見出し画像

鬼木フロンターレとは何だったのか:Vol.60〜1試合だけ実現した寺田フロンターレ。寺田周平コーチがこのクラブで見てきた景色。

割引あり

 2022年5月。
湘南ベルマーレ戦からの大敗を受けて挑んだ京都サンガF.C戦はオウンゴールにより0-1で惜敗。無得点でチームは連敗となりました。

 鬼木監督にとっても2連敗は、久しぶりでした。リーグ戦での連敗は2018シーズン以来、4年近くなかったのです。それだけ負けなかったと言えるわけですが、連敗は優勝を目指す上で大きな痛手でした。

 長いシーズン、絶対に負けられない勝負所という試合があるものですが、その意味で、連敗後に迎えたコンサドーレ札幌戦は、鬼木監督にとっても負けられない一戦だったはずです。試合は殴り合いになりましたが、5-2で勝利しています。

 この試合に向けては連戦ではなくインターバルがあったため、チームとして準備するだけの期間も、普段よりありました。ただ時間があることで、考えることや決断に悩むことも増える可能性があります。そういった背景も含めて、鬼木監督自身がどんな心境で札幌戦に臨んでいたのか。そこを後日、聞いてみました。

いろんな葛藤がありましたね」

こちらからの質問に、鬼木監督はそう明かして話し始めてくれました。

「矛盾するようなところもありますが、積み上げをもう一回やらないといけない中での、中断期間でした。内容を示すことで自信もついていくという思う一方で、この世界は結果で自信が大きく変わる。それは自分も感じていました」

サッカーという競技における勝負の世界では、内容と結果がリンクしないことはたくさんあります。内容を向上していくトレーニングの取り組みはどの監督も行うわけですが、かといって、どんなに良い内容のサッカーを表現しても結果がついてこないとまるで評価されません。勝ち点の稼げない監督は解任されるのがプロの世界における宿命です。鬼木監督も「葛藤があった」というわけです。

 そういう局面で決断する時に何を重視するのか。そこに監督のキャラクターや人生観が現れるのではないかと僕は思っています。

 鬼木監督が重視したのは何か。


ここから先は

9,080字

ご覧いただきありがとうございます。いただいたサポートは、継続的な取材活動や、自己投資の費用に使わせてもらいます。