します。
「(自分たちは)ボールを握るのが前提。ボールを握るのが上手いチームに握られた時に、どういうサッカーをするのか。それをピッチで意思疎通できればよかった。前半は守備でなかなかハマらなくて、自陣のゴール前まで行かれていた。そこでもっち早く修正しないといけなかった。じれてしまったというか、少しずつ緩くなってしまい、左右後に隙をつかれてしまった。後半の1失点した後も緩くなってしまった。そこはまだまだ課題です」
連勝を支えていたのは、ボールを握るサッカーが機能していたことが大きな理由でしょう。ビルドアップが出来る最終ラインと大島僚太という中盤のゲームコントローラーがいたことでボールを握ってゲームを進め、そしてフィニッシャーとして山田新が得点を決めてきました。
現在のフロンターレはじっくりとボールを保持した方がチームとしての強みが出ます。ボールを保持して動かせる最終ラインと、時間を調節できる大島僚太がいるからです。ならば相手の速いテンポに付き合うことなく、しっかりとボールを握りながら相手を敵陣に押し込んで試合を進める。特に夏場はスタミナの消耗も激しいですから。90分で考えると、その方が勝利の確率が上がります。
ところが、試合が始まると、前半から速いテンポでゲームが進みました。そして両チームがシュートを多く放つ展開となっています。
この試合の両チームのシュート数は、公式記録によれば、川崎フロンターレが19本、横浜F・マリノスが13本。両チームとも二桁に達しています(ちなみに前節のFC東京戦の総シュート数は、前後半合わせても5本対8本でした)。
前半で川崎が11本、横浜が6本。スコアレスながら、前半だけで両チーム合わせて15本以上のシュートが飛んでいたわけです。この数字だけ見ても、ゴール前の攻防がいかに多かったのかが読み取れると思います。
同時に、この展開をどう解釈すべきなのかという話になります。
それは前半からオープンな展開になったがゆえのシュート数の多さだったからです。クローズな展開であったならば、両チームがそんなにシュートは打たなかったわけです。前節のFC東京戦は、リードを奪った後に、ボールを保持しながらゲームをコントロールしていたので、切り替えも少なく必要以上に多くのシュートを打たなくても別によかったのです。
前半のシュート数の多さは川崎フロンターレとしては決して好ましい展開ではなかったということではないかと感じます。もちろんいくつかのシュートでゴールを仕留めていれば何も不満はありませんでした。しかしシュートこそ多いものの決め切れず、ゲームもコントロールできていない展開になっています。
そして冒頭で佐々木旭が指摘したように、「ボールを握る」という前提が成り立たなかった時にどうするのか。実力のある横浜F・マリノス相手には、そこの課題が露呈した試合となりました。
例えば両サイドの守備。ボールを保持して敵陣でサッカーできていれば、マルシーニョも家長昭博も違いを作り出すことができますが、守備で我慢する展開が前提になると、両サイドのルーズな守備がチームのバランスを崩したり、組織に綻びが生まれてしまいます。左サイドのカバーに奮闘した 大島僚太も、守備で動かされ続ける時間が長くなると、ピッチでの時間をうまく調節し切れません。
攻撃陣も反省点を口にします。前半はいくつかのチャンスを作りながらも決められなかった。脇坂泰斗は「自分たちの力がないから、決め切れない」と、自分たちに厳しく目を向けます。
「得点のところで優位性が取れていたら全く違うゲームになっていたと思いますが、それを言っても仕方がない。自分たちの力がないから、決め切れない。ただ3連勝して積み上がってきたものはある。それを1試合で崩れないように、次の浦和戦に向けてやっていかないといけない」
次の試合は浦和レッズ。課題を活かす試合だったのですが、悪天候により前半のみで試合が中止になってしまいました。少しペースが狂った中で迎えた次のゲームはアウェイでのコンサドーレ札幌戦です。
試合は0-2で敗戦。最下位の相手に痛い黒星を喫しました。リーグ連敗により、チームの抱えている問題点も再び浮き彫りになっています。そして9月からは残されたタイトルであるルヴァンカップも始まっていきます。
では、振り返っていきましょう。
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