オールの小部屋から⑦ 村山由佳さん、千早茜さん、新人賞
急に涼しくなりましたが、みなさん、お変わりありませんか。
私、ふだんは健康そのものなのですが、久しぶりにぐったり疲れまして、今朝(日曜日)目がさめたらお昼の11時半。あわてて息子をサッカーに送っていき、いま試合を観戦しながらこのnoteを書いています。
疲れの原因は、昨夜(9月23日)開催した〝千早茜さん×村山由佳さん「恋愛小説」書き方講座〟でしょう。私は進行係をつとめました。
講師のおふたりには、小説を書くにあたっての秘話を惜しげもなく披露していただき、濃密かつ充実のイベントになりました。終了後のサイン会でも、参加してくださったお客さんから「よかった!」「またやってほしい!」とあたたかい感想をいただいて、村山さん、千早さんに感謝するばかりなのですが、なにせ進行係の私が〝恋愛〟に疎いおじさん編集者。練達の書き手から話をうまく引き出せるだろうかという不安と緊張に加え、おふたりの女帝(女神というべきでしょうか)が放つ強烈なオーラにすっかりあてられて、消耗してしまったのだと思います(笑)。
実は数日前、軽井沢の村山邸をイラストレーターのオカダミカさんとともに訪ねました。イベントの打ち合わせをしようと思っていたのですが、村山さんのオール讀物新連載「PRIZE-プライズ-」の打ち合わせがあまりに盛りあがり、そこに村山さんのパートナー〝背の君〟が加わって衝撃の昔話が披露されたりで、講座の打ち合わせがあまりできなかったのですね。そのことも、当日の緊張に拍車をかけたかもしれません……。
新刊『マリエ』を上梓されたばかりの千早さんはデビュー15年。先輩の村山さんはデビュー30年で、やはり今年1月に30周年記念出版『ある愛の寓話』を刊行しています。ふたりのメモリアルイヤーである2023年、渾身の新著をテキストにしての「書き方講座」が実現したわけで、いざ幕が開けば、トークが面白くならないはずはありません。
たとえば、〝自分の身に起きた出来事を小説に描く〟ことについて。
『マリエ』については、千早さん自身が「私も主人公のまりえと同じように何年間もかけて話し合ったうえで円満離婚しました」とインタビューで語り、「等身大の自分を描いた」作品であることを明かしています。
かたや村山さんといえば、自身の離婚や恋愛の遍歴を烈しい性愛表現とともに描いた『ダブル・ファンタジー』で読者に衝撃を与えた作家です。
Q 自分自身の経験を小説にするのは、ゼロから物語をつくるのと、どちらが簡単か?
この問いへのふたりの回答は、実に興味深いものでした。
また、自分の人生に起きた出来事は、現在進行形であるのが普通です。それを小説に書いていくのですから、
Q 書き始めるとき〝小説の終わり〟はどのくらい定まっているか?
こういう疑問も湧いてきます。おふたりの答えに、会場はどよめいていました。
Q 最初の1行が書き出せないとき、背中を押してくれるものは?
との質問にも、それぞれ『風よ あらしよ』『しろがねの葉』など、自作を例に挙げながら、丁寧に答えていただきました。
さらには、村山さんと千早さんの親交のきっかけが、村山さんの新連載「PRIZE-プライズ-」に書かれている(!)という衝撃の情報までーー。
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イベント終了後は、村山さん、千早さんとともに羊の丸焼き料理を食べに行きました。12キロの羊をペロリと平らげ、最後には〝局部〟まで美味しくいただいた我々ですが、翌朝、村山さんは「気のせいか今、全身に精力がみなぎってる」(X[旧Twitter]より)のに、ひとまわり若い私はぐったり疲弊して寝坊している……。やはり作家と編集者では、身体の鍛え方が違うのかもしれません。
イベント2日前、9月21日には、第130回オール讀物新人賞の選考会が開かれました。664篇の候補作の中から栄冠に輝いたのは、小林仁さん「かはゆき、道賢」。室町末期の梟雄・骨皮道賢の人生を妖しい物怪との交流を通して描く、スケールの大きな時代小説。安部龍太郎、畠中恵、門井慶喜3選考委員から「時代の空気が見事に捉えられている」と高い評価をえました。
選評と受賞作は、10月20日発売のオール讀物11月号にて掲載しますので、こちらもお楽しみに!
新人作家のデビューと、女性作家おふたりの白熱したトーク、それぞれに陪席して小説について考えた、たいへん濃い1週間でした。
(オールの小部屋から⑦ 終わり)
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