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輪郭線は存在しない? (側抑制)
デッサンの先生から「輪郭線は実際には存在しないのだから、絵には描かないほうが良い」と言われたことはありませんか?
ショッキングなアドバイスですね。
レオナルド・ダ・ヴィンチも、『モナ・リザ』などの晩年の絵では輪郭線を嫌っていたようなので、そこから来ている伝統的な考えなのでしょうか?
しかし、ほとんどの絵には輪郭線が描かれています。もし輪郭線を描かないと、隣り合う物と物との境目や、物と背景との境目がよくわからなくなるからです。
輪郭線は物の存在を簡単に説明するための便利な線ですね。
油絵や水彩画には輪郭線を描いていない作品もありますが、イラストや日本画では、ほとんどの場合輪郭線が描かれています。
さて、輪郭線は便利だから描くという考えとは、別の存在理由もあります。それは、輪郭線があるほうが、ないよりも、自然な見え方だとする考え方です。
上図のように、似た色の面が隣接していると、その境目の色が強調されて、あたかも輪郭線があるかのように見えます。これは、「側抑制」(そくよくせい)といって、人間の目に特有の働きだといわれています。明るい面の境界はより明るく、暗い面の境界はより暗くみえるので、あたかも境界線があるかのように見えるのです。
このように、はっきりした線ではありませんが、あたかも(薄い)輪郭線が実際に存在するかのように見えることが、人間にとって自然な状態なのです。
境界線を黒ではなく、赤や青などの別の色で描くと面白い効果がでますね。
油絵や水彩画であっても、自信を持って輪郭線を描くようにしましょう。