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鬼木フロンターレとは何だったのか:Vol.50〜公式戦40試合ぶりの無得点。勝敗を背負い過ぎた旗手怜央に指揮官がかけた言葉。

 2021年8月。
東京五輪が終わり、Jリーグが再開されました。

田中碧がドイツに移籍し、三笘薫のベルギー移籍も発表。シーズン中の主力2人の海外移籍は、開幕から無敗記録を更新している川崎フロンターレにも小さくない影響を与えることが予想されました。

言い換えると、2021年後期バージョンの鬼木フロンターレを作り上げていく作業が始まったとも言えます。

再開初戦となった昭和電工ドーム大分での大分トリニータ戦は2-0で勝利。

昨シーズン、数少ない敗戦を喫した地です(川崎が敗れた直近のゲームでもありました)。そこで危なげなく勝ち点3を獲得しています。このスタジアムで複数得点を奪ったのは、リーグ戦ではチーム初だったそうです。

 試合後、大分の片野坂監督は「要所を押さえられた守備でチャンスを作れず、終わってしまった印象です」と述べていました。一方、守備の中心にいた谷口彰悟は、要所を押さえた守りができていたと胸を張っています。

「後半は大分がボールを握る時間帯が多かったですが、相手が何を狙っているのか。一番やられてはいけないところは何か。そこの整理は付いていたので、そんなに怖くはなかったと思います」(谷口彰悟)

 この日の彼は、相手が一番怖いところを縦パスで狙い続け、それでいて、自分たちがやられてはいけないポイントを随所に押さえ続けて完封に貢献しました。

 思えば去年の彼は、優勝かけて臨んだこのスタジアムで一発退場しています。そしてチームの敗戦をピッチの外から見守っています。

 あれから約8ヶ月。再びキャプテンマークを巻いて、地元・九州の地に立ったこの日の谷口彰悟は、攻守における最も大事な狙いを誰よりも愚直に遂行したプレイヤーとなっていました。

大分には勝利するも、続く柏レイソル戦(0-0)、サンフレッチェ広島戦(1-1)と足踏みし、さらに横浜F・マリノスが猛追してきたことで、連勝していたチームに少し不穏な空気が流れ始めます。今回はそんな時期の話です。


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